今一番ハグしたい人は?
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俺がハグしたい人?くだらない質問だな。俺の人生に無駄な感傷は不要だ。肉体を神殿と呼ぶ俺にとって、他人の体温を感じるなど不潔極まりない。そんな時間があるなら、タンポキングの売上を上げるか、俺自身の資産運用について考える。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスが他愛のないハグで時間を浪費していると思うか?彼らは合理的思考の持ち主だ。俺も彼らと同じ道を歩む。ハグ?無意味だ。
モテない言い訳だと思います😊by猪野(笑)
百十五
両肩に力士が二人乗っているかのような重みを感じ、猪野はガクンとよろめいた。しかし、ヘソクリスの目の代わりを果たすべく、彼は負のオーラを放つ角の歪んだキノコ牛の魂へと突っ走る。渾身の力を込めて魂を鷲掴みにすると、猪野はまっすぐに戻ってきた。
「ヘソクリスさん! これです! これを直接触って、魂と交信を!」
そう言い切るや否や、猪野は限界を迎え、その場で気絶した。
母親の強烈なビンタと塩のダブルパンチで目に激痛が走る中、ヘソクリスは猪野が掴んでいた巨大な、しかし、重みの感じられない物体を受け取った。それは巨大な牛糞にも見えたが、妙にツルツルとした泥団子のようだ。好奇心と少しの嫌悪感を抱きながら、彼はそっと指で触れてみた。
その瞬間、ヘソクリスの指先からその塊全体に奇妙な振動が伝わると、ムズムズと形を変え始めた。みるみるうちに、ずんぐりむっくりとした小人の形に膨らんでいく。身長はヘソクリスの膝丈ほどで、まるで土でできた粘土細工のようだった。
「こっ、これが、魂か…現れたのか?」
ヘソクリスは呆然と呟いた。しかし、その土の小人は彼の手から地面に落ちると、よたよたと歩き出し、道の隅にあった小石を拾ってボリボリと食べ始めた。そしてヘソクリスの顔を見てニターリと笑うと、動きを止めてズルズルと形を崩し、あっという間にただの土の塊に戻ってしまった。

「…魂じゃなくて、ただの土くれかーい!………。魂と塊って、書き間違い!!!」
ヘソクリスは呆れてツッコミを入れる。一方、母親は「シャー!シャー!」とさらに奇妙な舞を続けながら、崩れた土の塊を見て満足げに頷いた。
「欲ばかりが先行しているから、そんなものが魂に見えるんだよ! あんたが探しているキノコ牛の『魂』なんて、どうせネットで検索して見つけたような安っぽい答えじゃないのかい? 本物の魂ってのはね、
鬼のような思いで伝えたい言葉、それそのものなんだよ! それだけが人を人たらしめている。あんたの求める魂なんて、お手軽な塵芥の塊でしかないんだよ!」
ヘソクリスは、気絶している猪野を抱えながら母親の言葉を反芻した。キノコ牛の魂を探していたはずなのに、目の前で起こったのは、ただの泥団子が一時的に形を変えただけだった。
しかも、母親の言う「伝えたい言葉」という言い草は、不思議と反論の余地がないように思えた。
「じゃあ、俺たちが探してたキノコ牛の魂って、もしかしてただの泥団子だったのか…?」
ヘソクリスが母親を見上げて問いかけると、その時、猪野が「ウー…ン」と唸り声を上げた。
母親は鼻で笑い、「そんなこともわからん奴らなら、イタコにでも会いに行けばいいのさ! 本物の魂ってやつを、その目で見てきなさい! あんたは父親のキノコ牛みたいに、怠けて楽な道を探してばかりなんだから!」と、『黄泉の渡し場』を指差した。
ヘソクリスは深い溜め息をついた。「…仕方ない。このままじゃ埒が明かないし、母さんの言うことも一理ある。猪野くん、少し休んで、イタコに会いに行こう。本物の魂と、ただの塊の違いを、この目で確かめるためにもさ…!」そう言いながら、彼は水筒の水を猪野の口元にそっと含ませた。