2025年3 月 22日(土)
あらすじ
バナナ皮滑りのバイトを成功させた二郎だったが
公衆トイレで着替えをし、二郎はベンチに腰掛けて報酬額を確認した。以前よりもずっと大きな金額が振り込まれている。
それでも二郎の表情は冴えなかった。スマホの中の数字が増えたところで、はしゃぐ気にはなれなかった。
「バナナの皮で転んで笑うのって、ほんとに面白いのか?」 彼は思った。あの子供のように心配するのが普通に思えた。
周りの人々も、同じように感じているのだろうか。時には、笑ってはいけない場面があることを、自分と同じように心の中で分かっているのだろうか。
例えば葬式で笑うのは不謹慎だと、誰もが感じているはずだ。公共の場で笑うことが禁止されている。
でも、公共の場で笑うこと自体が罪深いわけではない。原因は笑ウイルスとメディアは連日告げている。
笑いには、何かを和らげたり、時には救ったりする力がある。けれど、ウイルスがいてもいなくとも、どんな笑いにも、どんな瞬間にも、最初に優しさや労りがなければ、
それはどこか寂しい。自分が笑った理由が、ただ他人の不幸や滑稽さだったとしたら、それはきっと、心に傷を残してしまうだろう。
笑いがすべての解決になるわけじゃないけれど、誰かを傷つけない笑いこそが、今の自分には必要だと思えた。