2024年7月4日

 忘れない日、忘れたくない日。今日は晴れなのか雨なのか、曇りなのか分からなかった。天気の表情がコロコロと変わる日だった。山頂にある青色の紫陽花を見た。見ていたら小雨とも言い難いシャワーのような優しい雨が降ってきた。湿り気を帯びていない、私を包み込んでくれるような優しい雨。まるで、あの子が『泣かないで、僕も寂しいよ。』って伝えてくれているような感じがした。

 シャワーのような優しい雨が止んだ。山を流れるせせらぎの先に学校のプールが見えた。過去を振り返った。私が学校をズル休みした日、あの子は私の松葉杖になってくれた。合格発表の前日、あの子は体調を崩した。私の不安を背負ってくれるかのようだった。合格の文字を見た日、あの子は笑顔で駆け寄ってくれた。私が明日が来るのが怖くて泣いていた日、『大丈夫だよ。』と寄り添ってくれた。約束をした。『ありがとう、楽しかったね。幸せだったね。私、絶対に負けない。優しく、強くなる。あなたにもらった優しさを忘れない。私も優しさを伝えていく。』と。開き切っていた眼であったのに、眼を動かしながら耳を後ろにしてくれた。最後の最後まで私の味方をしていた。5時間も手を繋いでお話をした。

 私はあなたにどれだけのことを学んだのだろうか。優しさは人の心を温かくするということ。信じること。人に寄り添うこと。吐き出していくと、朝が来てしまうのでここで終えよう。あなたと交わした約束を、絶対に忘れない。忘れたくない。記憶するだけだと、いつかは消えてしまうかもしれない。だから私は形に残して証明したい。だから、どうしても辛い時は夢に現れて下さい。お願いね。そう決心すると、空から光が差し込んできた。久々に見た、光のカーテン。肉体が消えたとしても、あなたはあらゆるものを使って、私の味方になってくれるのですか。私は、あなたから貰った優しさを、後世に繋いでいきます。道を外すことなく、真っ直ぐと生きていきます。

 生きるとは?死ぬとは?答えがないからこそ、人は生き、答えがないからこそ死を選択する人がいるのだろうか。答えがあれば生きる意味などないか。無いからこそこの世は美しいのか。22年生きた人間が、これを機に死生について考えてみる。回答はまだ見つかっていない、これからだ。



 これから、私はどんな未来が待っているだろうか。不思議と未来は明るいという気持ちがある。何故だろう。それもまた、あの子のおかげだね。これまでも、これからも。私の原動力になってくれるんだね。

 


 拝啓 紫陽花のように美しく、優しい貴方へ

 16年という長い間。私を成長させ、包み込み、家族に平和と幸せをもたらしてくれてありがとう。あなたに出会えた日々を決して忘れません。あなたから得た教訓を伝えていきます。守っていきます。また、会おうね。お別れじゃないからね。いっとき、お互いの旅に出ようね。そしてまた会えたなら、一緒にシロクマアイスを食べてお話ししよう。

 

 【慈悲】… 慈悲とは大きな世界のことである。