図書館は、挑戦しやすい場所だと私は思っています。
実際に私が図書館で行っている挑戦は、「興味のないジャンルの本を読む」ということです。
「どれにしようかな」の歌(呪文?)でまず本棚を決めて、さらに再度どれにしようかなで本を選ぶ……ということを行っています。
結果、お金に関する制度の本や俳句の書き方の本など、普段なら絶対に手に取らないであろう本に挑戦することができました。
読書の幅を広げるのはいい経験になると、私は思っています。こういう挑戦を気軽にできるのは、図書館の利点のひとつではないでしょうか。
その利点を最大限に活かしているのでは!と思ったのが、近所の図書館でやっていた『本の福袋』でした。
図書館のスタッフさんが選んだ本2冊が袋の中に入っており、選んで借りるというもの。袋の外に、対象年齢とジャンルは書いてありました。
私が選んだのは高学年~大人向けの「本の演奏会」と書いてある袋でした。
音楽を題材にした小説が入っているのか、はたまた音楽に関する本、十進分類番号で言うなら76に配架されているような本が入っているのか……!とわくわくしながら帰宅。
そのうちの1冊が、『さよならドビュッシー』(中山七里 作)でした。
火事で全身大やけどを負ったピアニスト志望の少女の、復帰の物語。そこに遺産相続やら母親の殺人やらといった事件も介入してきます。
特筆すべきは描写力でしょうか。
最初に起こる火事のシーン、その後主人公が取り組むリハビリのシーンは真に迫るものがあり、思わず呼吸が浅くなってしまうほどでした。
ピアノ演奏時の描写も圧倒されるもので、主人公や主人公の先生がどれだけの執念で演奏しているのかがぐぐっと伝わってきました。
特に、主人公が先生の演奏を聞きに行って、周りが感激する中ひとりだけ落ち込むシーンが心に残りました。
ただ聞きに行っただけでは、周囲と同じように感激するだけのはずです。ここで落ち込むということは、主人公がそれだけピアノに熱心に取り組んでいる証拠だと思いました。
ピアノを弾く先生を兵士、壇上を戦場という例えも印象的で、音楽の世界に似つかわしくない単語だからこその主人公の真剣度が読み取れます。
この落ち込みがあったからこそ、終盤で演奏し切ることができたのだと私は思います。
この本の主人公は、動かない体でピアニストを目指すという、はたから見れば途方もない挑戦をしています。
私は彼女のような大きな挑戦はしていませんし、できないししたくないと思ってしまうダメ人間です。
が、日々小さな挑戦をしていることに気が付きました。普段なら絶対に手にしない本に挑戦してみたり、読んでくれた人が少しでも笑えるようにと念じて毎月漫画を描いてみたり、同人誌を作成してみたり。
この挑戦がどこに向かうかは分かりませんが、立ち向かうことはやめずにいようと思います。
ところでこちらの本、「このミス」大賞受賞作品ということで、ちゃんとミステリー要素もあります。
ラストのどんでん返しには本当に驚かされました。いろいろなところで違和感を覚えていたのに、この可能性には全く思いつかなかった自分が悔しい……!
音楽、特にピアノが好き、あっと思えるミステリーが好きな人はぜひ読んでみてください。