姑にゴキブリを盛られた嫁の行方(15

 

 

妹と相談して

母のお気に入りだった着物を着せてあげた

 

 

葬儀社の人が母の手を合掌させ

その手と胸のあいだに大きなドライアイスを置いた

 

 

まだ11月の初めだというの

その日はみぞれ混じりの雨

 

「お母ちゃん寒くないのかなぁ。。」

そのことがとても気になった

 

葬儀が済み

悲しみに浸る間もなく

母の暮らしていた部屋の片付けを妹と始めると

 

箱の中から大切そうにしまわれた母子手帳が3冊出てきた

母にとって子どもはわたしと妹だけ

どうして3冊?

その母子手帳は7か月目の検診の記録で途切れていた

 

 

「本当ならお前にはお兄ちゃんがおったんやで」

7か月の早産で産まれてあっけなく死んでしまった

そんな母の言葉を思い出した

 

 

母にとっての初めての赤ちゃん

わたしのお兄ちゃん

 

忘れることなんてできないよね

子手帳ずっと、ずっと大切に持ってたんやね

 

 

 

 

その後わたしは

3年ものあいだ母を失なった悲しみに明け暮れた

特に始めの1年は何を見ても母に結び付てしまい

毎日泣き続けの日々だった

 

 

亡くなってから母はわたしの夢によく出てきてくれた

 

始めて見た夢は

母が寒いんじゃないかと心配している夢

葬儀の人が母の胸に大きなドライアイスを置いたのが

よほど記憶に残っていたのかもしれない

 

「お母ちゃん、寒くない?」

問いかけると

母はわたしに手を差し出した

その手を慌ててつかむととっても暖かい

「良かった、もう寒くないんやね」

心から安堵した

 

うつ病になってからはさまざまな悪夢に悩まされた

道に迷い彷徨えど彷徨えど

自分の居場所・・帰るべき場所にたどり着けない

そんな時母が出てきて

向かうべき方向を指し示してくれたりもした

 

 

 

そんな3年間を過ごしふと自分を見つめなおすと

糖尿の食事制限からくるストレスで始まった摂食障害も

うつ病からくる自殺願望も無くなっていた

 

そして

あれだけ拒否し続けた糖尿病の治療も

受け入れられるようになっていた