こんにちは! ジャズクラリネット奏者の壱岐薫平です。
前回の記事「#♭の数でキーが変わるのは何故かという話(前編)」はお読み頂けましたでしょうか? 今回はその解答編となっています。
前回提示されていた問題はこちら!
★何故調号#♭の数が変わるとキーが変わるのか、そして調号#♭は何故「ファドソレラミシ」「シミラレソドファ」の順で増えていくのか。
理論的な解説のみであれば今回の記事だけで充分お分かり頂けると思いますが、前回も色々思うところを書いていますのでお時間のある方は合わせてチェックしてみて下さいね。
それでは早速解説に入りましょう!
なお今回はシンプルに、メジャーキーにスポットをあてて解説していきます。
《 当たり前だけど… 》
まず記事のタイトルにもなっている「何故#♭の数が変わるとキーが変わるのか」問題ですが、この答え自体は至ってシンプルです。というか、問題にもならないような話ですので「こいつ何当たり前のこと言ってんだ」とお思いの方もいらっしゃることでしょう。
キーがCであるためには、基本的にはCのキーの音階「ドレミファソラシド」が守られていなければなりません(この音階をポピュラーの理論的にはダイアトニックスケールと呼んだりします)。「ドレミファソラシド」の中の何か1音でも違う音に変わればそもそもキーがCではなくなりますから、当然調号が変わるとキーが変わる、ということが言えますよね。
さて、しかし問題はそれだけではありません。試しに「ドレミファソラシド」の「ラ」に♭をつけてみましょう。これで既にCメジャーキーは成り立たなくなるわけですが、ではこれは何メジャーでしょうか? …何メジャーでもないですよね(笑) (狭義の)調性音楽における長調の音階には当てはまらない、別の何かになってしまいました。(ちなみにこの音階はCのハーモニックメジャースケールと呼ばれたりします。その辺りの話もいずれしたいですね。)
前回解説したように調号の上では、♭は「シミラレソドファ」の順に、#は「ファドソレラミシ」の順に増え、それによってキーが完全4度(完全5度)ずつ転調する仕組みになっています。なぜ#♭はこの順番で増えることになっているのか、次はこの仕組みについて紐解いていきましょう。
この問題を考えるにあたって、例えばキーがCの時、その主音がCであると裏付けるモノの存在を知って頂く必要があります。
《 キーを支配する者 》
前回提示したこの譜例でも分かるように、キーがCである時、主音のCに辿り着くと強い解決感を得ることが出来ました。「解決する」ということは、その前に解決するべき何かしらの不安な出来事が起こっている筈ですよね。どんなにコ○ン君が優秀な探偵でも事件そのものがなければ解決も出来ないのです(例えが分かりにくいというツッコミは間に合ってます)。
ではCメジャーキー「ドレミファソラシド」が抱える不安はどこにあるのでしょうか。
この7種類の音同士の間に生まれる音程を一つ一つ調べていくと、とーっても不安定な音程が見えてきます。
それは、音階上で4番目の「ファ」と7番目の「シ」の間に生まれるこの音程。
鍵盤が近くにある方は鳴らしてみて下さい。うわああああ。
「ファ」と「シ」の間に生まれる「増4度」の音程。これがめちゃくちゃ不安定なんですね。この音程、全音の幅で数えるとファ→ソ→ラ→シで3個分になっており、「トライトーン」と呼ばれています。トライアングルとかドードリオのトライアタックとかの「3」を意味するトライですね。
このようにひっくり返して「シ」「ファ」と弾くと「減5度」という音程になりますが、全音を数えるとやっぱり3個分。トライトーンはひっくり返しても全く同じ音の幅になるようです。ちなみにここから先ちょっと専門用語が増えるかも知れませんが、今ここで言葉を全て覚える必要はありませんのでご安心下さい(笑)
さて、このトライトーンの片割れ「シ」は半音で上行すると「ド」に辿り着きます。「シ→ド」という半音の動きによって主音を導いているということで、メジャースケールの7番目の音である「シ」は「導音」と呼ばれています。半音の進行感というのは強いのですね。もう一方の「ファ」の音を見てみると、なんとこちらも隣接する「ミ」の音と半音の関係にあります。
これらの動きを同時に鍵盤で弾いてみると、
めっちゃスッキリ!!!!
トライトーンが、半音ずつ動くと(この場合は歩み寄ると)キーの主音とその長3度という非常に安定していて協和的な音程に「解決する」ということがお分かり頂けましたでしょうか? この動きは理論的には「順次的反進行」と呼んだりします。
つまり、キーがCであるということを裏付けていたのはこのトライトーンの存在。この不安な輩が存在するおかげで、主音(トニック)がCであるということがはっきりするというわけです。
ちなみにこれはコード的に言うとG7→C、ダイアトニックコードのV7→Iの動きです。
先ほどのトライトーンが解決する動きが、G7の3度と7度→Cのルートと3度に含まれていますね(コードがわからない! という方はここは読み飛ばして頂いて大丈夫です)。
「ドミナントの解決」という言葉に聞き覚えはありますか? このG7はCメジャーキーにおいて「ドミナント」の役割を持っているコードです。ドミナントは「支配的な」と言った意味を持つ英単語です。つまりキーCという状態を支配しているのは「ファ」と「シ」というトライトーンだったのです。
というか、全ての調性音楽はこのトライトーンによって成り立っている、語弊を恐れなければ縛られているとさえ言えます。
《 支配者を倒す! 》
さて、支配者が分かってしまえばもう答えは見えたようなものですね。支配者が形成しているトライトーン、これを破壊してやればいいのです。
Cメジャーキーを支配しているトライトーンの片割れ「シ」に♭をつけて「シ♭」にすると、
もとあったトライトーンは破壊されて完全音程となります。
その代わりに、
「ミ」との間に新たなトライトーンが形成されました。この「ミ」と「シ♭」は順次的反進行によって「ファ」と「ラ」に解決する、つまりCメジャーキーのシに「♭」をつけたところ、キーFを支配する新たなトライトーンが生まれたのです。
Cメジャーキーのトライトーンのもう一方、「ファ」を「ファ#」にすると、同じ理屈でキーはGになります。なお「シ」に#、「ファ」に♭はつけても異名同音の「ド」、「ミ」になるだけで転調はできませんね。よって、Cメジャーの調号を1つ変化させるとき、♭はシに、#はファにつく、お分かり頂けましたでしょうか?
今ある1つのトライトーンを破壊することでスケール内の別の音との間に新たなトライトーンが1つ形成される。つまり#♭はトライトーンを破壊していく順番だったのですね。
《 今回はここまで! 》
いかがでしたでしょうか?
僕はこのトライトーンを破壊していくという考え方がとてもしっくりきています。違うアプローチで説明することも出来ますが、結局言ってることは同じだったりするのも音楽理論の面白いところです。
一度分かると当たり前のことなのですが、意外と説明できないことって音楽をやっていると多いと思うのです。そんな時は「まあいいや、そういうもん」で終わらせず、一歩立ち止まって、音楽の仕組みとちょっとだけ真剣に向き合ってみませんか? また、頭で考えるだけでなくしっかりと耳を澄ませてそれを感じるようにしてみると、自身にとっての音楽がより豊かなものになるのではないでしょうか。
今回はここまでです。口頭ならもう少しうまく説明できるのですが、文章にするというのは難しいですね。前提の共有具合がはっきりしていなかったり、(日本の音楽シーンの特徴なのですが)音楽用語において言語が入り乱れていたり、色々と分かり辛い点があったかと思います。
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ジャズクラリネット奏者・壱岐薫平の、
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