以前に、誕生日はどこに行きたい?何がしたい?って聞かれて、
会社近くの高層ビルの展望台に行きたいって言ってたんだけど、
奴のいつものくせで、その時は「いいよ」って答えていたくせに、
なんと前日になって「別の日にしよう」って言い出した。
「そのかわりに、平日に1日有休とって遊びに行こう!
俺は午前中出勤して、昼からまた体調不良とか言い訳して帰るから。
ね、それなら午後少しゆっくりできるでしょ?」
って提案してきた。
最近仕事が忙しくて、定時で上がれるかどうかわからないから、というのが
建前のようだが、本当の理由はどうなんだろうね。
気に入らなかったが、別の日に行くだけではなく
有休をとって遊びにいくという提案をしてきたため、
とりあえず素直にOKしたわけなんだけど。
(とりあえず今日のランチ)
仕事が終わって会社を出たのは19時過ぎ。
すごく早いわけではないが、展望台に行けないほど遅い時間でもない。
だけど、いつものところで待ち合わせして、いつものように駅方面に向いて帰る。
帰り道に新聞社のビルがあり、飲食店なども入っているため
自由に出入りできる。
そのビルに入って、いろいろ掲示されているポスターや写真を見ながら奴が言った。
「この前から考えていたんだけど、ほら、誕生日のプレゼントにこれなんかどうかな?」
「記念日新聞」
記念の日や誕生日などに発行された新聞の一部をパウチしてくれる有料サービスだ。
プレゼントは有休を取っての『時間』を作ってくれることだと思っていたので
少しびっくり。
さっそく上階にある新聞社のドアをノックする。
時間は19時を過ぎている。
普通に考えたらサービスの時間は過ぎているんだけど、
新聞社自体は夜も眠らないわけだから当然人も多くいるわけで、
すぐに女性の方が対応してくれた。
あたしの生年月日を伝えると、マイクロフィルムで当時の新聞を検索しはじめる。
むかーし、百貨店の配送センターでアルバイトしていた時も、
配送後の受領印をもらった伝票をこのように写真データにしてフィルムで取り込んで、
問い合わせがあった際の参考にしていたっけ。
当時の新聞の1面が映し出された。
最初から最後のラテ欄までを見ていく。
気に入ったページを印刷してくれると言うので
奴と相談して、1面と最終面を印刷してもらうことになった。
応接に通され、奴と仕上がりを待つ。
しばらくして、先ほどの女性ができたパウチを持ってきてくれた。
出来上がりは実物の新聞と同じサイズで結構大きなものだ。
早速ラテ欄を二人で丹念に見入る。
「わ、この人もう出てるんだ」
「この番組この時代からあったんだね」
なんて結構盛り上がる。
帰り道。
「これから毎年2ページずつ増やしていこうか?
そしたら何年かしたらその日の新聞がまるまる1部できあがるよ」
「それいいね。あなたはプレゼント考える手間も省けるしね

でもよくよく考えてみたら、自分の生まれた日のことって自分は覚えてないもんね。
きっとうちの母が見たらすごく懐かしむと思うよ」っていうと
「じゃあ、せひお母さんにみてもらって」って奴が言った。
そうそう、奴はうちの母と面識があるのだ。
知り合った当初、奴が仕事帰りによくうちの家に来ていたんだけど、
いつも母が自分の部屋にいる間に上がってもらっていた。
でもその日は母が遅くまで台所に立っていて、
どうしてもそこを通らなければ自分の部屋に行けなかったんだよね。
外で時間をつぶそうとしているあたしに、
「いいジャン、別に。俺あいさつするよ。会社の上司ですって」
「上司が夜遅くに家に来ちゃまずいでしょ?」
「仕事で打ち合わせがあるって言えばいいじゃん。外寒いからさ」
と言って強行突破しちゃったんだよね。
確かにあいさつはしてくれたけど、うちの母もバツイチで
男女のいろいろは知ってる人だから、特に何も言わなかったけれど
どういう関係かは察しがついているみたいだった。
いつもの駅で別れた後もしばらくメールでやり取り。
「そういえば言ってなかったね。おめでとう」
「ありがとう。知り合ってから6回目の誕生日」
「ほう!そうか。でもそれぐらいかな。お互いに年を重ねてるもんな。感慨深いかな?」
確かにいろいろあったよね。
今日の展望台は来週の水曜日の有休デートまでお預けになったけど
とりあえず、今日は思いのほか一緒に過ごせた誕生日でした。

























ピエール・エルメ・パリのマカロン


