この本のことをネットのニュース記事で知り、昨年11月から図書館で予約していたのです。
今月、高須クリニックの院長が「南京もアウシュビッツも捏造」というツイートをして、
アウシュビッツ博物館の公式アカウントから日本語で注意を受けていたばかり。
偶然にも、このタイミングで順番が回ってきたか!と思いました。
マイケル・ボーンスタインさんはわずか4歳の時に体験したことを、誰にも語れずにいたのですが、
「ホロコーストは嘘」だと主張するサイトに自分の写った写真が利用されているのを見て、考えが変わったそうなのです。
「もしも私たち生存者がこのまま沈黙を続けていたら、声を上げ続けるのは嘘つきとわからず屋だけにになってしまう」
この本が発売されてから一年近くが経過するわけですが、
どこの世界にもいる、嘘つきとわからず屋は相変わらずのようですね…。
読んでみて改めて言うまでもないですが、
ナチスによるホロコーストやアウシュビッツ強制収容所は本当に最悪です。
戦時中のゲットーでの暮らしには、ささやかな幸せがあったものの、不条理なことも多かったと分かりました。
何の非もないのに、ドイツ兵の気分次第で殴られたり、一家が惨殺されたり。掠奪や強制労働も。
これが本当に人間のやったことなのか?と、何度も何度も思いました。
それに、戦後もまだまだ苦労が…。
いくら戦争が終わったって、差別をする人心はそう簡単に変化しないのものなのですね。
様々な出来事について、ナチスが、ドイツ人が、と考えてはいけないと思いました。
結局のところ、一般市民みんなが巻き込まれて、誰も止めることができなかったのですから。
非ユダヤの人達は、ユダヤ人より優位でいたいと考えるし、
ユダヤ人同士だって、自分本位で仲間を裏切ることだってあります。
今まで助けてくれていた人達も、ナチスにバレて自分達の身が危険が及ぶかもしれないと思えば、
いとも容易く手のひらを返していたのが印象的でした。
たぶん誰にでもある、人間の闇の部分ですよね。
自分だけは大丈夫!って大きい声で言えない気がしました💦
長いものに巻かれて、最後に究極の選択をしないが為に、
日頃から人の意見に迎合しないことが必要でしょうか。
差別や対立の構造が昨今のヘイトスピーチの問題や、いじめの問題とも重なりました。
知ることや考えることが面倒に感じるということはあるでしょうが、
人類が同じことを二度と繰り返さない為に、事実は事実として知る必要があると常々思っています。
この本はアメリカで児童書として出版されたもので、日本語訳も割と平易な言葉で書かれています。
ぜひ今の中学生や高校生に読んで欲しいなと思います。
でも、大人が読んでみても特に違和感はありませんでしたよ👍
終始とてつもない体験が語られ、暗くて悲しい話のはずなんですが、
この極限の状況でも希望を捨てないで生き延びたマイケルさん達。
読み終えた後は、私も不思議と前向きな気持ちになれました😊
すべては「ガム・ゼ・ヤ・ヴォール」(=これもいつかは過ぎていく)という言葉の通り。
マイケル・ボーンスタイン&デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート『4歳の僕はこうしてアウシュビッツから生還した』(NHK出版、平成30年4月)