月夜夏樹は急いで未だ寝ているであろう祖母の椿刹那のもとに行き起こしにかかった。
「椿さん!刹那おばあちゃん!!」
「刹那と呼ぶなと言っただろう夏樹。」
夏樹が椿の名前を呼ぶとゆっくりと起き、不機嫌そうにかゆくもない後ろ髪を掻き夏樹を目を細めて見上げた。
「椿さんまたエリンの話して?」
「そうだね。そろそろ夏樹も体験するかい?」
「体験!?したい。出来るの?」
夏樹は体験できると聞き、迫るように前のめりになり椿の話を聞いた。
「じゃあこの羽を使ってナオって人を訪ねてごらん。この羽は無くしたり奪われないように気をつけてね?」
夏樹は椿から白い羽を大事そうに貰い、その場で羽を使った。椿は夏樹の笑顔の写真を見ながら「頼んだよ、夏樹。」と言い、切なそうに目を細めた。
羽で飛ばされた夏樹は目を開けると周りはどこもかしこも白く、夏樹は起き上がって様子を見るために歩き回った。すると女の子が上から降ってきて、ワンピースのフリルを翻すように一回周り夏樹の目の前に現れた。
「あなたは誰?」
夏樹は不審がりながら尋ねると女の子は微笑んで夏樹を見つめ答えた。
「私はナオ。あなたは月夜夏樹ね。椿刹那から聞いているわ。会えて嬉しい。」
「ナオさんね。宜しく。」
「早速だけどエリンを助けてほしいの!!」
ナオは夏樹の手を握って顔がぶつかるのではないかというくらいに顔を近付けて、頼みこむと夏樹は片足を後ろにし、距離を取った。
「でも、戦えないよ?武器もないし、ましてや強くない。」
「とりあえず武器と仲間が要るわね。ちょっと待っていて。」
ナオは慌てたように武器と仲間を集めた。夏樹は心配そうにナオの後ろ姿を見ているとナオが振り返った。
「これが武器。最初は剣でやっていくのが無難よ。で、これが冒険の書。」
ナオが剣と手書きで書かれた分厚い本を夏樹に渡すと、夏樹は分厚い本とナオを疑わしく見ながらため息をついた。
「冒険の書?どこぞのゲームから引っ張り出してきた。」
「コホン。椿刹那が書いたメモ帳よ。」
ナオはわざとらしく咳をするし、馬とハリネズミと執事を出した。馬とハリネズミはおどおどと夏樹の前に現れ、執事は夏樹の前に跪き手を取りキスをした。
「えっ……。誰?」
「私は佐久弥です。馬は瀬尉、ハリネズミはロール苺って言います。」
「私は月夜夏樹。夏樹でいいよ。よろしくね、佐久弥に瀬尉にロール?」
「「「はい!」」」
四人……いや、二人と二匹の自己紹介が終わると、ナオが呪文を唱え気づくとどこかの町についていた。するとおじいさんが民家から出てきた。