
2020年製作
★★★★(4.3)
本作はドイツ戦争末期を舞台にしているが、
従来の戦争映画にありがちな
暗さや重苦しさはほとんどない。
その代わりに登場するのは、
ナチス思想にどっぷりと染まった
10歳の少年である。
彼を主人公に据え、
当時のドイツ社会を
ユーモアと皮肉をもって描き出すことで、
全体主義の滑稽さを痛烈に浮かび上がらせている。
暗いテーマをあえて笑いに転化する手法は、
観客に新鮮な感覚をもたらす。
監督自身が
主人公の幻想としてのヒトラーを演じる仕掛けも印象的だが、
最も目を引くのは
やはり少年役の子役である。
実年齢に近い自然な佇まいを持ちながら、
洗脳された幼さと、
その裏にある迷いや弱さを巧みに演じ分けている。
彼の存在感があってこそ、
この物語は単なる風刺劇にとどまらず、
人間的な厚みを獲得しているといえるだろう。
戦争末期の狂気を
笑いの対象とすることは一見軽やかに映るかもしれない。
しかしそのユーモアこそが、
過去の重さを逆照射し、
観客に改めて考えさせる力を持っている。
本作は歴史映画でありながら、
同時に現代的な寓話として機能する
稀有な作品である。








