幻史のブログ

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島田 幻史 ■ オリジナル小説と、ゆるゆるな映画の感想です

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ジョジョ・ラビット (字幕版)

2020年製作

★★★★(4.3)

 

本作はドイツ戦争末期を舞台にしているが、
従来の戦争映画にありがちな

暗さや重苦しさはほとんどない。
 

その代わりに登場するのは、
ナチス思想にどっぷりと染まった
10歳の少年である。

 

彼を主人公に据え、
当時のドイツ社会を

ユーモアと皮肉をもって描き出すことで、
全体主義の滑稽さを痛烈に浮かび上がらせている。
暗いテーマをあえて笑いに転化する手法は、
観客に新鮮な感覚をもたらす。

 

監督自身が
主人公の幻想としてのヒトラーを演じる仕掛けも印象的だが、
最も目を引くのは
やはり少年役の子役である。
実年齢に近い自然な佇まいを持ちながら、
洗脳された幼さと、
その裏にある迷いや弱さを巧みに演じ分けている。
 

彼の存在感があってこそ、
この物語は単なる風刺劇にとどまらず、
人間的な厚みを獲得しているといえるだろう。

 

戦争末期の狂気を
笑いの対象とすることは一見軽やかに映るかもしれない。
しかしそのユーモアこそが、
過去の重さを逆照射し、
観客に改めて考えさせる力を持っている。
本作は歴史映画でありながら、
同時に現代的な寓話として機能する
稀有な作品である。

 

 

哭声/コクソン (字幕版)

2017年制作

★★★★(4.6)

 

祈祷師や悪霊、
それに日本人といった多様な要素が登場し、
観る者を惑わせる本作だが、
もしこの映画を
「幻覚性の毒キノコによるパンデミック映画」
として限定的にとらえるならば、
非常に興味深い視点が見えてくる。

 

凶悪な殺人事件が次々と起こる村で、
真の原因は
「幻覚性毒キノコによる中毒」
であるにもかかわらず、
村人たちは噂話や
祈祷師の荒唐無稽な語りにふり回され、
はじめから負のイメージを抱いていた
〝よそ者〟の日本人に疑いの目を向けていく。

 

〝毒キノコ〟という

明確に「見えている」原因を前にしながらも、
誰もが「見えもしない悪霊」の存在を信じ込み、
それがあたかも真実であるかのように

集団的に思い込んでいく。
 

そうした姿は、
まさに

「人々の認識が感染していくパンデミック」
として読み解ける。

 

劇中に描かれる「悪霊による現象」も、
毒キノコに侵された人々の幻覚として解釈すれば、
リアリティを帯びてくる。


観客もまた、
映像によってその幻覚世界に巻き込まれ、
事実と虚構の境界を見失っていく。

この構造こそが、
作品の恐ろしさをより深めている。

 

もし毒キノコを摂取した人々が
実際にそのような世界を見ていたのだとすれば、
そして、それが
「信仰」や「噂」や「偏見」と結びつき、
共同体全体が誤った方向へと

突き進んでいったのだとすれば、
この作品は、
オカルトの皮をかぶった

非常に現代的で社会的な寓話として
読むことができるだろう。

 

 

PLAN75

2022年制作

★★★★(4.4)

 

この映画は、
超高齢化社会を背景に
「75歳を超えた人間が尊厳死を選択できる」
という制度を提示する。

 

だが注目すべきは、
制度の是非を論理的に検証したり、
社会批判の素材として消費するのではなく、
その選択を
「老い」
という事実の延長として
淡々と描き出す冷静な視点である。

 

作中には制度に抗う人物も、
声高な異議申し立ても存在しない。
その代わりに置かれているのは、
特段の重病や貧困に直面していない、
しかし確かに「老い」によって
生の輪郭を失いつつある人々の姿である。

説明的な台詞や

過剰な演出を排したその描写は、
むしろ観客に思考の余白を与え、
制度の重さを一層際立たせている。

 

この抑制された語り口は、
一見すると中立的・非批判的に映るかもしれない。
だが実際には、
その静謐さこそが観客を挑発する。


正面からの論争を回避することで、
作品は受け手に思索を強いる構造を獲得し、
観る者の年齢や人生経験に応じて
多層的な解釈を可能にしている。

 

結果として本作は、
未来社会の寓話という枠を超え、
〈老い〉と〈死〉をめぐる
文化的・倫理的想像力を問う、
硬質な映画体験へと昇華している。

 

 

 

2014年製作

★★★★(4.7)

 

街中に設置された
監視カメラや張り込みなどで
犯罪者を監視する
警察内特殊組織の話です。

 

面白いです。
冒頭の25分間で
この映画の魅力がテンポ良く
描かれてます。

 

この25分間が面白くなかったら
残りの1時間35分は
観なくてもいいです(^^;

 

プロを目指している新人、
それをやさしく見守る先輩たち、
プロフェッショナルな監視者のリーダー、
冷酷で完璧主義者な犯罪者リーダー、
それぞれのキャラ設定は
新しくはないかも知れませんが、
魅力的です。

 

昔のドラマにありがちな
先輩のイジメとか
無駄なパワハラとか
主人公の家族の苦悩とか
そんなムダなもの?(^^; は
一切ありません。

 

あくまでも、
完璧な犯罪を目指す者と、
それを食い止めようとする者たちの攻防が
描かれています。

 

それにしても
よくあることですが、
『監視者たち』というタイトルは
いかがなものでしょう。

 

このせいで
この映画を観る気が起きなかった、
といっても過言ではありません。

題名だけでは
ストーカー集団の話かと思ってしまいました。
ウソですが…。

 

いつものように
タイトル批判しても
いい案があるわけではないのですが、
この映画がとても面白かっただけに、
ちょっと不憫な気がしただけです。

 

といっても原題の
『COLD EYES』では
もっとわからないとは思いますが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

2007年製作

★★★★★ (5.0)

 

あの『ファーゴ』(1996年)を撮った
コーエン兄弟の監督作品。
と言って知っている人は
どれぐらいいるのだろうか。

 

この映画の1番の魅力は、
断然ハビエル・バルデムが演じた
殺し屋アントン・シガーである。

 

その容貌、

大柄な体躯に寸胴のようなシルエット、
一貫した無表情と沈黙、
そしてボブカットの髪型はもう反則級。

 

常識的な「殺し屋」のイメージからは著しく逸脱しており、
見る者に一種の不気味さと笑いを同時に喚起する。
実際、コーエン兄弟自身も、
この髪型を初めて見たときは大笑いし、
即座に採用を決めたという話があるが、
それも納得である。

 

物語終盤、
脚に銃撃を受け痛みを感じるシガーの姿に、
「この男も生身の人間なんだ」と一瞬気落ちしたが、
その後、脚にめり込んだライフル弾を
自分で取り除く異常性を見て安堵した。

 

こんな魅力的な殺し屋シガーを演じた、
ハビエル・バルデムのファンになった方は、
ウッディ・アレン監督の
『それでも恋するバルセロナ』はお勧めしない。
あんなプレイボーイなバルデムなんて
とても見ていられない。