いつもの公園を
一人で散歩をしていたら
親子でキャッチボールをする姿が見えた。
小学生くらいかな…
いつもなら下ばかり向いて歩き
落ち葉を踏みしめて歩いていたが、
そんな親子の姿に
気がつけば僕は立ち止まり
しばらく眺めていた。
また息子と
キャッチボールができる日が来るのかな…
息子は体育会系ではなく
どちらかと言うと文化系だ。
しかし何故か野球は好きだった。
playはしないが観るのは好きだった。
そんな息子だったが
中学生になったばかりくらいの時
僕は息子をキャッチボールに誘ってみた。
色々とあって父親の僕に、
少し心を閉ざしていた時期でもあった。
一緒にスポーツ店へ行き
ちゃんとしたグローブも選んであげた。
息子はグローブ
父はキャッチャーミット。
息子とキャッチボールができる
公園へ行ってはみるが
他の子たちやクラブチームがいたりすると
帰ろうと言ったり、
誰もいない所でやろうって言ったり…
息子はそういう子なのだ。
「お父さんがいれば大丈夫だ」
僕は小学生の時から高校まで
本格的に野球をやっていた。
高校までずっとキャプテンだったし
本気でプロへ行くつもりでいた。
しかし以前から家庭で色々あって
高校3年の最後の夏の大会の前に
大好きだった野球を辞めた。
夢は幻となって消えたのだった…
それ以降、
僕は自分の中で「野球」を封印していた。
そして、
僕は息子のお尻をポンポンと叩き
公園の端っこだけど
キャッチャーミットを構えた。
「さあ!お父さんめがけて投げてみろ!」
最初は照れ臭そうにモジモシしていたが、
次第に息子に笑顔が戻ってきた。
上手く投げなくたっていい、
思い切って投げてみろ。
そしたら
逆に僕は疲れてしまったが
まだまだやる!って
気がついたら
薄暗くなるまでやったっけな(苦笑)
でも嬉しかったな…
僕は息子と肩を組んで家まで帰った。
そんな息子も、
もうすぐ高校3年生。
キャッチボールは
大人になったってできるし
父と息子なんて
交わす言葉は少ないけど
キャッチボールって
いわゆるひとつの
会話だと僕は思っている。
またそんな日が来るのかな、
息子とキャッチボールができる日が
来るのかな…
この病気になって
そんな事を思うようになってしまった。
そんな事を思いながら
公園の落ち葉を踏みしめて
また歩き始めたのだった。