コロナウイルスが現代社会に何をおよぼしたか…という論議は昨今、多くの分野で行われています。本当に多岐にわたる考察があるし、世界中の一人ひとりが思うところがある事象です。


私的に骨身にしみたのは、健やかでいることの素晴らしさで、自分だけが健やかであるのは全く健やかではない、ということでした。


東京も緊急事態宣言解除のカウントダウンと言われています。夜の外出がすっかりなくなった自粛生活ですっかり朝型にシフトチェンジし、健康のためにいくつかルーティンを増やしたり暮らしの見直しをしました。


ささやかな例を挙げるとただ飾るだけだった桃の形をした蓋付き容器は、お香入れに。お香を入れていたタイのパイナップル柄蓋付き器は、らっきょう入れと変わりました。


毎朝焚いているブータンのお香は、リビングだけでなく寝室にも置くようになりました。

健康も心地よい暮らしもローマと同じで一日にしてならず。美しく健やかに暮らしたいと願い実践する積み重ねの先になにが待っているのか。今は全くわかりませんが、少しずつ積み重ね実現する豊かさが、コロナウイルスの出現で変化した日常を生きて、とても腑に落ちています。


新しい生活の準備をすることは、新しい世界への準備にもつながっている。そんな実感を持ちながら、世界が健やかであるようにと願っています。

 

背景の布は、ブータンのクラフト市場で買ったアンティークの毛織物。北部で作られたものらしくこの布自体が「レメディ」だと伝えられました。寒い地方で身体をあたためるために腰回りに使っていたとか。いわゆる漢方染めの一種だと思います。

テレビ東京系の人気番組「孤独のグルメ」が好きです。知っている店が出てくると嬉しいし、出たと知らなかった店に連れて行ってもらえるのも、すごく嬉しいです。

 

主人公の井之頭五郎さんは下戸ですが、原作者の久住昌之さんが絵に描いたようなお酒ラバーなところも楽しく、本編もさることながら個人的にはその後の原作者訪問コーナーがありがたかったりしています。

 

久住さんが自身のことを「晩酌体質」と言っていましたが、私もまぎれもなくそっち体質だと思います。料理をすること自体はそんなに苦痛ではありません。それもまた、お酒との相性を考えるのが好きだからのような気がします。

 

最近はとみに自炊が増えました。回数増えれば食材がなくなるのも早いので、買い物では保存できるものや、普段はあまり手に取らないものを買うことも多くなっています。日常のことですから、長時間かかる手の混んだものなどはまず作りません。そのかわり、調味料はとても良いものにして、素材に助けてもらっています。

 

たとえば、汲み出し豆腐は塩とEXオリーブオイルかけて、もずく酢とまず。アボカド蒸してその間にゴマ煎ってすって(ネットリするぐらい)、生姜汁と醤油と酢と黒酢でのばしたタレをかける。見た目のために糸唐辛子と白髪ねぎを上から(これは「孤独のグルメ」で見たメニューがヒントになっています)。これからだと、茹でたてアスパラガスに上からパルミジャーノと胡椒をたっぷり削って半熟卵のせたものなども作ります。

 

このあたりで晩酌ってからメインとなる感じです。塩は削りたて岩塩、酢は米酢(心の酢というの使っています)やビオのワインビネガー、醤油は井上醤油と紫大尽というのを使い分けています。塩はいろいろなところで買ってくるのが好きですし、胡椒も直前で削りますが、カンボジアのものをアメ横で買ったり(スパイスの種類も多く安いです)しています。オリーブ油はまだ定番がありませんが、少しにごり目のピリッとした刺激がある、絞った!って感じのものが好きみたいです。味噌は自家製で、この時期は食用のために育てている山椒の苗木から少し葉をつんできて混ぜたものを季節の野菜につけて食べたりします(唐辛子やみりんと合わせお肉をつけたものを葉にくるんで食べるのも好きです)。ハーブは買い置きも難しいし、摘みたてがいちばん香りが良いし、なにより買うと高いので、できるだけ鉢植えしています。年中緑のローズマリーは冷蔵庫の脱臭にも使います。これからの季節は紫蘇やバジルを使うのも楽しみです。カレーのためにカレーリーフの苗を育てようか悩み中です。

 

それもこれも突き詰めればおいしく晩酌したいがためなのかもしれません。そう思うと、酒と肴の誘惑と効力のなんと大きなことよ!と思います。

 

今は日々の生活に制限が多く、発散できる刺激的な楽しみを味わうのが難しい。そんな中ですが、前回書きました読書や、ささやかな晩酌に喜びを見出すようにつとめています。今週は今年のバジルと紫蘇を仕込もうかと思っています。夏にはきっと、ワシャワシャと葉を茂らせ、晩酌に豊かな香りをもたらしてくれるはずです。

 

京都大学の望月新一教授がabc予想を証明したというニュースが、つい先日報道されて大きな話題になりました。これがどれほどの快挙なのか、たくさんの人たちがそれぞれの例えで伝えています。

 

そんな中、「これがあれば“フェルマーの最終定理”を数ページで証明できる。という記事を見て、「それはすごい」と驚きました。

 

フェルマーの最終定理は、新潮社から大変秀逸なノンフィクション本が出ています。私はそれを東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さんから教えてもらいました。フェルマーという謎多き数学者による投げかけたままの問いに、世界中の数学の猛者たちが挑んでいく様が綴られているのですが、数学の知識などなくても非常に楽しめる、ページを捲る手が止まらない一冊です。

 

谷中さんに「だったら絶対読んだほうが良いよ」と薦められた理由は、この本を説明するのに谷中さんが岡潔先生の言葉を引用したことがきっかけでした。

 

「数学に最も大切なのは、情緒である」。

 

彼はその言葉がとても心に残っていたと言います。偶然にも、私も岡先生のその名言に大きく驚き、彼の「春宵十話」や、小林秀雄先生との対談集「人間の建設」に感銘を受けていたこともあり、「フェルマーの最終定理」をすぐに取り寄せて読んだのでした。

 

「数学に最も大切なのは情緒」。この言葉が発端となり、手にとった本は他にもあります。非常にレアなインディペンデントの数学者である森田真生の「数学する身体」です。筆者は岡先生をリスペクトしているといいます。

 

そして、望月教授の快挙により、大きく注目されているのが加藤文元の「宇宙と宇宙をつなぐ数学」です。このabc予想証明をわかりやすく解説しているということで、現在ベストセラーになっています。

 

文系、理系などと学問はよくカテゴライズされます。しかしその頂点といわれるところは、崇高な知識を要しながら、実は非常にボーダレスな存在なのではないだろうか…。今回のニュースを目にして、そんな予想をより確かなものに感じています。