4月・5月に読んだ小説をランキング形式で紹介していきまーす。
注1)偉そうにレーダーチャート評価なんてしてますがあくまで素人の所感です。なんか本読みたいけどどれがいいかわかんないってときに参考になれば嬉しいです。
注2)ランキングもあくまで僕の好みです。
注3)本編の面白さがなくなってしまうような重大なネタバレは避けますが、前情報を一切入れたくないという人はスルー推奨です。
注4)ブログ主は現在エヴァと攻殻の影響で大絶賛SFブーム中です。
6位: 『ニューロマンサー』 ウィリアム・ギブスン
元祖・サイバーパンク。
感想。いやあ、難しかった。
街の風景はおそらく『AKIRA』、電脳空間に没入して戦うのは『攻殻機動隊』。
おそらく多分にニューロマンサーの影響下にある2作を履修済みにも関わらず、内容が半分以上入ってこなかった。
理由としては、やはり電脳空間の専門用語がなんの説明もなくポンポン使われること。
氷(アイス)=攻性防壁、マイクロソフト=外部記憶装置などなど、wiki無しでガジェットを理解するのは不可能に近い。
まだサイバーパンクというジャンルが未開だった時代にこれが出版されて、よく人々の理解と支持を得られたよなあ。
自分は攻殻につい最近までどっぷりハマっていたのに、完全に置いてけぼりを食らってしまった。。。
読みにくさだけで言うなら、個人的には『ドグラ・マグラ』以上だったかも。
ドグマグはストーリー本編は割と読みやすいし、キチ●イパートみたいな明らかにちゃんと読まなくていい部分と住み分けがされていたからまだ読めたな。
ただ、2周目3周目と読み直していくほど理解が深まってストーリーも追えるようになっていくような感じはする。
でも今はなんとか読み終えた満足感と疲労感でいっぱいなので、それはまだ少し先になるかな。
5位: 『ユービック』 フィリップ・K・ディック
ディック2作目。
世界観は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と同じようないわゆる近未来SF。ただし本質はそこじゃない。
登場人物たちは"超能力者"と呼ばれる犯罪者?を取り締まる"不活性者"。ただしそこも本質じゃない。
本質は、退行していく世界とその特効薬"ユービック"。
それだけで1本かけそうな前者2つはあくまでそのミスリード要素に過ぎない。
とにかくミスリードが多過ぎて、真の黒幕に気づける人はそうそういないんじゃなかろうか。
なにが本当でなにが虚構かわからなくなる世界観は、おそらくディックの代名詞(まだ2作しか読んでないのでわからないが)。
これも映画にしたら面白そうだけどな。
ノーランの『インセプション』とか『TENET』に近いし。
退行していく世界で、身の回りのものが少しずつ変化していくさまはジョジョのスタンド攻撃みたいだった。
超能力者と不活性者のバチバチの熱いバトルを期待していたから多少の肩透かし感はあったが、ディックの世界がたっぷり詰まった1作なので一見の価値あり。
4位:『幼年期の終り』 アーサー・C・クラーク
ディックと並ぶSF巨匠、クラークの代表作。
第一部では未知の宇宙人との邂逅。
第二部では平和的に支配される人類の知への渇望。
そして第三部、人類の‟幼年期の終り”=滅亡、究極の生命体としての転生。
60年以上立った現在でも想像の遥か先にある世界とその風景を、わかりやすく丁寧に、そして美しく描いたモンスター小説だった。
なんといっても最高なのは、やはり第三部。
宇宙人こと‟オーバーロード”たちの本当の思惑。
大人たちの元を去っていく‟新人類”=子供たち。
ハーメルンの笛吹き男を彷彿とさせるような、ゾッとする展開。
子供を失い、地球とともに静かに死んでいく運命を悟った夫婦の最後の夜の寂しさと物悲しさが胸に刺さる。
そして最後の最後。
子供たちの、一つ上の生命体への孵化。
これこそが幼年期の終り。
エヴァ好きとしてはついつい人類補完計画を重ねてしまうが、こちらの方が圧倒的に先で、むしろこっちが元ネタだろう。
終わりゆく地球の描写は誰も見たことのない光景。
けれど目から飛び込んできた文章が脳内にくっきりと像を結び、そこに確かにアルマゲドンが広がっていく。
百聞は一見に如かず。ぜひクラークの描く世界に飲み込まれてほしい。
3位:『三体』 劉慈欣
中国で驚異的に売れて、日本でも最近注目されているSF巨編。
ジャンルは物理系(というか理系科目全般?)ハードSF。
知識量はグレッグ・イーガン、筆力は小松左京と言えばこのシリーズの凄まじさが伝わるだろうか。
この本はシリーズ3部作の1作目で、主人公はナノマテリアル物理学者の男。
ゲーム“三体”を通じて隠された真実を解き明かしていくサスペンスも見どころだが、何より魅力的なのはやはり物語の根幹をなす圧倒的な物理学の知識。
理論ではなく「観測」という実験的な部分をメインテーマに据えているハードSFはこれまであっただろうか。
僅かばかりだが物理を学んでいる学生の自分でもニヤニヤが止まらなかった。
一冊でもかなりの厚みがある大長編なのだが、これが壮大な三体文明との戦いの序章に過ぎないというのだから、恐ろしい。
2位:『三体Ⅱ 黒暗森林』 劉慈欣
『三体』シリーズ3部作の2作目。
前作で存在を認識し、人類に宣戦布告をした三体文明。
本作では彼らとの邂逅、人類が強大な敵に立ち向かうスペクタクル長編といったところか。
圧倒的な知識量と強烈な筆力で殴られるような衝撃の前作を遥かに凌ぐスケールの大きさ。
エンターテイメントの頂点に限りなく近づきつつある、そんな確信を得る完成度だった。
地球外生命との戦いと言っても、宇宙戦艦でドンパチやるような従来のスペースファンタジーではない。
敵・三体文明の科学力は人類とはまさに次元が違うということは前作の終盤に登場した「智子」からも伺えるだろう。
この『黒暗森林』の中では人類の科学技術も絶大なブレイクスルーを成し遂げるが、それでも三体文明にとっては子供のままごとも同然なのである。
今回の主人公は天文学者であり社会学者の男。
最終的にはそれら2つを組み合わせた「宇宙社会学」を編み出し、強大な三体文明との闘いに身を投じていく。
これ以上は何を言ってもネタバレになるので自重するが、最後に1つだけ。
史強アニキかっこよすぎ。
1位:『パプリカ』 筒井康隆
今敏監督のアニメ映画で有名な“ヤバい方のパプリカ”、その原作。
夢と現実が交差するサイケデリック小説というだけあって『ドグラ・マグラ』並みの読みづらさを覚悟していたが、めちゃくちゃ読みやすかった。
物語後半、世界が崩壊していくいわゆる未体験ゾーン。
おそらく起こっていることはとても難解で常軌を逸していて、想像力の先にある狂気。
それでも文章がスルスル入ってきて、頭の中に映像が浮かぶのは筒井康隆の天才的な筆力によるものだろう。
今の時代なら大炎上不可避の過剰な女性蔑視描写はやや気にかかるが、それを差し引いても圧倒的に面白い。
夢から醒めてまた夢、夢の現実への干渉、その境界が曖昧になっていく。
読み進めるにつれて自分ももしかしたら夢を見ているのかもしれないと思い始めてしまう、まさに身の毛がよだつ瞬間を何度も楽しめた。
そしてなにより、主人公のパプリカちゃんが超かわいい。
小説の登場人物にここまで心を奪われるのは初めてかもしれない。
パプリカちゃんに精神治療されたい。
この本を読んでそう思わない男は一人もいないだろう。