午後からトレーニングを開始する。

奥琵琶スポーツの森。

一周1.5kmの広さ。今度出場するリレーマラソンの一区間の距離と同じだった。

「最初は軽く流すか」

1km 7分間のペースで走る。何も運動していないおっさんにはきついペースだが、20〜30代の若者にとっては楽勝のペースである。

「一周したら、本気ペースでリレー練習な」

「ハァハァ…」

S井の息づかいが聞こえる…

「え…」

一周を終えると、S井が芝生に跪いていた。

「まじキチぃ…」

俺とT田は少し引いていた。

（え、こいつの体力、なさすぎ…）

「これからリレー練習な。順番はじゃんけんで」

S井は当然の如くじゃんけんに負け、休む間も無く走り出した。

死にかけた者に鞭打つという行為は楽しい。マウントは心の清涼剤だ。

S井が8分くらいかけて帰ってきた。

20代の平均タイムが6:30くらいだから大分遅い。

次は俺の番だ。

普段全力で走ることはないが、この時は全力で走ってみた。

タイムは6分45秒くらいだった。

40才の平均タイムが7:00くらいだからちょっと速いくらい。

自分ではもっと速いものだと思っていたが・・。人は自分を過大評価するものだから仕方ない。

T田は7分00秒くらい。20代の平均タイムよりやや遅め。

この調子で俺らはそれぞれ全力でリレー練習を計2週ずつ行った。

終わった後、俺らはダラダラ休憩していた。

子どもたちがバスケをやっているのを見ながら、「俺らもバスケやりてぇよな」なんて話していた。

「さて、練習再開・・」

すると、近くにいた小学校低学年くらいの子どもが声をかけてきた。

「バスケ、教えてあげよっか？」

「え？」

俺らは驚いてしまった。怪しいおじさん３人組に小学生が１人で話しかけてきたからである。

T田は子ども慣れしているのか、子どもを不安にさせないように咄嗟に応じた。

「いいの？一緒にバスケして？」

「うん、いいよ！　あっちに友達いるから3 on 3できるよ」

「ありがとう！」

俺は茫然と視ていた。

（いい大人ってやつは子どもに好かれちまうんだ）

俺は子どもが苦手だから、１人だったらこんな展開は起きなかっただろう。

そして・・・

奥琵琶スポーツの森のバスケコートで大人（20代×2、40代×1)　vs 子ども(小学校2年生×1、小学校4年生×2)の試合が始まった。

俺はバスケ初心者だが、圧倒的にリーチで勝っている。子ども相手なら勝つことは可能だ。

俺たちは子どもの手が届かない高さでパス回しを繰り返した。（名付けて、通天閣パスや！！）

子どもを翻弄し、俺らは点をとることができた。

上手さでは子供たちのほうが上だった。

だが、バスケは上手さより高さが勝敗に直結するのかもしれない。（素人レベルなら）

子どもたちは悔しがって、本気を出してきているようだった。

「ダブルチームや！」

俺とT田が小学生を相手に本気ディフェンスをする。

「真ん中ガラ空きじゃん！」

俺らはあっさり抜かれて小学生にレイアップを決められた。

（こいつら、強ェ…）

「ボール、俺に回してください・・」

バスケ経験者、S井の闘志に火がついたようだった。

俺はS井へパス。

S井は飛んだ・・・。

「フェイダウェイ・・・」

（誰からも囲まれていない状況で敢えてフェイダウェイを・・？！」

「ガン・・」

普通にシュートは外れた。

子どもにリバウンドを取られ、普通に失点した。

結局、俺らは大敗した。

「お兄ちゃんたち、またやろうね！」

子どもたちはかなり俺たちに心を許しているようだった。

だが、俺は最後まで子どもに気を許していなかった。

（この子の親から不審者扱いされて通報されんとも限らんからな・・・）

バスケ後、俺たちのランニング練習にも子どもたちは付き合ってくれた。

死にかけているS井に対し、

「がんばれ！あと300m！」

と子どもが鼓舞している画を見て、（俺だったら死にたくなるね）と思った。

リレー(一人7kmづつ)とバスケ(20分)のトレーニングが終わり、俺たちは合宿地を後にした。

つるチル合宿 2

つるチル合宿　2