へいほい 「おじき、どこいってたの。連絡取れないから、死んでんじゃないか
って。
ただでさえあの顔だから、死に顔なんてとても見られたもんじゃない
って言ってさ。
誰も様子見に来ようとしないんで、おれが代表で見に来たんだけど」
はっかい 「どこにも行っとらんよ。
もともと、時間は存在しないということは理解しているつもりだった
んだが。
アインシュタインも特殊相対論でそう言ってるし。
だがな、空間もないとなると、かなり困るんだよね」
へいほい 「だからって電話にも出ないんかい。
ていうか、時間がないって言われただけで困るよ」
はっかい 「いや、時間というのは運動から導き出せる概念だから、運動のほうが
本質的だろってこと。もっとも、これはこっちの世界の話だけど…
空間がないと運動もないよな」
へいほい 「この、おじきの枕になってる『素粒子論』って本は、今の話に関係
あんの?」
はっかい 「素粒子のふるまいを知ることは、この世界より本質的な世界を知る
ための手がかりになるのよ。
根源の実在について情報を提供してくれるという意味で、素粒子は
究極の、あるいは無矛盾の言語だとも言える」
へいほい 「量子コンピュータのプログラム言語が素粒子ってこと?」
はっかい 「そうだな。話題の文脈からは、ずれるけど。
やっぱ、あっちの世界には空間はないのかな。
運動があると時間が出てくるから、運動がない=空間がない、
ってことか。
ポテンシャルをもちつつ運動がない、っていうのも矛盾するから、
空間がないのか。
あっちはあくまで静かで、ごたごたは全部こっちに押し付けるってこと
かよ。
なんで、そこまで無じゃなきゃいけないんだよ。なんで…」
へいほい 「おじきよぅ、そんなにあせらなくても、近いうちにあっちから、ちゃんと
お迎えが来るからさぁ。
それまでの、お楽しみにしときなよ、ねっ」