親友と喧嘩をしようと思った。


勘違いしないでほしい。

嫌いになったわけでも、怒っているわけでもない。

ただ、もっと仲良くなりたかった。


きっかけは、「なんだか噛み合ってない気がする」なんて些細なことだった。

互いに頑固で、意見が違うことは幾度かあった。

しかし、思い返せば、それについて話し合ったことはなかった。


いちいち話し合うのが億劫だったのだろうか。

それとも、意見の不一致について何も思うことはなかったのだろうか。


おそらく、答えはどちらでもない。


きっと、私たちは互いの心に触れることに怯えていた。


中学校で出会ってから6年。

なんとなく、親友と呼ぶようになってから4年。


未だ私は、彼女の負った心の傷のなんたるかを知らない。

彼女もまた、私の抱える過去を知らない。


傷つきすぎた私たちは、粉々に割れた心を互いに傷つけないようにするあまり、相互に触れられないでいた。


きっとお互いすでに知っていた。

今の私たちは、親友と呼び合うには遠すぎた。


私は、ずっと彼女が好きで、尊敬し続けていた。

私は、彼女の厳しい過去を生きてきた人間特有の深み、言葉の重みをとても好いていたはずだった。


しかし今思うのは、私はちゃんと知ろうとしていなかったということ。

だから、私は彼女のことが知りたかった。

何に傷つき、何を抱えて大事にしてきたのか知りたかった。


本音でぶつかりあったら、何か得られるのかは確かでない。

むしろ、深い溝を生むかもしれない。


それでも、今しかないと思った。


関係を一歩深めるために。