- エブリ リトル シング クワガタと少年 (講談社文庫)/大村 あつし
- ¥500
- Amazon.co.jp
少年はなぜあえて五本足のクワガタを選んだのか。
なぜこんな些細な出来事が夢の実現に悩む人々に勇気を与えたのか。
副題作はじめ、巧みに張られた伏線を拾いながら先の見えない
展開を見せる。
読者が自殺を思いとどまった、不登校児を救ったなどの逸話が
ニュースにもなった愛と感動の連作短編。
人生が変わる奇跡の六編。
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ブログで絶賛されていたのを読んで読んでみた。
好きなジャンルである短編集。
う~ん、確かに良い話だしエピソード通しの繋がりも面白いけれども
「自殺を思いとどまった」、「不登校児が治った」という販促の帯は
どうなんだろう?
なんかダイエット系の通販やら、新興宗教を連想してしまうのは僕だけ
だろうか?
まぁ、それは売り方の問題だし、物語に対する人の感想や価値観は
人それぞれだから、本の良しあしにはあまり関係ないけれども。
表紙の絵が好き。
女性が本を手にしていて、その表紙はその風景そのものという
無限ループ状態。
合わせ鏡みたいな。
このパターン、たまに見かけるんだけど∞というのはロマンだね!
まぁ、この本は表紙が女性の指で隠れちゃってるんだけど。
敢えて隠してるのかな?
1つ1つのエピソードは独立しているが、絶妙なつながりを見せたり、
時系列が違う話だったりして面白い。
ああ、あの人物か!みたいなちょっとした感動が味わえる。
以下は印象に残った先生から生徒への(心の)セリフ。
「現在の苦労なんて、将来の喜びのための一時的な借金に
過ぎないんだよ。
そんな利息もつかない借金なんて、目標を達成して
一括返済いちゃえばいいのさ。」
「若い時の苦労は買ってでもしろ」が口癖の恩師がいたけど、
それに通じる話だなぁ。
ハイリスクハイリターンみたいな(ちょっと違うか?)。
苦労があるから喜びも大きなものになる。
毎日がごちそうだったら、すぐに飽きるものだ。
それと
「山頂への最短距離なんてないんだよ。
一直線じゃ、勾配がきつ過ぎてのぼれないだろう。
道がくねっているからこそ登れるんだ。
一見無意味な経験を本当に無駄に終わらせてしまうか。
それともそれを糧にできるか。
人間には二種類しかいない。」
というセリフ。
これも良くある話ではあるんだけど、それだけ無意味と思われる事を
嫌う人が多いという事だろう。
まぁ、確かに無駄で面倒な事はしたくない。
効率良く生きていきたい。
そう思う。
でも無駄で面倒な事だってやらないといけない事も当然ある。
しかし、それはその人次第でその人の糧にできる事なんだと。
そう考えると本当に無駄な事なんてそうそうないだろうし、誰かが
やらないといけない面倒事を、自らやる事で円滑になる
人間関係だってあるはず。
そういう気持ちを胸に生きていけば、また違う世界が見えてくるのだと
思う。
とここまで書いて思った。
確かに自殺を思いとどまったり、不登校をやめようと思えるだけの物が
この本にはあるのかも。