記念艦
2018年6月・呉
40年を超す現役艦としての人生に幕を閉じた彼女は、未だ呉に居た。
「護衛艦みちつき」ーーー彼女の右舷則には、そう書かれた横断幕が堂々と掲げられていた。
みちつき型護衛艦「みちつき」ーーーーー
ーーーいや、秋月型防空駆逐艦「満月」は、日本海軍、アメリカ海軍、海上自衛隊での実戦経験を持つ、歴戦の艦であった
秋元傑は、何度見ても飽きない彼女の勇姿に心を奪われていた。
艦尾の対空ミサイル発射機ーもうすでに過去の産物となってしまったテリア・ミサイル。ステルス性の一切ない美しい艦橋と煙突。艦首に唯一残る主砲。
そして、
力強く靡く旭日旗。
彼は、奥の同型艦「はなづき」と見比べ、やはり「みちつき」の方が美しい物だとつくづく感じていた。
もちろん、素人にはこれらを判別することはできない。筋金入りのミリオタでさえ、艦番号や背景が見えなければ、識別は難しい。
しかし、彼は絶対的に彼女らを見分ける事が出来る自信があった。いや、識別出来た。仮に両艦共に大破していても、彼なら識別が可能だろう。
なぜなら彼は、数十年前に彼女の最後の艦長を務めていたからだ。