「星を継ぐもの」/人類が受け継いだもの | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
星を継ぐもの (創元SF文庫)

超有名SFですよね。なんとなく、最近、SFも怖くない!、と思えてきたので、読んでみました~。しかし、これ、実は四部作だったのですねえ、続きもぜひ読まなくては。

あらすじを引きます。

 
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。

30代の半ばにして核物理学の権威であり、会社に自分専用のポストを作らせる程に優秀なヴィクター・ハント博士は、ある日、理不尽とも言える指示を受け、自身が設計した画期的な機械と共に、国連宇宙軍(UNSA)が居を構えるヒューストンへと駆り出される。彼を待っていたのは、UNSAの航空通信局(ナヴコム)本部長のグレッグ・コールドウェルと、月面で発見された五万年以上前の死体。

各分野から集められた専門家たちが、この謎に挑むのだが…。

主たる登場人物は、このハントと、コールドウェルに、生物学者のダンチェッカーですかね。あ、あと、”チャーリー”と名付けられた月面の死体。所属していた会社で、ハントとコンビを組んでいた、ロブ・グレイは途中からフェード・アウト。

その全貌は明らかにされないけれど、一本釣りのような手法でハントを駆り出したコールドウェルという人物も気になるなぁ。

二十年以上もの長きにわたって彼は熾烈な闘争を勝ち抜き、宇宙軍最大の機関の長にのし上がったのだ。白兵戦にかけては、彼は百戦錬磨の古強者である。しかも、その間彼は自らの血を一滴たりとも流していない。以前のナヴコムなら、あるいは今回のようなプロジェクトは与り知らぬことだったかもしれない。これはナヴコムの手に余ることかもしれない。その意味では土台UNSAにとって荷が勝ちすぎる仕事かもしれないのだ。それはともかく、現実にコールドウェルは責任者の立場にある。プロジェクトの方からナヴコムの膝元に転げ込んで来たのだ。コールドウェルは自分の手で仕事をし遂げる決心だった。協力の申し出があれば、それは拒まない。しかし、プロジェクトはあくまでもナヴコムの名において推し進めなくてはならない。それが気に食わないと言うなら、この仕事を横取りしてみるがいい。そう、やれるものならやってみろ―。
(P41、42より引用)

実際に謎を追うのは、研究者たちであり、ダンチェッカーであり、ハントであるのだけれど、後ろで糸を引くのはあくまでコールドウェルなんだよね。何故に、彼はこんなタフさを身につけたのでしょう? というか、リーダーってこういうものなのかもしれないけど。まさに適材適所に、ぴたぴたと人を嵌めていく手腕が見事。

最初はどうしようもない堅物に見えたダンチェッカーは、ラストにやってくれます。いいねえ、かっこいいねえ。途中から、ファーストネームのクリスで呼ばれるようになるし、ただの堅物ではありませんでした。

ハントに関しては、ただただ先へ、未知の世界へと突き進んでいく、その生きざまが興味深い。以下は、有毒ガスがたちこめる、荒涼とした木星の衛星、ガニメデでの彼の独白です。

彼は生涯、一度も立ち止まることなく歩み続けて来た。そして、彼は常にそれ以前の自分から未知の自分へ変貌する過程を生きていた。新しい世界に立つと、必ずその向うからさらに別の世界が彼を差し招いた。どこへ行っても周囲は知らない顔だらけだった。見知らぬ顔は、ちょうど前方の靄の中から浮かび上がってくる岩の影のように、彼の傍を流れて消えて行った。岩と同じように、人々は一瞬、紛れもなくそこにいるかに見えながら、やがて幻のように背後の闇に吸いこまれた。
(p257より引用)

そうして、彼らが辿り着いた真実とは…。タイトル「星を継ぐもの」の意味とは…。とっても大胆な説なんだけど、ぐっときちゃうな。特にダンチェッカーが語る、”ルナリアン”(月世界人)たちの最後の様子や、”人類”というものの希望には。

しかし、実際、これ一冊を読んでも、プロローグにおける謎や、ガニメアンと名付けられた”巨人”の謎は解けないんですねー。今後、どういう風に謎を解いてくれるのか、楽しみです。


■四部作の残り■

ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))


ジェイムズ・P. ホーガン, James P. Hogan, 池 央耿
内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)
内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。