ハンヌ・マケラ, 上山 美保子
「フーさん
」
国書刊行会という出版社に、この児童書のような表紙絵の組み合わせが、どうにも気になって借りてきた本です。
この表紙でちょっと困ったような顔をしている、小さな黒づくめの男が、まさにフーさん!
フーさんとは何者なのか? なんだか読んでいても、良く分らない部分もあるんだけど…。でも、読み終わる頃には、このシャイで自分の役目に忠実で、でもちょっと世慣れないフーさんを、きっと好きになっているはず。
フーさん(時に、「フーさんたち」とも表現される)は、子供を驚かせるのが仕事のオバケなのかな。
ドアがガタガタ……
扉がばたん……
刃物がきらり……
部屋にいるのはだれなのさ
それは、ぜったいフーなのさ
(p6より引用)
だけど、実際、子供たちはフーさんを怖がることなく、言葉を交わし、一緒に遊ぶことだって出来てしまう。
おれさまは、野蛮でおそろしいフーさんだ
おれより強くて、気がみじかいやつはこの世のなかには、いやしない!
おれさまは獣のようにガキを食べてやる
ガキは、鍋にほうりこんで煮こんでしまうぞ
(p13より引用)
こーんなことを言って、女の子を脅してみても、ライオンのように叫んでみても、トラのように唸ってみても、実際のところ、フーさんは結構愛らしい。
語られるのは、時に涙ぐんじゃったり、孤独に淋しくなったりしながら暮らす、フーさんの日々の生活。フーさんは魔法を使えるみたいだけど、フーさんの亡くなってしまった「おじいさん」もなかなかに謎の人物。地下室に金貨をどっさり持っていたり、おじいさんの遺した古い粉で猫が巨大化しちゃったり、花の種からはフーさんの家を飲み込んでしまいそうな植物が生えてきたり…。
フーさんがこれしか飲まない、という紅茶、グレー伯爵ティーも気になります。フィンランドには、実際にあるのかなぁ。「フーさんの生まれ故郷を紹介する」によれば、この本はフィンランドで1973年に初めて出版されたものなのだとか。フィンランドでは、アニメ化や舞台化もされた人気者なんだって。フーさんは森の中に住んでいるんだけど、これも森の国、フィンランドならではなのかな。こういう不思議でその国の国民に愛される存在って、お国柄も表わしているようで、面白いよね。
1 フーさん仕事へいく
2 フーさんと病気の木
3 フーさん釣りをする
4 フーさん小包をうけとる
5 フーさんリンマを怖がらせる
6 フーさんおまじないをとなえる
7 フーさん鏡に姿がうつらなくなる
8 満月にほえるフーさん
9 フーさんサウナにはいる
10 建築現場のおじさんたちとフーさん
11 フーさん町へでかける
12 フーさんと巨大なネコ
13 フーさんお呼ばれする
14 フーさん人生を考える
15 フーさんお花を育てる
フーさん生まれ故郷を紹介する~あとがきにかえて~
*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。