森 絵都
「カラフル
」
理論社
死んだはずのぼく。どこかに流されていく、そんなぼくの魂。
ぱんぱかぱーん。
そんな勢いで、ぼくの魂が抽選に当たったことを告げたのは優男の天使。
そうして、ぼくはこの世界に舞い戻ってくることになった。ガイド役の天使、プラプラと共に。
ぼくの魂は生前大きな罪を犯したために、輪廻のサイクルから外されてしまったのだという。そんなぼくに与えられた再挑戦のチャンス、これが先ほどの抽選の結果と言うわけ。この当選は辞退する事が出来ず、また、途中リタイアする事も許されない。ぼくは自殺未遂をした中学三年生の男の子、小林真の体に入って、自分の前世のあやまちを探ることになる。ところが、この「小林真」がまったく冴えないヤツで…。
登校初日には普通に挨拶しただけで、クラスメイトには「明るくなった」と驚かれてしまうし、妙に思いつめた同級生、佐野唱子には真が変わったと怪しまれる。真は学校にもろくに友人がいなかったようだし、一見普通の家族である家庭にも問題を抱えていて…。真の目には、きっと真っ黒に塗りつぶされた世界が見えていたのだけれど…。それは本当にそうだったのか?
黒もあれば白もある。
赤も青も黄色もある。
明るい色も暗い色も。
きれいな色もみにくい色も。
角度しだいではどんな色だって見えてくる。
真実は一つではないし、私たちは時に一つの物事の偏った一つの面しか見ることが出来ないでいる。他の面を知るのに必要なのは、赦しであったり、思いやりの心であったり。
小林真の周囲の想いを知ったぼくは、彼の身体に間借りしていることが心苦しくなり、彼にこの体を返してやろうと考えるようになる。果たしてぼくは、プラプラが決めた期限までに、自分の前世を思い出す事が出来るのか?
ちょっと口の悪い天使プラプラ(だけど、傘は支給品の白いふりふりの日傘みたいなのを使っている。しかし、天使も傘を使うのか?笑)がいいです。世界のカラフルさ、存分に楽しめるといいね。
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*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。