「東京バンドワゴン」/ほのぼの下町、大家族ストーリイ | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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小路 幸也
東京バンドワゴン

東京の下町、お寺のやたらと多い辺りのどこかにある、三代続く古本屋、築七十年になる<東亰バンドワゴン>。右から左へと書かれた<東亰バンドワゴン>の看板の下では、時に右から左へと読むことを知らない若者が、「ンゴワドンバなにひがし?」と呟いているのだとか。

この<東亰バンドワゴン>で暮らすのは、実に四世代にわたる人々。おじいちゃん、おとうさん、孫、曾孫・・・。古本屋を切り盛りするのは、まだまだ現役の堀田勘一、七十九歳。それを手伝うのは、元大学講師の孫の紺。古本屋に併設したカフェは、孫の藍子と紺の嫁、亜美が切り盛りする。四世代の人々が暮らすここ、堀田家では毎日が大騒ぎ。近所の人々、古本屋の常連をも巻き込んで・・・。

これは、そんな<東亰バンドワゴン>を通り過ぎる、春夏秋冬の物語。

そして、この物語の語り手は、堀田サチ(故人)。このおばあちゃんの語り口が何ともほのぼの。優しい人々が集うこの物語にぴったりなのだ。

目次
春 百科事典はなぜ消える
夏 お嫁さんはなぜ泣くの
秋 犬とネズミとブローチと
冬 愛こそすべて

何かがすっごく優れているとか、そういう物語ではないのだけれど、ほのぼのと安心できる物語。こういう話も好きだなぁ。ドラマ化などに、適している感じ。

春には、近所の女の子の家族の問題を一つ解決し、夏には堀田家の嫁、亜美の実家との仲を修復し、秋には本に纏わる謎を解決し、冬には晴れて、孫の青とすずみが結婚する・・・。

賑やかに、穏やかに大家族の時は流れるのだけれど、実は、この堀田家、所謂普通の大家族ではない。父の我南人(がなと)は「LOVEだねえ」が口癖の根無し草のような伝説のロッカーだし、孫の青は父の我南人が愛人との間に作った子供だし、孫の藍子は頑として父親の名前を言わないシングルマザー。それでも、みんな家族なんだよね。

どうやら、続編もあるようだけれど、藍子に思いを寄せるイギリス人のマードックさんも幸せになれるといいなぁ。すっごい読みたいけど、わが図書館に入るのは一体いつの日なのかなぁ・・・。

小路 幸也
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン