物語の中心となるのは陣内という、一人の男。
逆さに吊るせば、「失礼」と「無遠慮」が落ちてくるような男であり、言っている事、やる事も滅茶苦茶ながら、彼なりのポリシーを持って生きている。
これはそんな陣内の、学生時代と家裁調査官になってからの、五つのお話を綴ったもの。
脇を固めるのは、学生時代からの付き合いで言えば、陣内に振り回されがちな鴨居、ふとした事から知り合った、盲目の青年、永瀬、その彼女の優子。
陣内が家裁調査官となってからは、ちょっと頼りない後輩の武藤。
ふざけているようでありながら、真面目。真面目なことを言っていても、重さはなくあくまで軽妙。いかにも伊坂作品!な物語でありました。
目次
バンク
チルドレン
レトリーバー
チルドレンⅡ
イン
バンク
:学生時代に、鴨居と陣内が銀行強盗の人質にされたお話。
そこで二人は、盲目の青年、永瀬と出会う。
チルドレン
:家裁調査官となった陣内と、その後輩、武藤のお話。
武藤が面接した、奇妙な父子のお話。
レトリーバー
:盲目の青年、永瀬の彼女、優子が語る、彼らの黄金時代、学生時代の話。
黄金時代とは決して現在のことではなく、後になって分かるもの。
陣内が巻き起こした「事件」の話。
チルドレンⅡ
:少年事件担当から家事事件担当へ異動した、陣内の後輩、武藤のお話。
大人が格好良ければ、子供はぐれない。陣内に巻き込まれた武藤は、
陣内と共に人為的に「奇跡」を起こす。
イン
:永瀬が語る、彼らが学生時代の話。
永瀬と優子は、陣内がバイトをしているという、デパートの屋上に行って
みるが、そこに居たのは期待したようなバンドの演奏をする陣内ではなかった。
良かったのは、「チルドレンⅡ」。
俺たちの仕事は奇跡を起こすこと。
ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?
非行少年を更生させるのは難しい。それはまさに、奇跡を起こすことに等しい。
でも、それにチャレンジするのは格好いいし、大小の違いはあれど、人生って実は奇跡の連続なのかもね。