- 著者: 宮本 輝
- タイトル: 青が散る
こちらは私の中では、「69」よりも真面目な青春の書として位置づけ。
青春のどうしようもない暗さが、よく描かれていると思う。
新設大学に入学した椎名燎平と、彼の周辺の男友達、女友達をめぐる
物語。
筆者はこの物語で伝えたかったことを、あとがきでこう語っている。
青春の光芒のあざやかさ、しかも、あるどうしようもない切なさと一脈の虚無とを常にたずさえている若さというものの光の糸を、そっと曳かせてみたかったと言えるでしょう
私の感想もまさにこれに尽きるのだけれど、以下に特に好きな箇所を上げておきます。
・辰巳教授のエピソード
若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。
自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。
・燎平への金子の言葉
これぞまさに青春。
「燎平。お前、ほんまに夏子を好きか?」
黙っている燎平の頭を指先でつつきながら、
「あのての女はなア、大きな心で、押しの一手や」
・ ガリバーが歌う「人間の駱駝」という詞
ここに上げたのはその一部だけれど、何か心にしみ入る。
摩天楼の陽炎にひたって
人間の駱駝が生きていく
汗も脂も使うべき時を失い
瘤は栖(すみか)を離れて心にもぐり込んだ
原色の雑踏にまみれて
駱駝はあてどなく地下に還る
*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。
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GW中は自分の「青春の書」を上げようと思っていて、一応以上で「青春の書」シリーズ(?)は終わりです。うーん、と言っても四冊しか上げてませんね。卒業して働き始めてからは、実際に読書の空白期間があったりして、なかなかこの本と共に生きた!ってのがないような気がします。それともこの後、これから気付くのでしょうか。
実家から懐かしい児童書を引き揚げてきましたので、その内、幼年期の友であった本たちについても書きたいと思っています。