深い深い記憶を辿っていく。
Bさんは可愛らしい女性だった。
カフェで話をして、僕に興味を持ってくれた印象だった。
話をしていると、鼻から下を整形したらどうかと言われた。
どうやら彼女は僕の鼻から上は気に入ったが、鼻から下は気に入らないらしい。
僕の顔はアシンメトリーだ。
目は片方が二重で片方が一重。
口を一文字にして証明写真を撮っても、唇の片側が上がって見える。
顔の左右のどちらかを隠して鏡を見ると全くの別人が映る。
顔の左右の骨格から左右非対称なのである。
左側の顔は、目が二重でアゴは途中で角張り、輪郭はふっくらとしていて、どちらかと言うと優しい印象がある。
右側の顔は、目が一重でアゴは途中で角張ることなくアゴ下までスッとした輪郭で、冷徹な犯罪者みたいな印象だ。
また、鏡でいつも見ている自分の顔と証明写真に映る自分の顔も異なって見える。
証明写真は左右が反転するからだ。
他人が見る僕の顔は、証明写真の方。
だから鏡を見て、いつもイメージしている僕の顔と他人が見る顔は違っていて、相手にどんな表情に見えているのかわからなかった。
しかもアゴがしゃくれている。
僕の性格も気に入ってくれたBさんは、正直に言ったのだ。
整形したら付き合う、と。
僕は僕の顔がコンプレックスになった。
そこまで正直に言われたのは初めてだからだ。
Bさんとはその後、連絡を取らなくなった。
しばらくの間、僕の心はチクチクしていた。