「市場ーいちばーは別世界である。
生鮮食品は特異な商品である、とはよく言われることであるがさて市場のどこが特別であるのか、何故にそうであるのか、何故にそうあらねばならぬのか、ということになると案外はっきりしていない。
はっきりしていない頭で法律を作り法律を解釈し行政を為し問題を論ずるからとかく物事が過ぎたり及ばなかったり、片寄ったり間違ったりするものと思う。」

これは中央卸売市場開設時から5年間市場長を務められた荒木孟氏の著書「市場の問題」の序で書かれている言葉である。
荒木氏は小池都知事が尊敬していると言われている後藤新平氏と同じ時代の方である。

何の規制も法律もなかった魚河岸を中央卸売市場という型に嵌まったものにするには並々ならぬ観察力と説得力と勉強と労力を必要としたに違いない。
そして、市場長を辞めたあともこうして足りない部分がある、間違えた部分があると後悔し反省しているのだ。

築地市場の移転問題はもうすでに50年議論され、その間にも物流の変化、景気の動向、そして何より「食」自体が変わってきている。

それほどまでにこの超難解な問題をたった2週間の「オリンピック」のためだけにたった数人で急いで解決をはかろうというのはあまりに無謀で危険だ。
もしそうであるなら私は全力で反対する。
だからこそこの荒木氏の言葉を小池都知事に是非伝えたいのだ。

スピード感は確かに大事だ。築地市場も老朽化が著しいのは周知の通り。だが焦りは禁物だと思う。
今は小池都知事が物凄く功を急いでいるようにしか見えない。

人が集まる所に「市」が立つ。そしてもっと人が集まって「いちば」となり市場(しじょう)となる。

つまり、中央卸売市場という所は大都市でも最も人が集まる場所であるべきだ。

過去のツイートで私はこう書いた。
「豊洲市場であろうと築地市場であろうと、お客様にとって買いやすい優しい市場、そして何より沢山の人が集まって賑わいのある市場を造ること、この考えが原点だったはすだ」と。
この考え方は移転推進派も反対派も慎重派も皆共通していると思う。
今一度この原点にかえって現状を考えるべきだ。

「築地再整備になるのか移転するのか、それは私の死んだ後の話。私は黄泉で見ています。」

私の大先輩はこう言っていた。

もしまだご存命であれば都庁に単身怒鳴り込んだに違いない。
本当に魚河岸が大好きな方だった。

小池都知事に言いたい。
この問題を何とか解決しようとそうした大先輩方が何十年も闘ってきた築地市場問題。

正解を導き出した人は…まだいない。