●開始決定前の中止命令,保全処分 #4
・強制執行手続の中止(§24Ⅰ①)については、まず「債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権または財団債権となるべきものに基づく」ことが必要。次に、「不当な損害」を及ぼすおそれがないこと、が必要。
※「不当な損害」とは、強制執行による満足を受けないと債権者も倒産するおそれある場合や、個別執行の中止を受忍させることが社会的に不相当と評価される場合など。
・包括禁止命令(§25Ⅰ)には、「中止命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情」を疎明する必要。
※「特別な事情」とは、(執行対象財産や執行債権者が多数存在するなど、)どの財産に対してどの債権者から執行が行われるかを事前に把握し難く、かつ個別執行によって生じうる混乱が大きい場合。
・開始決定前の保全処分(§28)は、申立後の弁済を禁止するもので、債務者が債権者からの弁済を拒絶する手段としても用いられる。
※倒産解除特約については、常に債権者が解除権を有することになる点で、双方未履行の双務契約の場合に、管財人に解除権を与えた趣旨を没却する。よって、債権者の利害を調整し、衡平な分配を図ろうとする破産手続の趣旨目的を害するといえ、無効。
※弁済禁止の保全処分は、弁済の不作為命令にすぎず、実体法上弁済猶予や期限の変更をするものではない。しかし、債務者は弁済を禁止されているので、債務不履行解除の要件たる帰責性を欠く。ゆえに、債権者は民§415による解除はできない。
●開始決定の訴訟手続への影響 #5
・「破産財団に関する訴訟」(§44Ⅰ)とは、破産財団所属財産に関する訴訟と、破産債権・財団債権となるべき債権に関する訴訟とがある。
・訴訟中断の根拠は、財団所属債権の場合は、管財人に管理処分権が専属するため(§78Ⅰ)、当事者適格を失うから。破産債権の場合は、個別的権利行使が禁止されるから(§100Ⅰ)。
・例外として、破産財団に関する管理処分権と無関係な場合は中断しない。例えば、離婚訴訟、自由財産に関する訴訟、会社設立無効・総会決議無効取消訴訟など。
・査定決定に対する異議の訴え(§126)が提起された場合、中断中の破産債権に関する訴訟が異議者(管財人等)によって受継される(§127Ⅰ,129Ⅰ)。
・財団債権は、基本的に開始後に生じたものなので、原則として受継の問題は生じない。しかし、例外的に開始前の原因に基づく債権については中断・受継がある(§44ⅠⅡ)。
・詐害行為取消訴訟については、管財人の受継により否認訴訟に切り替わる。
●開始決定後の行為の効力 #7
・開始決定後は管理処分権が管財人に専属するので(§78Ⅰ)、破産手続との関係では効力を主張できない(§47Ⅰ)。
・動産の即時取得に関し、§47Ⅰとの関係が問題となる。
※§47Ⅰが、相手方の主観を問わずに、権利取得を対抗できないとする趣旨は、破産財団を充実させるため即時取得をも排除する特別規定とするもの。ゆえに、即時取得の要件を満たしても、開始後の破産者の行為によって相手方が財団所属財産を取得することはない。
・破産者の行為によらずに動産を取得した場合、即時取得と§48Ⅰとの関係が問題となる。
※§48Ⅰの趣旨は、一部の破産債権が第三者の行為により偶然に担保権を取得すること等により衡平が害されるのを防ごうとするもの。ゆえに対象は開始前から破産債権を有する者であって、即時取得(時効取得も)は対象外。ゆえに即時取得できる。
・賃借権の負担ある不動産は、その状態で破産財団を構成する。ゆえに特段の事情ない限り、転貸は新たな負担を課すものではなく、§48Ⅰの破産者の行為によらない権利取得にはあたらない。
なお、破産直前に賃貸・転貸によって自己が利用する等、意図的な場合は否認できる。否認権が時効の場合でも、§56の制限なく、§53によって解除すべき。なぜなら、§56は対抗問題とするのではなく、保護の必要性の判断指標として、対抗力を求めたにすぎないから。
●破産財団 #8
・自由財産からの任意弁済について、(債権者間の公平に反し、弁済強要が為されるおそれあるともいえるが、)破産者は自由財産については管理処分権を有するし、経済的更正という利益を放棄する以上、その意思を尊重すべき。ゆえに、自由財産からの任意弁済は許される。
但し、弁済強制のおそれがあるので、任意性の判断は厳格に行うべきであり、少しでも強制的要素がある場合は任意弁済とはいえない。
・自由財産の破産財団への組入れについても、自由財産の放棄と同様に許される。なぜなら、任意弁済の場合に生じる強制を恐れも少なく、かつ、債権者間の平等も図れるから。
●破産債権 #9
※所有権者に取戻権が認められる趣旨は、本来破産財団は破産者の財産のみで構成されるべきであるところ(§2ⅩⅣ)、現有財団には破産者以外の財産も混入している場合があるので、権利を主張する第三者に取戻を認め、現有財団を法定財団に一致させるもの。
●破産債権と財団債権 #10
※手続実施上、破産債権者の共同の利益のための費用が必要となる。これらは共益的費用として、破産財団から全額かつ優先的に弁済されるべき。他方、破産債権者のため、財団債権性を明確化する必要がある。ゆえに財団債権の定めがある(§148,149等)。
・財団債権は随時弁済されるが、管財人が財団債権を承認するには、原則裁判所の許可が必要(§78Ⅱ⑬)。なお、財団債権は非免責債権とされている(§253Ⅰ)。
●求償義務者の破産 #11
・開始後に一部弁済を受けた場合でも、開始決定時の現存額たる全額について破産債権の行使ができる(現存額主義:§104Ⅱ)。
物的分割とは株主の分割を伴わない財産面のみの分割。
人的分割とは、例えば、乙社が発行する株式を甲社の株主に(直接)割り当てること。
これは承継会社の株式を分割会社の株主に交付するという人的要素の分割。
会社法では物的分割しか実施できない。
そこで、
(1)全部取得条項付種類株式の取得対価として、
又は
(2)剰余金の現物配当として法律構成する。
設立会社は新会社を設立する行為であるため、承継する権利義務の対価として、分割会社に対して必ず設立会社の株式を交付する必要がある(763⑥)。
この株式に加え、分割対価として設立会社の社債等を交付することが可能。
但し、吸収分割と違い社債等以外の財産を交付することは不可(763⑧)。
<事案>
A村農地委員会は、X所有農地を不耕作地であるとして買収計画を決定。
Xは異議申立するも却下。
Xが、Y(県農地委員会)に訴願したところ、Yは本件農地をXの自作農地と認め、買収計画から除外せよとの裁決。
ところが、A村農地委員会がYに再審議の陳情をし、これを受けた現地調査の結果、Yは先の裁決を取消す裁決(再裁決)。
そこで、Xが再裁決の取消請求。
<判旨>
裁決は、行政処分であるが、実質的に見れば本質は、法律上の争訟の裁判。
実質的に裁判だが、行政機関が行っているので行政処分に属するというものである。
このような性質ある裁決は、他の一般行政処分と異なり、
特別な規定ない限り、裁決庁自ら取 消すことはできない。
<事案>
被告会社は、児童福祉施設から200mの区域内において性風俗営業を行ったため、風営法違反で起訴。
被告会社は、以下の通り主張した。
本件施設は、被告会社に対する公衆浴場経営許可の51日前に知事の許可を得たものだが、
(1) その認可処分は、同遊園が厚生大臣の定める最低基準に達しておらず無効、
(2) 仮にそうでないとしても、認可は、浴場建設開始から2週間以上経過し、被告会社からの許可申請がされていた段階で、営業妨害目的でなされたものであり、行政権の濫用として、規制は違法。
<判旨>
風営法は、児童福祉施設と個室付浴場業との区域内の併存を、例外なく全面禁止しているものではない。
よって、被告会社の営業に先立つ本件認可処分が、行政権の濫用として違法な場合は、児童遊園の存在を営業規制の根拠とすることは許されない。
本件児童遊園を認可施設に整備する必要性、緊急性があったとはいえない。
児童遊園は、児童に健全な遊びを与えて、健康を増進し、情操豊かにする目的の施設であるから、認可申請・認可処分もその趣旨でなされるべき。
被告会社の営業規制目的で行われた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、
被告会社の営業に対し、規制する効力を有しない。
<事案>
Xは、Y所有農地を賃借したとして、村農地委員会に賃借権回復の裁定申請。同委員会は賃借権設定裁定。
Yは、①県農地委員会に訴願提起も、棄却。
しかし、県農地委員会は上記裁決について②再議し、Y主張を認めて訴願棄却裁決取消、改めて訴願認容裁決により、村農地委員会の裁定を取消。
そこで、Xが耕作権確認・引渡請求。
<判旨>
訴願裁決庁が一旦なした訴願裁決を自ら取り消すことは、原則として許されない。よって、県農地委員会の再議による裁決取消・訴願認容裁決は違法。
しかし、行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものとみとむべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有する。
訴願裁決取消の裁決(②)は、未だ取り消されておらず、また、当然無効ともいえない。
<事案>
Xは、障害福祉年金・老齢年金の受給権あるが、併給調整により低額な方の支給停止措置がとられたため、併給停止措置を無効として、未支給老齢年金の支払請求。ところが、Xが1審係属中に死亡。
X’が、相続ないし法§19Ⅰに基づき老齢年金請求権を取得したとして、Xの地位を当然承継したと主張。(なお、2審では、参加承継申立をした。)
<判旨>
法19条1項・5項は、相続とは別の立場から一定の遺族に支給を認めたもの。同規定を離れて右年金給付に係る請求権が別途相続対象となるものではない。
また、同条所定の遺族は、その権利行使するには、社会保険庁長官に対する請求をし、支給決定を受けることを要する。
理由は以下。
法16条は、給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づき同長官が裁定するとしている。これは、画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、要件・金額等につき、同長官が公権的に確認するのが相当との見地から、裁定を受けて初めて年金支給が可能になるとしたもの。
法19条1項により遺族が取得するのは支分権たる請求権だが、法16条の趣旨に照らし、右請求は裁定の請求に準じて同長官に対してすべき。
よって、遺族は長官による支給決定あるまでは、未支給年金に係る請求権を確定的に取得したといえず、
同長官に対する支給請求・処分を経ないで、支払請求訴訟を提起することはできない。
X’が、亡Xの本件訴訟上の地位を承継することは認められない。
<事案>
本件発明は原出願から分割出願されたものであり、その原出願については、容易に発明できるものとして拒絶査定が確定。
Xは、本件発明と原発明とは実質的に同一であるとし、本件発明についての特許権を有するYに対し、特許権侵害による損害賠償請求権不存在の確認請求。
<判旨>
特許法によると、無効審決の確定により特許権が初めから存在しなかったものとみなす(法§125)としており、特許権は無効審決の確定までは適法かつ有効に存続。
しかし、本件特許のように、特許に無効理由が存在することが明らかで、無効審判請求されれば確実に無効とされることが予見できる場合にも、特許権に基づく差止め・損害賠償等の請求を許すべきでない。
理由は以下。
(1) 上記請求を容認すると、実質的に特許権者に不当な利益を与え、発明を実施する者に不当な不利益を与えるもので、衡平に反する。
(2) 紛争は短期に1回的に解決することが望ましいところ、まず、無効審判を経由しなければ、特許権行使に対する防御と出来ないとすることは、特許の対世効まで求める意思のない当事者に右手続を強いることになり、訴訟経済にも反する。
(3) 法168条2項は、無効が確実に予見される場合まで、訴訟手続を中止すべき旨規定したとは解せない。
以上より、無効審決確定前でも、裁判所は無効理由の存在が明らかか否か判断でき、
その存在が明白なときは、特許権に基づく差止め・損害賠償請求等は、特段の事情がない限り、権利濫用に当たり許されない。
<事案>
当時、皇居外苑は、公共福祉用財産(国有財産法§3Ⅱ②)として厚生大臣の管理下(設置法§8⑰)にあり、集会等を行う場合厚生大臣の許可が必要だった。
Xは、S26.11.10に、S27.5.1のメーデー使用目的で、Y(厚生大臣)に対し使用許可申請。
Yは、S27.3.13に不許可処分。
そこで、Xが取消請求。
第1審はXの請求を認めたが、
第2審は、S27.5.1は経過し、Xに取消を求める利益はないとして、棄却。
最高裁も、原審同様に判断し、上告棄却。しかし、以下の通り傍論を説示。
<判旨>
(1)
公共福祉用財産は、国民が均しく利用できる点に特色あるが、その利用は目的に副い、かつ、態様・程度に応じ、その範囲内で認められる。皇居外苑も同様。
国有財産の管理権は、各省庁の長にあり、公共福祉用財産をいかなる態様・程度で利用させるかは、右管理権の内容。しかし、利用が公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の自由裁量に属するものでない。適正な管理権の行使を誤れば違法となる。
(2)
本件不許可処分は、もし許可すれば、膨大な人数が長時間使用することで、公園自体の著しい損壊が予想され、公園の管理保存に著しい支障ある。加えて、長時間一般国民の公園利用が阻害されることが理由。
よって、表現の自由・団体行動権自体を制限する目的ではなく、管理権の適正運用を誤ったものとは言えない。憲法21条・28条違反でもない。