久々にもかかわらず、

二冊の感想を乗っけてしまうもったいなさ。

まぁ、久々なんで、つれづれと。


初の宮本輝は錦繍にしました。

優駿と悩みましたが、ちょっと肩慣らしに短めのやつと。

これを読んで思ったのが、
私は往復書簡形式のものが好みだと言う事です。

そこに息づく生々しいやり取りを
盗み見ているような感覚と

手紙を読める程身近な人間の
自分の知らないやりとり。

それは恋人とか兄弟、友達ではなくて、
祖母程度の距離感を持った、
倫理観と背徳感の境界線に立っているような感覚に近い。

出だしから聞き慣れない地名が出てくると、
ふっと自分が見も知らない場所を構築して、
その場所にたたずんでいるような感覚に襲われます。

そこから先二人の手紙のやり取りは、
徐々に雪が解けて、春が近づいてくるような心持にさせてくれます。

この二人の距離感が、
この後に読んだ、
国境の南 太陽の西に似ているなと感じました。

ざっくり言うとこちらは面白かったけれど、
もう一度読む事はないだろうなと。

海辺のカフカに通じる部分をかすかに感じながらも、
ノルウェーの森で感じた斜に構えたような雰囲気になじめませんでした。

どちらも離れてしまった愛した人との邂逅を描いた作品ですが、
『母親』である事に誇りを持つ事と『父親』『夫』である事を
選ぶ事に落ち着いた事が決定的な読後感の違いではないかと思います。

どちらが良いとか悪いとか
そういう結論ではなくて、
毎日の満員電車でゆられている
大勢の人々のそれぞれの人生の深み。

その一部を切り取った秀逸な小説と言えるのでは
無いでしょうか。

あ、今気付きましたが、
多分、題名で期待したものの質が違っていたんですね。

てっきり、
旅をするものだとどこかで思ってました。笑。

さて、つぎは鉄の骨。

これも面白かった!!

業種が同じなのですが、
こういう世界があるんだなと。

交わらなければ一生交わらないであろう世界を
垣間見させていただいた気がします。

その感想はまた後ほど。

それでは。


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