『OL』というジャンルに焦点をあてた短編集。

ここで繰り広げられる人間模様は学生でもなければ主婦でもない、
やはり『OL』だからこそのドラマが生まれているのだと思う。

ふと、この『OL』というジャンルに属する人々の事を思う。

ある程度自由があって、
その自由に翻弄されて、
社会的な何かを求めて、
そこでゆがんだり、まっすぐのびたりしていく様は
蜘蛛の糸を這い上がっていく亡者のようにも思える。
亡者というと悪い印象になってしまうが、
それこそが人の性であると思う。
望んだものに対して貪欲に進んでいくそれはとてもとても人間的だろう。

では『OL』以外、サラリーマンだったり、おじいさんだったり、学生だったり、
主婦だったりした場合そういう事はないのだろうか。

いや、そんな事はない。

なら、どうして、『OL』というジャンルが成立するのだろうか。

社会と深く付き合うようになるから?

それとも『OL』というあるイメージが先行し、
そこに納まりたいけれどうまくいかないからだろうか。

でも、基本的に理想的な『OL』はどこにもいないし、
その像も時代と共に変わってきているだろう。


結局『OL』とは読み手の中にいるのだろう。

私はOLではないし、これからもOLになる予定もつもりもない。
だからというわけではないだろうが、
『いそうだな~』という間の抜けた感想しか出てこない。


ある作品だけ連作となっているが、
ずば抜けてこの作品が好きだ。

題名も話も読後感も。

どれとは言わないけれど、
思わず、『Yeah!』と握りこぶしを作りたくなる。

作ったこぶしはすぐにほどいて、
そのなんとなく握ったこぶしを思うと少しだけ恥ずかしくなる。

けれど、
『Yeah!』なのだ。

こんな瞬間を切り取るなんていったいどんな気持ちなんだろう。

やはり、『Yeah!!』なんじゃないかと思っている。




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