とある未来。
人間の脳波やら呼吸やら血液等々を解析して、本人以上に本人の事がわかるようになった。
今でも心電図やら心理学やらあるけれど、もっと日常に応用が利いた。
例えば、食事。
何が食べたいかな~なんて悩んで、結局いつもの定食やらお弁当になってしまうのを打開出来る。
すでにこの頃になると、センサーは気体化しているから、パソコンに随時集計されている。
あとは、「食事」ボタンを押すだけだ。
出てきた結果は多種多様。
お米が食べたいかな?と思っていたけれど、弾き出されたのは、ハンバーガーだったりする。
皆な最初は訝しげ、でも、たまに従って見たりして何となく美味しく感じたり、体の調子が良くなったり。
そんな機械を毎日使っていた彼は、その結果に異を唱える事を忘れてしまった。
簡単で
健康になって
疲れにくいし
仕事もはかどる。
だから、その日の結果にレモン30個と出たら、スーパーに行って買ってくる。
その他には何も書かれていないから、砂糖もつけず齧ったり、ジュースにして飲んだりした。
ある日、「あのハンバーグ」と出た。
彼は「あの?」と首を傾げる。
けれど、腹は減っている。
思い当たらないので、
とにかくその日はファミレスでハンバーグを食べる事にした。
暫くすると、また「あのハンバーグ」と出た。
今度はもう少し考えた。
母親の?恋人の?どこかのレストランの?
やはり思い当たらない。
丁度休みの時だったのでネットで調べて、作って見る事にした。美味しくは出来たけれど、しっくりこなかった。
部屋の更新が近付いて、引越しをしようと思い、部屋を片付け始めた。
黄ばんだアルバム、聴かなくなったCD、読まなかった本が作業を滞らせた。
実家から一冊だけ持ってきた週刊漫画。子供の頃から何度何度もも読んだ。
パラパラと捲るとある一コマで目が止まる。
キラキラと光る肉汁と付け合わせの温野菜、かけられたソースは老舗、その老舗が潰れそうになったのを主人公が助けるのだが、長年継ぎ足し継ぎ足し深まったデミグラスソースにとある工夫をするのだが、この週ではそれは明かされない。
二色刷りの紙面とは思えないほど芳醇な匂いと鮮やかな色彩が目に浮かぶ。
これか~。と脱力し、次にどうしようかと考える。
試しに古本屋で単行本を買って、その通りに作ってみるが、まだしっくりこない。
デミグラスソースが原因なら、不可能だと結論に至り、彼は諦めた。
もう、機械が「あのハンバーグ」と表示しても気にしない事にした。
営業先からの帰り道、公園で休んでいると、男の子と女の子が砂場でママゴトをしていた。
砂て盛られたハンバーグ。
それを美味しそうに食べる真似をする男の子。
美味しそうだな、と口からもれて、ハッとした。
はやる気持ちも、律儀に抑え、次の「あのハンバーグ」を待った。
表示されると、急いで作り始めた。
会社の給湯室でレトルトのハンバーグを温めて、コンビニで買った温泉玉子を盛り付けて、出来合いのソースを色んなスパイスで風味を付けた。
味の事はあまり考えず、ただ、美味しそうだな、と思うままに。
出来上がったハンバーグをペロリと平らげて、ふぅ、と一息ついた。
それから「あのハンバーグ」と表示される度に彼は思いつくままにアレンジして美味しそうなハンバーグを作った。
恋人にそのハンバーグを出した時の出来は自信満々だった。
でも、彼女の手は止まっている。
美味しくない?と尋ねると、
彼女は
「凄く美味しそうに食べるから」と
微笑んだ。
それから、「あのハンバーグ」は表示されなくなった。
iPhoneからの投稿
人間の脳波やら呼吸やら血液等々を解析して、本人以上に本人の事がわかるようになった。
今でも心電図やら心理学やらあるけれど、もっと日常に応用が利いた。
例えば、食事。
何が食べたいかな~なんて悩んで、結局いつもの定食やらお弁当になってしまうのを打開出来る。
すでにこの頃になると、センサーは気体化しているから、パソコンに随時集計されている。
あとは、「食事」ボタンを押すだけだ。
出てきた結果は多種多様。
お米が食べたいかな?と思っていたけれど、弾き出されたのは、ハンバーガーだったりする。
皆な最初は訝しげ、でも、たまに従って見たりして何となく美味しく感じたり、体の調子が良くなったり。
そんな機械を毎日使っていた彼は、その結果に異を唱える事を忘れてしまった。
簡単で
健康になって
疲れにくいし
仕事もはかどる。
だから、その日の結果にレモン30個と出たら、スーパーに行って買ってくる。
その他には何も書かれていないから、砂糖もつけず齧ったり、ジュースにして飲んだりした。
ある日、「あのハンバーグ」と出た。
彼は「あの?」と首を傾げる。
けれど、腹は減っている。
思い当たらないので、
とにかくその日はファミレスでハンバーグを食べる事にした。
暫くすると、また「あのハンバーグ」と出た。
今度はもう少し考えた。
母親の?恋人の?どこかのレストランの?
やはり思い当たらない。
丁度休みの時だったのでネットで調べて、作って見る事にした。美味しくは出来たけれど、しっくりこなかった。
部屋の更新が近付いて、引越しをしようと思い、部屋を片付け始めた。
黄ばんだアルバム、聴かなくなったCD、読まなかった本が作業を滞らせた。
実家から一冊だけ持ってきた週刊漫画。子供の頃から何度何度もも読んだ。
パラパラと捲るとある一コマで目が止まる。
キラキラと光る肉汁と付け合わせの温野菜、かけられたソースは老舗、その老舗が潰れそうになったのを主人公が助けるのだが、長年継ぎ足し継ぎ足し深まったデミグラスソースにとある工夫をするのだが、この週ではそれは明かされない。
二色刷りの紙面とは思えないほど芳醇な匂いと鮮やかな色彩が目に浮かぶ。
これか~。と脱力し、次にどうしようかと考える。
試しに古本屋で単行本を買って、その通りに作ってみるが、まだしっくりこない。
デミグラスソースが原因なら、不可能だと結論に至り、彼は諦めた。
もう、機械が「あのハンバーグ」と表示しても気にしない事にした。
営業先からの帰り道、公園で休んでいると、男の子と女の子が砂場でママゴトをしていた。
砂て盛られたハンバーグ。
それを美味しそうに食べる真似をする男の子。
美味しそうだな、と口からもれて、ハッとした。
はやる気持ちも、律儀に抑え、次の「あのハンバーグ」を待った。
表示されると、急いで作り始めた。
会社の給湯室でレトルトのハンバーグを温めて、コンビニで買った温泉玉子を盛り付けて、出来合いのソースを色んなスパイスで風味を付けた。
味の事はあまり考えず、ただ、美味しそうだな、と思うままに。
出来上がったハンバーグをペロリと平らげて、ふぅ、と一息ついた。
それから「あのハンバーグ」と表示される度に彼は思いつくままにアレンジして美味しそうなハンバーグを作った。
恋人にそのハンバーグを出した時の出来は自信満々だった。
でも、彼女の手は止まっている。
美味しくない?と尋ねると、
彼女は
「凄く美味しそうに食べるから」と
微笑んだ。
それから、「あのハンバーグ」は表示されなくなった。
iPhoneからの投稿