ずっと気になっていた小説。

数学は美しさを伴っている。

けれど、それは学校で教わる計算からはなかなか引き出せない。

√というのは数字の根っことも言うべき存在であるが、
それに気付いている人は思ったほど多くはない。

小説に流れる慈愛が数字に数式に命をあたえてくれる。

もの凄く人間的なものなのに、
数字を切り離して考えてしまうと、
数字がどんどん記号化してしまう。

本当は身近で、優しくて、正しさを持っているのに。

年齢もそうだ。
『1つしか違わない』
『10も違う』

けれど、それはどこまで『しか』なのか
どこから『も』なのか。

あいまいで不完全な人間が扱う数字には
常にこういった不明瞭な領域が存在する。

数字の本質を知るには
数字に慣れ親しむしかない。

どきどき、わくわくするような
事柄はなにも
誰かが催したイベントに参加するだけではないし、
特別な何かが起こる気持でもない。

何かを探ろうとして、
何かに触った瞬間にそういった気持ちは
起こるのではないだろうか。

凄く優しい物語。


博士の愛した数式 (新潮文庫)/小川 洋子

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