こういうの探していました。

かのバビロニアの遺跡から最近の建築までを大まかに網羅した一冊。


古代において建築とよばれ、現存しているものはほとんどが宗教施設だろう。

だからどうしても、取り上げるものがそういったものになってしまうのは仕方がない。

丈夫に作ってあるだろうし、メンテナンスも一般人の家の比ではない。

それに復元という方法だってある。

それが、現代に近づいてくるにつれて、王様の城が残され、公共施設が残され、貴族の家が残され、

民衆の家も残るようになってきた。

いや、歴史の長さからみれば、今ある民衆の家など100年後残っていないものがほとんどに違いない。

たまたま、残っている住宅の強度が現代においても通用し、

大規模な戦争や破壊活度が行われていない地域が多いと言うだけだろう。


近代から現代にかけて残されるべき建物は一体どれだろうか。

ロンシャンは間違いなくだとしても、最近、賞をとったSANNAAの美術館はどうだろうか。

多分、残さなくてもいいような気がする。

いや、それは未来が決める事だが。


以前、トルコのパムッカレに行った時、

写真やTVから受けた衝撃を本物からは感じる事が出来なかった。

それはきっと、オブジェとして存在してしまっているからだと考えている。

だから、そこにある歴史は『歴史的な遺物』というカテゴリーに収容され、

『過去にあった都市』としての面影はかなり希薄に感じた。

それは観光客が押し寄せて、遺跡の空気を崩している事もあるだろうし、

それほど自分がこの都市について知識を持ち合わせていないということもあるだろう。


廃墟とは遺跡とは余程の事がない限りは『客観性』が大事だと思っている。

自分と遺跡との間にある隔たりこそが遺跡を遺跡たらしめているからだ。

自分の家が、パルテノン神殿だとしたら、パルテノン神殿に遺跡としての価値を見出すことは

難しいのではないだろうか。


昨今、廃墟本なるものがそこそこ売れているらしいが、それこそ、

廃墟の見せる一瞬の表情を切り取り、読者との距離を一層引き離すことによって、

廃墟に漂う雰囲気を読者任せに、(それは成功している)、

想像をかきたてているのではないだろうか。

近すぎると、幾ら貴重なもんであってもその価値はわかりにくい。


TVで歴史の再現VTRを観ると少し粟立つことがある。

それは現代の感覚で描かれている事が随所に読み取れてしまうからだ。

ものまねもしかり、

似ていないのに似ている体で歌っていたり、

少しだけ似ているけれども、随所に面白くないギャグを織り交ぜたり、

『狙っている事がわかってしまう冗談』ほど面白くないものはないと思う。


建築とは歴史であり、芸術であり、重力との戦いであり、神々との戦いでもあり、人との戦い

お金との戦い、しいては、自分との戦いである。

その深みが全てこの本に網羅されているなどとは口が裂けても言えないが、

少なくとも、大まかな歴史の流れと建築の関係と豊富なカラー写真が、

未知のものとの距離を見定める為の入り口としてふさわしいのではないだろうか。











建築 (知の遊びコレクション)/ジョナサン グランシー

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