てっきり建築の本だと思って手に取ったら、歴史よりの本だった。

いや、それを踏まえての建築だから、建築の本なのかもしれない。

様々な日本建築を取り上げ、その同時代の文学作品からその時代をひも解いてゆく。

歴史と共に移り変わっていく建築、その背景には権力者がいて、その背景には時代のうねりがある。

建築というフィルターを通す事で、歴史を認識し、文学を通す事で当時を推し量る。

どんな建築にも理由があって、それにそった形や配置がしてある。

その真相に近づけば近づくほど建築は解体されて歴史を見ることになる。

かたや、文学は深みにはまればはまるほど、当時を実感することができる。

その両極端に走らず、その両者から見える背景、光景を行間とよんでいる部分もあるだろう。


それにしても、建築家はこれほどまでに歴史に精通していなければならないのかと正直

暗澹としてしまった。

恐らくは、そこが標準であるべきなのだろう。

なにせ、空間の本質を作り上げるという職業なのだから。


何もかも足りない自分に焦りを感じるとともに、

何をしても身になってしまうほどの空っぽさは今はまだ爽快といっても差支えはないだろう。

これが40超えてここにとどまっていたとしたら、皿洗いでもしている方が気楽で、

自由な生活ができる事だろう。


建築を見る目を養い、歴史を見る目を養う。それはつまり本質を見極まるための手段の一つと言うだけ。

我が家は遥か遠い。





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