どんなに楽しみなことだって、
朝寝坊はつきものだ。
出発予定は6時。
現実の出発は、10時半。
放置気味だったバイクに荷物を積み込み、
チェーンに油をさして、いざ。
当然、渋滞にはまるものだと予想していたが、
それほどひどい渋滞もなく、
すいすいと4号線を北上する。
日差しが強く、アスファルトからの輻射も、
排気ガスの熱もあわさって、
全てが自分に向かって来ているような気もする。
風は爽快とは言えず、
速度を上げても、
暑さは変わらない。
目的地に着いたのは、
3時前。
少し雨が降り始めていた。
最初の目的地は、
『アルパカ牧場』。
夏場のアルパカは毛が刈られているらしく、
あのモフモフさを体感するには、
時期が違う。
だが、どうしても見たかった。
入場券を購入して、
しばらく進むと、
前方に群れが見える。
やせ細って見えるのはやはり、毛が刈られているからだろう。

アルパカについてはそれほど詳しくはないけれど、
個体差が激しい気がした。
くるくるパンチパーマな奴もいれば、

山羊の眼を持つ奴もいた。

いや、こいつは山羊なのか?
色もとりどりで、
なつっこいような
なつっこくないような。

餌を売っていたりもしたが、
なにせ、『雨』が気になって仕方ない。
15分後には子供アルパカと
一緒に写真を撮れるという
イベントが行われると言うのに、
これからの道程での『雨』が
気になって仕方ない。

けれど、やはり、気になる。
モフモフが。

いた!
さわりたーい。
でも、とおい~。
もふもふしてる~。

だが、幾らモフモフしていたところで、
私は笑みを漏らさない。
周りを見渡せば、
家族、恋人、友達。
一人で来ている人間などどこにもいない。
そして、良い歳をした大人が、
もふもふに心動かされたとしても、
そこは頑として笑みを漏らしてはならないのである。
若干、雨を気にしてみては、
モフモフへ視線をやり、
『さわりて~』と
周りに聞こえないように細心の注意を
しながらつぶやく。
だが、志半ばにして、雨が強くなる。
ペルー産の動物だけに、
アディオスと言い残し(嘘)、
柵から頭を出しているアルパカの頭を
なで、嫌がられ、傷心し、
ダチョウゾーンでは、
オスが求愛のダンスを披露し、メスを落とそうと
頑張っている姿に声援を送り、
そして、見事に愛が受け入れられ、
行為に及んでみたが、
場所が悪くて、失敗。
なんとなく切ない思いを引きずったまま、
しっかりとスタンプラリーだけはこなし、
出口へ。
最後のスタンプを押し終え、
ショップで景品と交換。
その景品は、アルパカのポスターカレンダー。
その形状を見たときに、
どれほど、がっかりしたか。
紙で、丸まっているという事は、
つぶれやすくて、折り目がつくと言う事に
他ならない。
心を鬼にして、バッグの中へ押し込んだ。
雨が徐々に強くなってくる。
時間は、4時半。
時間的にそろそろ今日の宿も捜さなければいけない。
そそくさと牧場を後にし、
那須の栄えている方へ。
30分もかからないはずが、
立ちこめる霧に打ちのめされて、
コンビニに着くころには、
荷物も自分もびしょびしょに
なってしまう。
最悪、テントを張れないかもしれないので、
ここで、飯を食う事にする。
色気も何もあったもんじゃない。
生姜焼き弁当を温めてもらい、
小雨降りしきる中、コンビニの隅でがっつく。
食べ終わる頃には見事に雨が上がり、
キャンぴ場を探す余裕もでき、
一軒目で良いところに当たったので、
そこへ向かう。
そこのキャンプ場が異常だった。
『那須高原村オートキャンプ場』
何と一人一泊1000円という安さ。
トイレ、岩風呂、そして、夕食と晩酌と朝飯付き。
那須の相場はおそらく4~5000円ではないだろうか。
場所もわかりにくく、そして、整備はされていない。
老夫婦が二人でやっているようなところなので、
テニスコートもなければ、パターゴルフもない。
でも、手つかずの自然がすぐそこにあって、
テントが張れて、トイレの処理に頭を悩ませずに済み、
汚れた体を洗うのにはぜいたくすぎる程の岩風呂。
そのほかに何がいるのか私にはわからない。
最初は当然怪しんだ。
安すぎるし、設備が良すぎる。
その割には人が少ない。
テントを張ると、すぐに
『風呂にはいりなね』と
おかあさんが言ってくれた。

そして、手作りの岩風呂に案内されると、

『上がったらこっちにきなね』
と謎の言葉を残して、去っていく。
ゆっくりと湯船につかり、
冷えた体をほぐしていく。
少し硫黄の匂いがした。
風呂を上がったものの、素直に
『こっち』へ顔を出して良いものか迷い、
一服した後に、
訪ねてみる。
すると、そこには、
8種類位の食事、そして半裸のおとうさん、そして、同じようなバイカーが一人。
そしておかあさんは、
『ビール?』と聞いてくる。
これだけもてなされたら、
聞かずにはいられない。
『幾らですか?』
と聞いた。
すると、おかあさんは嫌そうな顔をして、
『都会の人間はそれだから嫌い』
とそれからなぜ自分たちがこういう事をしているのか、
ここでは『縁』を大事にしているんだと言う事を
話聞かせてくれた。
ビールを美味しく頂き、話も尽きることなく、思いも
よらない素晴らしい時間を過ごせた。
しかし、9時近くなると、おかあさんがダウン。
私ともう一人のバイカーは自分のテントへ
戻る事にした。
テントに滑り込むや否や
私も倒れた。
余り強くない酒と若干の高地での酸素不足から、
次に起きた時には
頭痛がひどく、
深夜まで眼がギンギンズキズキしていた。
次の日の事を考える余裕もなく、
痛みを抑える薬もない。
痛みを忘れる為に耳を澄ますと、
テントに遊ぶ雨粒の音。
そのリズムで皮肉にも
いつの間にか
眠りに落ちていた。
朝寝坊はつきものだ。
出発予定は6時。
現実の出発は、10時半。
放置気味だったバイクに荷物を積み込み、
チェーンに油をさして、いざ。
当然、渋滞にはまるものだと予想していたが、
それほどひどい渋滞もなく、
すいすいと4号線を北上する。
日差しが強く、アスファルトからの輻射も、
排気ガスの熱もあわさって、
全てが自分に向かって来ているような気もする。
風は爽快とは言えず、
速度を上げても、
暑さは変わらない。
目的地に着いたのは、
3時前。
少し雨が降り始めていた。
最初の目的地は、
『アルパカ牧場』。
夏場のアルパカは毛が刈られているらしく、
あのモフモフさを体感するには、
時期が違う。
だが、どうしても見たかった。
入場券を購入して、
しばらく進むと、
前方に群れが見える。
やせ細って見えるのはやはり、毛が刈られているからだろう。

アルパカについてはそれほど詳しくはないけれど、
個体差が激しい気がした。
くるくるパンチパーマな奴もいれば、

山羊の眼を持つ奴もいた。

いや、こいつは山羊なのか?
色もとりどりで、
なつっこいような
なつっこくないような。

餌を売っていたりもしたが、
なにせ、『雨』が気になって仕方ない。
15分後には子供アルパカと
一緒に写真を撮れるという
イベントが行われると言うのに、
これからの道程での『雨』が
気になって仕方ない。

けれど、やはり、気になる。
モフモフが。

いた!
さわりたーい。
でも、とおい~。
もふもふしてる~。

だが、幾らモフモフしていたところで、
私は笑みを漏らさない。
周りを見渡せば、
家族、恋人、友達。
一人で来ている人間などどこにもいない。
そして、良い歳をした大人が、
もふもふに心動かされたとしても、
そこは頑として笑みを漏らしてはならないのである。
若干、雨を気にしてみては、
モフモフへ視線をやり、
『さわりて~』と
周りに聞こえないように細心の注意を
しながらつぶやく。
だが、志半ばにして、雨が強くなる。
ペルー産の動物だけに、
アディオスと言い残し(嘘)、
柵から頭を出しているアルパカの頭を
なで、嫌がられ、傷心し、
ダチョウゾーンでは、
オスが求愛のダンスを披露し、メスを落とそうと
頑張っている姿に声援を送り、
そして、見事に愛が受け入れられ、
行為に及んでみたが、
場所が悪くて、失敗。
なんとなく切ない思いを引きずったまま、
しっかりとスタンプラリーだけはこなし、
出口へ。
最後のスタンプを押し終え、
ショップで景品と交換。
その景品は、アルパカのポスターカレンダー。
その形状を見たときに、
どれほど、がっかりしたか。
紙で、丸まっているという事は、
つぶれやすくて、折り目がつくと言う事に
他ならない。
心を鬼にして、バッグの中へ押し込んだ。
雨が徐々に強くなってくる。
時間は、4時半。
時間的にそろそろ今日の宿も捜さなければいけない。
そそくさと牧場を後にし、
那須の栄えている方へ。
30分もかからないはずが、
立ちこめる霧に打ちのめされて、
コンビニに着くころには、
荷物も自分もびしょびしょに
なってしまう。
最悪、テントを張れないかもしれないので、
ここで、飯を食う事にする。
色気も何もあったもんじゃない。
生姜焼き弁当を温めてもらい、
小雨降りしきる中、コンビニの隅でがっつく。
食べ終わる頃には見事に雨が上がり、
キャンぴ場を探す余裕もでき、
一軒目で良いところに当たったので、
そこへ向かう。
そこのキャンプ場が異常だった。
『那須高原村オートキャンプ場』
何と一人一泊1000円という安さ。
トイレ、岩風呂、そして、夕食と晩酌と朝飯付き。
那須の相場はおそらく4~5000円ではないだろうか。
場所もわかりにくく、そして、整備はされていない。
老夫婦が二人でやっているようなところなので、
テニスコートもなければ、パターゴルフもない。
でも、手つかずの自然がすぐそこにあって、
テントが張れて、トイレの処理に頭を悩ませずに済み、
汚れた体を洗うのにはぜいたくすぎる程の岩風呂。
そのほかに何がいるのか私にはわからない。
最初は当然怪しんだ。
安すぎるし、設備が良すぎる。
その割には人が少ない。
テントを張ると、すぐに
『風呂にはいりなね』と
おかあさんが言ってくれた。

そして、手作りの岩風呂に案内されると、

『上がったらこっちにきなね』
と謎の言葉を残して、去っていく。
ゆっくりと湯船につかり、
冷えた体をほぐしていく。
少し硫黄の匂いがした。
風呂を上がったものの、素直に
『こっち』へ顔を出して良いものか迷い、
一服した後に、
訪ねてみる。
すると、そこには、
8種類位の食事、そして半裸のおとうさん、そして、同じようなバイカーが一人。
そしておかあさんは、
『ビール?』と聞いてくる。
これだけもてなされたら、
聞かずにはいられない。
『幾らですか?』
と聞いた。
すると、おかあさんは嫌そうな顔をして、
『都会の人間はそれだから嫌い』
とそれからなぜ自分たちがこういう事をしているのか、
ここでは『縁』を大事にしているんだと言う事を
話聞かせてくれた。
ビールを美味しく頂き、話も尽きることなく、思いも
よらない素晴らしい時間を過ごせた。
しかし、9時近くなると、おかあさんがダウン。
私ともう一人のバイカーは自分のテントへ
戻る事にした。
テントに滑り込むや否や
私も倒れた。
余り強くない酒と若干の高地での酸素不足から、
次に起きた時には
頭痛がひどく、
深夜まで眼がギンギンズキズキしていた。
次の日の事を考える余裕もなく、
痛みを抑える薬もない。
痛みを忘れる為に耳を澄ますと、
テントに遊ぶ雨粒の音。
そのリズムで皮肉にも
いつの間にか
眠りに落ちていた。