著者岡潔はごぞんじでしょうか?
私は小林秀雄との対談集『人間の建設』で初めて知りました。

簡単に言うと『多変数解析函数論』という分野で3つもの問題を解決し、欧米では『岡潔とはグループ名なんじゃないか?』と思われていた程、知性にキレのあった大数学者であります。

こんな人物を知らなかったとは何とも恐れ多いことであります。

さて、彼の著作『春宵十話』なんとなくフォトリーディングで読み終えました。

数学の本質とは何かと問われれば、『真の中の調和』であると説く彼のエッセイ集である。

論理的学問、左脳の代表格ともいえる数学が彼に言わせれば『情緒』であるという。

最近の教育では黒板に色とりどりに描き分けられた数式を叩きこまれるが、それでは数学はわからない。

教える側もそれがわかっていないから本質的な数学を教えられていないと言う。

確かに計算問題は必要だろう。

情緒に関して芸術と数学との密接な関わりを挙げながら、直感を磨くこと、頭を休める事の重要性を教えてくれる。

彼は人から『なぜ数学を学んでいるのですか?』と聞かれたときにこう答えるという。

『スミレはスミレの花をただ咲かせようと思っているだけだ。そこに良いも悪いもスミレにとってはどうでもいいことであって、スミレにしてみれば、花を咲かせているのといないのとではおのずから違うと言うだけの事だ』とか言う感じの答え方をしているという。


日本人が絶滅の危険性があると心配している彼に今の日本は少しは応えられているだろうか?

たぶん、どんどん悪くなっているような気がする。

情緒と情操、数学と芸術、日本と自分。

また考える事が増えてしまった。

春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)/岡 潔

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