


前回の三十三番札所華厳寺のブログでは、不足の美、余白の美を理由にこれをもってむすびとしたい、としたが、あれから8年経過して、当方も65歳と相成りけじめをつけたいという気持ちが募り、唯一残っていた一番札所を回ることになったもの。だから今回のブログは付録である。
那智にある浜の宮王子から進む道は熊野古道の一つの中辺路と言われ、大門坂、青岸渡寺、那智大社を経由して本宮大社さらには田辺へと続いている。(ちなみに浜の宮王子は同じく熊野街道である大辺路、伊勢路のと分岐点に当たる。)しかし、今回は紀伊勝浦駅前から出ている定期観光バスで熊野三山と青岸渡寺を回った。いにしえの熊野古道での熊野詣でを思うと、何とイージーで手抜きの参拝であることか。梁塵秘抄にも「熊野へ参らむと思へども徒歩より参れば道遠し すぐれて山峻し 馬にて参れば苦行ならず」とあり、馬でも苦行ならないのにバスでは何というべきや。
なぜここが一番札所かというとこの西国三十三観音霊場を発願した花山法皇がここに千日間参籠したことによる。熊野御幸といえば後白河上皇が33回も行ったことがよく知られているが、その百年以上前に花山法皇も一度詣でていたということだ。
さて青岸渡寺といえば那智の滝。この滝壺で得た観世音を胎内仏とした如意輪観音を本尊としており、青岸渡寺と那智の滝は一体と考えていい。(明治の神仏分離令までは那智大社とも一体であり如意輪寺と呼ばれていた。)本尊は秘仏であるが、お前立の座像は左手に如意宝珠をもち、右手は頬を支え、なんとも印象的。境内の三重塔と那智の滝とのコントラストは野分のあとの澄んだ空気のもとでひときわ鮮やかであった。帰りに駅前のお店で食べたマグロ丼はさすがに本場の味がした。