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日本の一般消費者は株主権利をどう意識しているのでしょう。

この数ヶ月間にも日本の金融資産の中で株式・債券保有比率は数%上昇傾向にあります。

1980年代に日本に投資ブームが訪れましたがあの頃と大きく違うのは一般消費者の参加

が多くなっていることではないかと思います。

日本銀行の2005年度9月調べによると日本の家計金融資産総額は約1500兆円。

その内訳を見ると預金が50%以上、株式・債券投資が10%程でした。

アメリカの家計金融資産のポートフォリオは逆で、家計金融資産総額約4500兆円の中

でも株式・債券投資(外貨預金等除く)が50%、預金が10%程とデータが出ています。

アメリカと比較すると投資への姿勢は、増加傾向にあるとはいえまだまだ希薄です。

 特に戦後の日本人は1億総中流のムードの中で醸成された「あの人がやってるなら私も」

「あの人が持っているなら私も」というフィーリングが根強く、張り切ってアリストテレス哲学の

説得を引用し、ニトスを人気やカリスマと訳するとすれば“ニトスによるポピュリズム(大衆迎合

主義)の罠”を疑うことなく、むしろ地域の集団社会での結束を強めるツールの1つとして利用

しているように思えます。

損をしなければ、集団社会の平均点をとる方が日常の生活にとって精神的にメリットが大きい

ようです。

さて、日本の家計の中で投資・債権保有比率を向上させている原因ですが、大きく4つに分類

してみます。

 1つ目はほとんどの人が興味をもつ“金”を題材にしたヒルズ族やIT長者、投資で1億儲ける

主婦などのサクセスストーリーをメディアが報じていること。(ライブドア、村上ファンド事件で

異常で無計画な投資は一旦沈静化)

 2つ目はIT技術の向上と一般家庭へのインフラ(ここではADSL、光ファイバ、3G携帯など)の

急速な普及により、場所・時間を問わず証券・債権の売買が可能になり学生、主婦、高齢者

まで参加できるようになったこと。

 3つ目に確定拠出型年金(日本版401k)など企業型を主とし厚生労働省調べで前年比30%

以上増加の200万人以上が加入していることなどをみると現状の賦課方式による年金制度

への不安から官の不祥事、昨今のオレオレ詐欺など社会全体が信用できなくなっていること。

 4つ目に経済を担う中核層が戦後の高度成長期を経験していない団塊ジュニア層へ徐々に

移行していること。近い将来にこの世代間の大幅な交代は予想以上にスピードを加速させる

ように感じます。

私は家計の投資比率が向上する要因としてこの4つが絡み合い、その中でも大きな要因を

果たしている中核に2つ目のIT革命によるディスクロージャーだと考えています。

 現状は前述したように株主としての意識は希薄で、投資信託など専門家に任せるタイプの

金融商品を選ぶスタイルと、王子製紙が北越製紙に仕掛けたTOBにも見られるように、

まだまだゲマインシャフト(封鎖的社会集団)を善とする風潮が世に残っています。

今後は、2008年から導入予定の日本版SOX法などの企業モラルを強化する法整備の

下で、リアリズム(事実主義)が派生してゆき、株主が担う役割と責任を多様な投資者が背負い

市場に参加してリターンを分け合うような経済社会が訪れると、SRI(投資者の社会的責任)も

向上して利益を上げて欲しい企業へ投資するような社会が生まれる可能性があります。

それがステータスとなり集団社会の平均点を上回る優越感に浸るのは悪くないでしょう。

一方でリアリズムが一切の建前を許さなくなったとき、人間は人間でいることができるのかは

比肩なき深刻な問題であります。

 最後に、自由主義市場経済は生活を豊かにする手段でありますが同時に人間のもつ

カトリックでいう枢要罪(嫉妬、怠惰、強欲、傲慢、暴食、憤怒、色欲)までも膨張させる要素を

もっている面を忘れてはならないと身をもって感じています。

イラク戦争を見ても、イスラムとキリストという宗教的骨肉の争いというような側面をもって

いますが、異なる文化や価値観をもつ全ての人が待望するようなものでもないようです。

リアリズムの先に見える自由主義市場経済はその国や人が本来最も大切にすべき

文化や価値観へと回帰させる可能性もあるのではないでしょうか。

その結果、人間のもつ本質と向き合い、生産物の源は地球で人類はそれを加工し、消費

しながら地球の命と引き換えに存在している生物だという事実を、一刻も早く教えてくれる

ものでなければならないと思います。