自分が運動には向いていないと知った頃に前後して、音楽を聴くようになっていた。クラシックから始まり、映画音楽に好みが移り、当時CMで流れていたWham!によって洋楽にはまっていった。部活を終えて帰宅し、風呂、夕食が終わるとテレビも見ずに部屋に籠もって音楽に没頭した。ビルボードヒットチャートを毎週チェックし、好きな曲やお気に入りのスーパースターが全米ナンバーワンになると自分のことのように喜んだ。そして、いつしか自分もビルボードヒットチャート全米ナンバーワンになりたいと思うようになった。

歌はそこそこうまかった。小学生時代は学年代表で歌ったことが何度かあった。楽器は経験が無かったが、当時普及しだしたMSXというパソコンが電子音でメロディーを奏でてくれた。だが全米ナンバーワンになるためには欠かせない、作曲能力が致命的にダメだった。しつこく同じ旋律を繰り返したり、盛り上がりを欠いたまま引っ張ったりと、当時の自分のしつこい性格が曲に現れてしまっていた。一緒にバンドを組んでアメリカに行こうと約束していた友人が作曲した曲を始めた聴いたとき、自分には才能の欠片も無かったことに気づいて、この夢を諦めた。