ども、らっぱ小僧です。ホットな話題、ホットなうちにと言うことで、珍しく前回から間を置かずに投稿です。
夏休みも大詰めの8月30日金曜日。日本列島を台風が縦断する中、今夜の金曜ロードショーではジブリの「天空の城ラピュタ」をやってました。おうおう、日テレよ。今年はラピュタをここに持ってきおったか...
「天空の城ラピュタ」といえば、言わずと知れた国民的人気を誇るアニメ映画。ストレートな冒険活劇がジブリの中でも特に親しみやすい作品でもあります。またTwitter(今はX)が登場してからは「バルス祭り」が盛り上がって、低調になりつつあるテレビの映画放映の中でも例外的に大きな話題になっています。
そんなラピュタですが、私たちラッパ吹きには忘れられないシーンがあります。多くの方はもうお分かりでしょう。そう。主人公パズーがトランペットを吹くシーンですね!
渓谷の朝に鳴り響くトランペット。トランペットの音に目を覚まして飛び立つハトの群れ。やがて昨晩パズーに助けられたヒロイン・シータも目を覚まして、自分を助けてくれた少年の姿をはじめて目にする...
この時パズーが吹いていた曲には「ハトと少年」というタイトルがつけられています。作曲は勿論、久石譲。
この曲、らっぱ吹きなら絶対誰しも真似したことがあると思うんですよねー。なぜなら、あまりに有名なフレーズなのでらっぱ吹きの名刺代わりに丁度良い。例えば「なんか吹いてみせて!」って言われたときにこれを吹くと反応が良いのです。そんなこともあり、「ハトと少年」はらっぱ吹きには何かと愛着のある曲なのです。
ってなわけで今回はらっぱ吹きにはなじみ深いこの「ハトと少年」について取り上げてみます。まずは映画そのものについて。次いでパズーがらっぱを吹く例のシーンから見えるもの・感じたことについて。最後に実際の「ハトと少年」の演奏を紹介、という流れで語ってみようとか思います。
なお、ブログに掲載させていただいている本編画像はジブリの公式サイトより「常識の範囲でご自由にお使いください」とされているものを使用しています
ラピュタの大半は浪漫で出来ている!
ジブリの中でも、ことラピュタに関しては、「ジブリにはピンとこないけどラピュタは好き」という声をよく聴きます。その理由はどこにあるのでしょうか?
ジブリの宮崎駿はまごうことなき国民的作家ではあるものの、作品によっては文学的だったり哲学的だったりしてとっつきにくいものも結構あります。だってのべ2000万人が劇場に足を運んだ「千と千尋」にしたって、決してわかりやすい作品じゃないっすよ、アレ。しかし「よく分からないけどなんかスゲェ!」という力技で見せきってしまえるのも宮崎駿の凄さではあります。
ところが、ラピュタに関しては難解さを全く感じさせない。そりゃ元ネタは神話とか色々あるけれど、物語の本質には全く関係が無い。ではラピュタの本質は何でしょうか?私は「浪漫」だと思います。本作は宮崎駿の少年時代の空想が元になっているそうですが、宮崎少年の「あんなこっといいな♪ 起こるといいな♪(ドラえもんの歌にのせて)」が形になった作品が本作だと思うのです。
空から降ってくる美少女、少女との出会いからはじまる大冒険、汗と油の臭いがプンプンのメカたち、失われた文明とオーパーツをのせた天空の城...これを浪漫と言わずしてなんという!そしてこれらのワクワクする要素やキャラの配置は宮崎駿の監督デビュー作である『ルパン三世 カリオストロの城」にも通じます。デビュー作の時は他人のふんどし付けてやるしかなかったわけですが、本作では自分の作品で自分のワクワクをストレートに表現できています。この抜けの良さが30数年たった今でも多くの人を引き付ける要因ではないでしょうか。
「ハトと少年」もまた、喇叭吹きの浪漫である!
パズーが吹く喇叭もまた浪漫に溢れています。そもそも、冒険モノの主人公が楽器が上手いって設定からしていいじゃないっすか!しかもそれをヒロインに聴かせるわけですよ。そんなの、喇叭吹きの浪漫以外の何物でもないでしょ(笑)そりゃみんな真似したくなりますわ。
あとよく話題になるのが、「パズー、らっぱ上手すぎ!」って話ですね。当然あのらっぱは実際にはプロ(重鎮スタジオ・ミュージシャン数原晋さん)が吹いているわけで、そりゃ上手くて当然なわけですが。一方で、曲の難易度は絶妙でパズーが吹いててもおかしくはない感じ。初心者では厳しいけど中高生でそこそこ吹ける子なら真似したくなる、そんなレベルですね。
次いで、パズーが使っているらっぱそのものについても見ていきましょう。パズーが使っているらっぱは、シーンによって若干形状の違いはありますが、信号ラッパ的なものではなく、バルブがついた演奏用なのは間違いない。なんだ、意外にちゃんとしたやつ持ってるじゃん。ま、バルブやロータリーがついてないとあんなフレーズは吹けないから、これも当然と言えば当然。またトランペットより一回り小さなコルネットでも似合うような気もしますが、朝の渓谷に朗々と響かすなら、やっぱトランペットがよさそうですね。
信号ラッパ(ビューグル)Wikipediaコモンズより引用
らっぱとは「唇の振動により発生した音を管の中で増幅させる装置」。唇の振動を変化させることで音程を変化させることも可能。しかしこのシンプルな構造だと自由自在に音程を変化させたり、音にニュアンスを付けることは困難。「正露丸のテーマ」みたいなのは吹けるが複雑なことは出来ない。
トランペット(ピストンバルブ式) Wikipediaコモンズより引用
基本的な構造は信号ラッパと同じだが、こちらはピストンバルブによって息が通る管の長さを切り替えることが可能。唇の振動と管の長さの切り替えを組み合わせることで音程をスムーズに変化させることが出来る。信号ラッパとの違いを無理やり何かに例えるとするなら、信号ラッパはアクセルとブレーキしかない車で、こっちはハンドルもちゃんとついてるって感じ。
ここまで、パズーがトランペットを吹くシーンを見てあれこれ言ってきましたが、シーンを見ればみるほど様々な疑問もわいてきます。パズーはなんでこんなちゃんとしたトランペットを持っているのか?しかもなぜにこんなに上手なのか?等々。これらについては色々妄想を膨らますと楽しいんじゃないでしょうか。私としては、父の遺した品を大切に手入れして練習している説を提唱します!トランペットを吹いたり、手入れしているときに居なくなった父のことを想う訳ですよ。コレ、物語的にも良くないですか?あるいは、炭鉱夫たちのブラスバンドがあって、そこでバリバリ吹いている説もいいですね。
炭鉱夫たちのブラスバンド(映画『ブラス!』)
炭鉱の町のブラスバンドと言えばコレ。若き日のユアン・マクレガーとか出てますよ!
「ハトと少年」を聴こう!
最後に、「ハトと少年」の演奏を紹介して筆を擱こうと思います。
まずはサウンドトラックから。
「スラッグ渓谷の朝」