突然ですが皆さん、「アーバンなソウル・ミュージック」といえばどのような曲を想像されますか?
それは都会の夜の大人の音楽。高級なラウンジで男女が語らう時にピッタリな感じのやつ。歯が浮くような甘い歌詞を、これまた甘い歌声にのせて歌うラヴ・ソング...って言ってて恥ずかしくなるじゃねーか!チクショウ!
思い返せば「お洒落は敵だ!」「汗臭くって、泥臭くって、ドエロいのこそソウルの王道じゃい!」とツッパってきた人生でした。しかしそんな俺ももう大人だ(大分昔から)。そろそろ照れるのをやめて素直に大人のアーバンなソウルを嗜んでいこうではないか、そんな心境に至った今日この頃です。
そんなわけで、本日はアーバンなソウル・ミュージックを代表する名曲「Just The Two Of Us」を取り上げたいと思います。相当昔の曲ですが、近年は鉄板のコード進行が数多くのポップスに引用されており、そういった意味でも改めて聴きなおす価値のある曲だと思います。ではまず原曲の方から。
「洒落た大人の音楽」の系譜
just the two of usは恋人たちの二人きりの世界を歌った、甘いラヴ・ソングでございます。サックスの煌き、エレピと歌声の透明感が抽象性の高いピュアな世界観を醸しています。ちなみに邦題は「クリスタルの恋人たち」。これは歌詞に出てくるcrystal raindrops(クリスタルの雨粒)という単語を拾ったものですが、原曲の雰囲気もよく伝えているし、個人的にそんなに悪くない邦題だと思います。
本作はサックス奏者グローヴァ―・ワシントン・ジュニアの1980年アルバム『ワインライト』(Winelight)に収録された1曲です。シンガーのビル・ウィザーズを迎えて歌モノとして制作された本作は、翌年にシングルカットされて大ヒットを記録します。
グローヴァ―・ワシントン・ジュニアは70年代にフュージョンの畑で活躍した人で、いわゆるスムーズ・ジャズの元祖と呼ばれています。彼が70年代に所属していたCTIというレーベルはまさにそういう「洒落た大人の聴く音楽」としてジャズを大衆化し、巨大化した音楽市場の中にジャズの居場所を探して来たレーベルでした。ゆえにCTI出身の彼が本作のヒットでスムーズ・ジャズの元祖となったことは70年代以降のジャズ大衆化のひとつの到達点だったといえるかもしれません。
「丸サ」と林檎はみんなの憧れ?
こうしてjust the two of usはアーバンなソウル・ミュージックの定番となったわけですが、この40年以上前の曲が未だに有名なのは、「Ⅳ△7 → Ⅲ7 →Ⅵm7 → Ⅴm7 →Ⅰ7」というコード進行(とその派生形)が鉄板として最近のj-popsでも使われまくっているのも大きいでしょう。いやね、とにかく多いんですよ。ここでいちいち上げていたらきりがないので、ご興味のある方は「just the two of us進行」とかで検索してみてください。
なぜ最近のj-popsにこのコードが使われるか。それは時代を超えた普遍的な魅力があるからです。理論の話は大変なので、かいつまんでこのコード進行の特徴を挙げるとするなら「セカンダリー・ドミナントからの解決を繰り返すことで生まれる浮遊感とループ感」「メジャー・マイナーがはっきりしない曇り空な感じ」といったあたりかと思います。個人的にはⅣ→Ⅲの半音下がるところにタマらないエロさを感じますね。
しかし、まだこれではこのコード進行が今のj-popsに使われる理由としては不十分。実はこの進行の魅力を多くの人に広めた名曲があるのです。
J-popsでjust the two of usのコード進行を有名にした曲といえば、やはりこの曲。
椎名林檎「丸の内サディスティック」
日本のオシャレなpopsの代表といえば椎名林檎の「丸サ」でしょ!...って、勝手に代名詞と言い切ってしまったら、「それは単にお前が林檎ファンなだけだろう!」というツッコミが聴こえてきそうですが(笑)。しかし、欲望にまみれた大都会・東京とそこに生きる女を鮮やかに描写してみせた本作は、椎名林檎の代表曲になったのと同時に、この進行の魅力を知らしめるのに決定的な役割を果たしました。なにせこの曲の影響で最近のpops界隈ではこの進行はjust the two of us進行ではなく「丸サ進行」なんて呼ばれてますからね。また椎名林檎はファンは勿論のこと同業からもリスペクトを集めるタイプのカリスマですから、最近「丸サ」の進行が多いのは、若い頃に林檎と「丸サ」にヤられた人が今の作り手に多いからかもしれません。
「丸サ」におけるこの進行の生かし方は本当に見事の一言に尽きます。この曲ではお茶の水、銀座、後楽園、池袋と夜な夜な夜の街を漂う女性の姿を描写しますが、その際にこのコード進行の浮遊感・ループ感をうまいこと生かしてるんですよね。またインモラルにいっちゃいそうな、都会の夜のグレーな感じとこのメジャー・マイナーがはっきりしないこのコード進行の色合いも自然と重なります。シンプルな曲だけにコード進行の魅力をしっかり感じられるのです。
〇〇〇になりたい人生だった...
さて、話をjust the two of usに戻しましょう。「丸サ」によってコード進行が有名になったjust the to of usですが、そもそも曲自体がソウルの名曲として知られていますから、数多くのカヴァーが存在します。今回は日本人によるカヴァーを2つほどご紹介。
藤井風「just the two of us」
現代日本のポップスの世界で、ソウル・ミュージックの香りのするアーティストといえば星野源とならんでこの藤井風が双璧だと思います。この2人に関しては、個人的に、なんかこう、ムカつきますね(笑)(褒めてます)。まずそもそもこの2人は私なんかよりもはるかにソウル・ミュージックに教養もリスペクトもあった上で、今の日本のPOPSの中にそのエッセンスを落とし込んでやってる。実にオシャレに、かつ楽しそうに。そして女子ウケも抜群。完璧かよ!
そんなわけで、大いに嫉妬しつつこの2人の仕事ぶりを高く評価している私でございますが、なんと藤井風がjust the two of usをカヴァーしているのをみつけてしまいました。なんだよ~。藤井風もカヴァーしてんのかよ~。しかもイメージぴったりじゃねーかよ~。汗クサドロドロのソウル命!の私でさえ思う。嗚呼、藤井風になりたい人生だった...
(藤井風の配信から。楽しそうなのがイイネ!)
次いで、山崎まさよしによるカヴァー
山崎まさよし「just the two of us」
山崎まさよしの洋楽カヴァーアルバムより。彼ならば、ギター1本でブルージーにいってもよいところ、まさかのラテン・アレンジ!日本を代表するラテン・グループのオルケスタ・デ・ラ・ルスとの共演です。湿っぽさはなくカラッとしてHOTな演奏ですが、私大好きですよコレ!
関連作品
オリジナルのjust the two of us はこちら
藤井風の洋楽カヴァーのアルバム
山崎まさよしの洋楽カヴァーのアルバム


