Sweet Silly Love Call 濡れた吐息で 1 | True Blood Love -Last Song-

True Blood Love -Last Song-

2人で奏でる歌

said JJ byTBL綾香


ボスンとベッドに倒れ込んだのは、夜をとっくに過ぎた時間。

サイドテーブルに設置されたデジタル時計は、もうすぐ深夜の3時が終わろうとする時間だった。



「シャワー浴びなきゃ…」



ドラマで、結われる為に引っ張られる頭皮が痛んで、ジンジンと頭痛すら感じた。

家に帰る時間もなく、出演者は皆、同じホテルに宿泊している。

俳優業が本業の彼等に比べたら、何もかもが未熟な自分に、余裕なんてモノはなかった。

倒れ込んだベッドから、のそりと身体を起こして。

ふらふらと睡魔と闘いながら、汗を流す。

バスローブを羽織って、ふらふらとしたまま、水を飲み。

加湿機のスイッチをオンにして、濡れたタオルを椅子にかけて。

サイドテーブルに水を置くと、照明を落としてベッドに横になる。



瞼を閉じる前に、そっと携帯をチェックして…。



「ユノのバカ…」



ココ最近、『おやすみ』の言葉の代わりに紡ぐようになった言葉をぽつりと呟いて。

瞼を閉じた。



いつもなら、こんな状態の時には睡魔はやってこないのに。

長時間の撮影時間に加えて、長い緊張感を感じている身体は、心身ともに疲れ切ってしまって。

悲しいと思う気持よりも先に、睡眠を優先する。

遠くなっていく意識の中で、電話もメールもちっとも寄越さない、伴侶の顔を思い出したような気がした。





Plulululu Plulululu



繰り返される電話の呼び出しに、手を伸ばした。

携帯ではなく、ホテルの電話へ。



「は…い」



『ジェジュンさん、おはようございます…お疲れだと思いますが、1時間後には衣装に着替えて貰えますか?』



寝起きの掠れた声に、申し訳なさそうに電話をかけてきたのは、スタッフだった。

そういえば今日は、早朝の撮りがあると言われていたのを思い出して。

重い頭を振って、軽くストレッチをしてからベッドから降りる。

スルリと身体から落ちたのはバスローブで。

下着も着けずに寝てしまっていた事を思い出す。

若干、反応しているソコは、疲れているからなのか、朝だからなのか…。



「欲求不満…感じる暇もないぐらいに忙しいもんな」



はぁ、と溜息を吐いて。

荷物の中から、着替えを出す。

すぐに衣装に着替えるから、服はラフにして。

自分よりも睡眠時間の少ないスタッフさん達に迷惑がかからないように、時間通りに。

簡単に身支度を整えて、ランドリーへ出すモノだけを専用の袋に入れて。

煙草に火を付けて、紫煙をゆっくりと吐き出す。

ゆっくりと煙草を吸う時間もないから、頭の奥がジンと痺れたような感覚になる。



『吸い過ぎだ……』



そう言って、長い指を伸ばして。

付けたばかりの煙草を、何度も取り上げられて。



『そんなに口が寂しい?』



そういって、息が出来ないくらいキスをされて。

煙草を吸うより、心臓に悪いと思った事があった。



「ユノのバカ…」



煙草を揉み消して、呟いたのは寝る前と同じ言葉。

どうしようもなく苛々する。

こんなにも俺はお前を想っているのに、会えない分、もっとマメに連絡が欲しいのに。

連絡が欲しいのに、ユノは、事務所の後輩と、男女問わず楽しそうに仕事したりプライベートを過ごしているから。



「バカ…」



熱くなりそうな目頭を掌で押さえて。

携帯に指を滑らせた。



『おはよ…』



絵文字も何もないまま、挨拶だけするなんて。

いかにも機嫌が悪いですって言っているようなモノだったけれど。

空元気を出す程、余裕もなかった。

本当は、ユノから連絡が欲しかったのに…それでも、自分から連絡してしまうのは、

自分から連絡しないでいて、ユノが自分の存在を忘れてしまうんじゃないかと思うのが怖いから。



結婚したといっても、同性同士。

普通の男女のように認められた婚姻じゃないから。

信頼して、愛してもいるけれど…。




やっぱり、離れていると寂しいし、不安だった。




メールを送って。

ゆっくりと深呼吸を繰り返してから、顔を上げる。



「行かなきゃ…」



ミスせず頑張れば、今日はユノに会えるかもしれない。

そんな、子供じみた願いでも、今の自分にとっては大きな支えだった。

2時間程度の睡眠で、疲れなんて取れる訳もなくて。

それでも、疲れている顔を見せないように。



「今日も、宜しくお願いします」



ロビーに迎えにきたスタッフに挨拶をして、車に乗り込むのと同時に、携帯をオフにした。