これは精一杯恋をしたい人に、精一杯の気持ちを込めて頑張ってほしいという願いで書いた夢小説です。
青春ものでこんなのあったなーって過去のサイトから引っ張ってきました。
舞台は風の涼しい放課後。教室にて二人きり。
切羽詰った愛が好き:アメリカ
「君は誰かと付き合わないのかい?」
そう質問してきたのは私の友達、アルフレッドだった。彼は面白くて話しやすい。冗談も通るし数少ない男友達の中でかなり喋れる相手。
そんな彼とは恋愛の話なんてした試しがなかった。なんだかタブーな気もしていたし、私がそういう話しが嫌いなだけかもしれないけど。
「ないよ、全くない」
「ふーん。君、モテると思うんだけどなぁ」
「ははっ」
正直話しを進めるつもりなんて無かった。アルフレッドの口からそんな言葉は聞きたくなかった。モテる?やだやだ、何でそんな恋愛下手な片想いの人が言うようなこと聞かなきゃならないの?
乾いた笑いを出し、睨みを効かせてアルフレッドを見ると彼は視線を逸らした。
「君って恋したことなさそうだよね」
視線の先は教室の窓の外。サッカー部が放課後練習を決め込んでいる。あ、アントーニョがこっちに気づいた。手ぇ振ってらー。
軽く手を振り返すと、アルフレッドが立ち上がってカーテンを閉めた。何すんの、とまた彼を睨む。
「質問の途中じゃないか」
「あーそうだったそうだった」
悪気なさ気に謝ってからちゃっちゃとこのダルイ質問に答えようと思った。ここまで真剣なアルフレッドは初めて見たからウザさ半分びっくり半分。
「……恋ね。あるある、何度もある」
「あるのかい!?」
「…ぜーんぶ片想いだけど」
悪戯に笑ってみせる。
渋い面をしたアルフレッドを見ないふりをする。
「片想いって…君、結構カッコイイ男にも言い寄られてるじゃないか!」
「あ、今アーサー先輩のこと考えたでしょ。違うよ、私は追い掛けられると嫌いになるタイプだからそういうのナシ」
「そうなのかい!?」
「追い掛けてたいの」
ぽっかりと口を開けるザマは物凄く間抜けである。
うん。それにね、私は恋をすると醜くなるの。必死すぎて失敗するし周りが見えなくなって迷惑掛けるし滑稽すぎて笑われる、そして何より束縛が酷い。付き合っているわけでもないのに女と喋っていると不機嫌になる。
私は常に、誰にも左右されたくないという変なプライドが高い。だから「そんな」恋をする自分が許せない。
だから
「一生…恋なんてしたくないね」
「どんな相手でもかい?」
「女の子だったら良いかも。可愛いし」
「君は同性愛者だったのか!」
「あくまで一つの案だよ」
そう、アルフレッドとはこんな会話をしている方が楽しい。だけど徐々に戻りつつあったテンションを、またこいつはずり下げた。
「俺もさ、恋愛するつもりなんてないんだ」
再び恋愛話になったことへの苛立ち。それとは別に残念とか、驚きに似た感情が胸を痛めた。
「へえ。遊びまくってるかと思った」
「失礼な奴だなあ!ん、?正確に言うとしないつもり、かな?」
「私に聞かないで、知らないよ」
疑問符を投げ付けられたのでそのまま打ち返した。すると廊下を後輩の女の子集団が通りかかって、アルフレッド先輩ー!なんて声を掛けてきた。そのうちの一人二人が私を睨み付けている。
ああいうのも、醜い。
「先輩!今度一緒にカラオケ行きませんか?」
「ああ、考えとくよ」
みるみる紅く染まる頬。
ヒラヒラ手を振れば元気いっぱいにキャーキャー走り去って行った。
ギシ。
心が歪む音。何、なんで?あぁ嘘だ、まさかそんなこと。
「行くの?今度。」
「まっさかー!俺オンチだからね、カラオケなんて行かないさ」
「ふーん。今度カラオケ行こうよ」
「名前とならいいよ」
「……オンチなんでしょ」
「名前になら聞かれてもいい」
思わず顔が綻ぶ。嫌だ、これ何度か経験したことある。自分が特別なんだって勘違いするときの感情だ。
やめてやめてやめて、それ以上何も言わないで、早く突き放して、気付くな…私!
「君は恋にはならないかもしれないけどさ…俺、」
「あの、アルフレッド、ごめん」
「………まだ何も言ってないよ」
雰囲気が語ってるじゃないか。アルフレッドとそんな関係になりたくない。冗談言い合って笑ってたい。醜い私なんて、見せたくない…!
「名前、聞いて…」
「だからごめんってば」
「聞いてくれよ!」
「聞きたくない!!」
聞いたら気づいてしまう。辛くなるのは嫌だ、私が、私がアルフレッドを
「好きだ!!」
なんて。
耳を塞いでも聞こえた大きな声。聞いてしまった「好きだ」が体に響く。血が巡るように言葉は頭を酔わせて、どうしようもなく悲しくなる。それと同時に嬉しくなるのだから…もう収拾は着かない。
「今までの関係でいるつもりはないよ、名前が俺のこと嫌いっていうなら、俺は名前の前から消える覚悟はある」
「私に…そんな覚悟ないよ…!」
醜い私には絶対なりたくない。アルフレッドとは友達でいたい。なのに壊すアルフレッド。
「…人を好きになるとね、私格好悪くなる。それが嫌なの、余裕ない私なんて、やだ…っ」
「当たり前じゃないか!!」
「え…?」
怒っているのだろうか。
声は酷く荒れているのに、そう疑問文になるのは…手が、私の肩を掴んだ手が、とても優しいからだ。
「本気で好きになった人の前で余裕ぶっこける分けないぞ!いつも必死で、気持ち伝えるためなら何でもやって、それでもまだ好きだから頑張る!」
格好悪く見えるかもしれないけど、でもこれが一番格好いいんだ!今の俺が証人だぞ!
口早に言い切った後に、彼は私の頭を自分の胸板に押し付けた。嫌だ嫌だと思っていた感情が180度ひっくり返った瞬間で。
「アルフレッド…!」
「何だい?」
「好き、です…!」
「君はもう…自分の気持ちを押し込めすぎだよ…」
結構前から、アルフレッドに対して好意があるのは分かっていた。自制心が強すぎる為か、それら全てを排除していたのを気付いていたのだという。
そんな私だと分かっていて、好きになってくれたのがこいつで良かった。
「でも追い掛けられるのが嫌いって聞いた時はかなり焦ったぞ…」
「冷めやすいからね、気をつけて?」
「え!やめてくれよ!」
「アルフレッドだからきっと冷めないよ、大丈夫…ッぎゃあ!」
「わああ!名前ー!!」
素晴らしいことを言った矢先に机ごと倒れてしまった。「ぎゃあ」なんて女らしくない声出すんだ私。やっぱり恋愛なんて私に向かない。
「……ぅあ…格好悪い…」
「ぶふっ!でも可愛いぞ!」
「アルフレッド…!」
「俺だけが君の余裕ない姿独占できていい気分だぞ!」
「…うん。ばーか」
こんなみっともない私でも、愛してくれる人がいました。
その人は全く格好悪くなんてないわけで。
完