9月18日、BABY☆STAR 西萌葉生誕祭。
BABY☆STARのメンバーの生誕祭が行われたのはこれが初めてだ。
会場となったカフェ、トリオンプには萌葉の特別な日を祝おうとファンが集い、店内は終始賑わっていた。
「本日はお足元の悪い中……」
萌葉の挨拶とともに、19時からイベントはスタートし、はじめの半時間ほどは全員にドリンクが行き渡るまでメンバーと雑談の出来るカフェタイム。
僕は特製もえはドリンクを注文した。
中身は会場に来た人だけのヒミツ。コーラとカルピスブレンドでした。
あれ?乾杯してねぇぞ。
メンバーの道川 莉帆に伝えると、莉帆はすぐにメンバーとお客の注目を集めて仕切り直した。
カンパーーーイ!!!
これで本格スタートだ。
ほどなくして、最初の企画が始まった。
配布された紙に萌葉に対する質問を書いて抽選箱に入れ、引いたものに萌葉が答えるというものだ。
「うーんどうすっかなぁ」
隣席にいたオタクが質問を考えあぐねて唸っている、木の枝を持って。
は?
ハリーポッターのコラボ商品だと思った、杖型のペンだと。でも木の枝だった、等身大かつ全力で木の枝だった。
ペン貸しますよ、と僕。
いつも彼は何かしら小ネタを仕込んで笑わせてくるからたまらない。
ふざけているうちに用紙は集まり、ついに質問コーナーが始まる。
1.好きな子がアイドルなんですがどうしたらいいですか?
これはオタク永遠の課題とも言える。
僕としても「それな」としか発言のしようがなかった。
アイドルに片恋をするのは切ないからね。
萌葉が答えを考えている間、他のメンバーもあれこれ意見を飛ばす。
瀬奈「結婚すればいいじゃん」
言い切りおったこの娘。
それが出来なくて、なおかつ許されないからオタクとアイドルの関係は大変なんだなこれが。
萌葉「わたしだったら…その子のことを心の中でずっと考えて、会いにいきます」
萌葉「会いにいけば、いいと思います」
真理だ。
好きだからってどうしようもない。
もちろん人と時によるが、アイドルとは結ばれないのだから。
ならば会いに行くしかない、一方通行だとしても愛を届けるしかない。
僕が隣のオタクの着ているシャツをちら、と見ると背中に「在宅は死ね」と書かれていた。シチュエーションにハマり過ぎか。
2.理想のデートコースは?そして告白はしたい派?されたい派?
これは気になる。
いつかアイドルとデートする時に役に立つかもしれないからね(ない)。
萌葉「遊園地! ディズニーじゃない遊園地に行きたい、富士急とか。 絶叫系平気な人と一緒がいいな」
萌葉「そして告白は……されたい、です」
好きだよッッッッ!!!!
即座に叫んだが僕の恋は実らなかった。
他のメンバーも考える。
紗也加「遊園地いいね、楽しく遊べるならなんでも…カブトムシ捕りに行きたい!」
僕も少年のはしくれ、女の子と虫捕りとはたまらない。
カブトムシは男子の永遠のロマンの象徴である。わかってるなぁ。
莉帆「食べるのが好きだから、沢山食べ歩きが出来るところ! 食べて帰ってご飯作る!」
スタミナ太郎いこう!!
即座に叫んだがまたアイドルとデート出来なかった。 世知が辛い。
なぜ人の誕生日に僕は次々と哀しみを背負っているのか。
ゆき「家にいるのが好きだから……お家で映画見たり、一緒にご飯作ったりしたいな」
こういうのを待っていた、それそれそれ。
お家デート最高ですよね、みなさまどう思われますか。
可愛い女の子とお家でまったりごろごろ……たまりませんな。
ゆうひ「朝からディズニーで遊んで、こっそりホテルとか取っておいてほしいな♪」
もしもし、明日の予約枠についてなのですが。
気が付いたらiPhoneが右耳に押し付けられていた。 番号は知らんから適当に。機械音声しか返ってこない。
そもそも口座に73円しか現金が入っていなかったためダンボールスィートにしかご案内出来なかった。
虹絵「わたしは、その人の思い出がある場所に一緒に行きたいです……そこであったことを聞きたいです。 告白は、自分からは絶対できないのでしてほしい、です」
俺と北海道へ行こう。
決死のプロポーズは失敗に終わった。
なんとしてもこの素敵な娘を故郷へ連れ帰り思い出を語り聞かせたかったのだが…。
母校へきてもらうかと思ったが、冷静に考えると僕の小中学校は全面建て替えにより跡形もなく、高校にはあまりのイケてなさに思い出がないため土台無理な話であった。
1日で何回失恋したのだろう、砕け過ぎて当たるカラダが先になくなった。
3.好きな男性のタイプは?
来ました、王道にして頂点。
これとスリーサイズを聞かずして帰るのはオタクでもオトコでもない。
萌葉「優しいひと!」
おおあっ!!?
オタク全員が「俺じゃん」とガッツポーズをキメていた。
萌葉「あとは…二重まぶたの人が好きかな」
オタク若干名の悲鳴がこだました。僕もがっくりと肩を落とし項垂れていた。
紗也加「わたしは顔よりまず性格です!」
そうそう、これがオタク全てを救済する回答だよね、さすがよくわかってる。
「紗也加面食いじゃね?」とメンバーの誰かが呟いていたことはナイショだ。
虹絵「わたしは男らしい人が好きかな、言葉遣いとかも……」
わかるぜ! そうなのぜ!
僕の「男らしい言葉遣い」が如何に安直かつ日陰育ちなのかがわかっていただけただろうか。
隣のオタクはキャップを逆さに被りポケモンゲットだぜ!と宣っていた。あんたも感性一緒か。
ゆき「わたしは逆に中性的な方が好き」
莉帆「わかる、なにも出来ないくらいの人が好きかも…頼ってほしいし、してあげたい」
拝啓母上さま、あなたの息子はついにヒモの結ぶ先を見付けました。
莉帆の扶養に入りたい旨を伝えたが叶わなかった。え、僕ひとりじゃ何にもできないよ??? ダメかな???
ちなみに莉帆の意見はメンバーからは理解が得られていなかった。
はからずして喋りすぎた莉帆は真っ赤になって恥ずかしがっていた。青森出身の娘っ子は皆リンゴになれるスキルがあるのだろうか。
瀬奈「せなたんはね~、わたしの言うことなんでも聞いてくれる人がいい」
なるほどね。女の子は誰でも生れながらにしてお姫様なのだ。
僕は彼女の甘い声色から放たれる言葉のエッヂの鋭角ぶりとギャップがたまらなく好きだ。
この日ほど自分の力の無さ悔やんだ日もあるまい、何せ73円しか持っていない。
4.好きな季節はどれですか?
いいね、僕は天気の話とイケてない話だったらいくらでも出来るゾ。
この質問もそれぞれ個性が出る。
萌葉「春と秋が好き。 春は暖かくなって厚着しなくて済むから着こなしの幅が広がるし、秋は秋らしいワインレッドとか、挿し色が使えるから」
さすがBABY☆STARのファッションリーダー、しっかりと自分の個性と質問を絡めた回答だ。
僕は冬以外が全部好きです。どうでも良過ぎて誰も聞いてなかった。
紗也加「夏! カブトムシも捕れるし、海も行ける…そうそう今年は海に行けなくて~~」
カブトムシ大好きか。
紗也加とは近々、是非甲虫王者ムシキングについてアツく語りたい。
莉帆「雪国出身だがらぁ、冬が好きだぁ」
莉帆がふざけて訛りを入れ始めたら要注意である、ギャップにより心が奪われてしまう可能性がある。
莉帆「雪がすき、あと寒い中で毛布にくるまったりするのも」
雪がすき、と聞いて隣の瀬戸ゆきが嬉しそうにしていたところに萌えが過ぎて莉帆の話は全然聞いていなかった。
ゆき「わかるよ、こたつでアイス食べたりするのもいいよね」
莉帆「え、こたつはミカンでしょ」
いやアイスだろ。
夏はクーラーキムチ鍋、冬はこたつアイス、これ真理なり。
果てしなく不毛な記述をしたことをお詫び申し上げます。
やんややんやと盛り上がった質問コーナーが終わると、突然店内が暗転。
店内に聞きなれたメロディが響く。
お誕生日の歌だ。
驚く萌葉の背後から、ケーキを持ったゆうひが忍び寄る……。
ハッピ バースデイ ディア 萌葉~~♪
僕は、この時の萌葉の表情を見詰める時間が、ひどくゆっくりと流れている錯覚に陥った。
驚きから喜びへと感情が移り変わる刹那、人は本当にしあわせそうな顔をする。
萌葉のそれを見られただけで、このイベントには意味があった。
「萌葉が18歳の誕生日が1番楽しかったと思ってもらえるような日にしよう」
僕の友人ジョン・スミスはそう言った。他のファン達も同じ気持ちだろう。
そんな想いが寄り集まって生まれた時間だからこそ、萌葉は最高の笑顔を見せてくれた。
僕は彼女の生誕祭に参加できたことを、心から喜ばしく思う。
萌葉が吹き消したろうそくの煙が立ち登り、消えた。
同時に、大きな、大きな拍手が当日の主役への祝辞として贈られた。
そして、花束とファンやメンバーからのメッセージカードを綴じたアルバムも贈られ、プレゼントタイムは終了。
次は萌葉のソロパフォーマンスの時間です。
そんなアナウンスが入った。
よし、歌舞伎町の女王 弾き語りとかやってくれないかなとワクワクしていると控え室から萌葉が現れる。
ポンポン!!?!?
僕が現実に追い付けていないうちに曲は流れ、萌葉がひとり愛くるしい笑顔を浮かべてチアチアし始めた。
萌葉は部活動でバトン部をやっていたらしく、その際に練習したパフォーマンスなんだそうな。
溶ける……。
かわいいなんて陳腐な言葉では到底表しきれなかった。
可憐であると同時に、観衆からの視線を一身に受け止める凛とした強さもあるのだ。
いつもとは違う萌葉、今まで知らなかった萌葉の一面を目にし、さらに彼女への愛情は深まった。
こちらがお祝いする立場なのに、勿体無いくらいの良いものを見せてもらって言葉もない、光栄の極みであった。
ずっと見ていたかったと思わせるられるような萌葉のソロパフォーマンスは瞬く間に終了し、惜しみない賛辞が贈られた。
再び通常のカフェタイムが始まったが、メンバーもオタクもあったまっている、話は弾み、そこかしこで笑い声が上がった。
僕は時計を見て心底驚いた。
もう21時になる。
哀しきかな、楽しい時間は人の足よりずっと速く進んでしまう。
これからメンバーとチェキを撮る時間が設けられることになっていたが……。
ライブやるよ!!
待ってました。
もちろん曲目はBABY☆STAR初のオリジナル曲『IMPACT!』
盛り上がること請け合いの、たくさん遊びの盛り込まれた曲だ。
メンバーが店内に散開し、もうぶつかってしまうのではないかという距離で踊る踊る、なんて楽しいんだ。
一体感に溢れた手拍子やコールがさらに心を弾ませた。
見終わった頃には、何故か息が切れてしまっていた。いつも以上に気が昂ぶったのだろう。
ゆうひ「もう一曲やろう!」
ありがとうございます。
普段ヘラヘラしているのに、こういう時はシメるところシメちゃうの素敵。
他にもBABY☆STARといえば、という曲がある。サビでオタクが異様なリズムで蠢くあの曲だ。
『Brand New Days』
ライオンブレードと呼ばれる、腕を肩と水平に伸ばしたまま腰を落とし、肘から先を上下に揺らしながら上体を前後させる奇妙なオタク芸だ。
今回はメンバーもライオンブレードでピロピロピロピロと前後し大いに盛り上がった。こういうふざけたことをするのはとても楽しい。
めでたい席なら、なおさらだ。
計2曲を披露し、チェキの撮影も完了、ついに生誕祭の終わりが訪れてしまった。
名残り惜しい気持ちでいっぱいだったが、何事も終わりがあるからこそ美しい。
9月17日を特別にする為にも、ぐっと堪えて普通の世界へ戻らなければならないのだ。
メンバーが一列に並び、萌葉が胸中を語った。
萌葉「わたしにとって、18歳はなりたいようでなりたくない年齢でした」
萌葉「高校を卒業してしまうこともそうですし、大人として求められることも増えるからです」
萌葉「だけどこれからは、18歳としてのパフォーマンスを皆さんに見せられるように」
萌葉「ベビスタで上を目指して行くのでこれからも応援、よろしくお願いします」
よろこんで。
むしろ、そうさせてください。
萌葉の情熱は、しかと会場に居合わせた人間に伝わったはずだ。
さらなる成長を求め駆け抜ける決意を固めた彼女は、既に昨日までとは別人そのものだ。
人は変わろうと思った瞬間から変わる。
どうか萌葉から、目を離さないでいただきたい。
気が付いたら、また別人になってしまっているかもしれないから。
僕はアイドルの、少女の成長を見守るのがとても好きだ。 萌葉はその期待にいつも応えてくれる。応えるだけのがんばりを見せてくれる。
その答えが、平日の大雨の中行われたイベントにたくさんの人が集まるという事実がそれそのものだ。
たくさん会場で伝えたが、何度でも。
萌葉、お誕生日おめでとう。
1度しかない18歳の1年、そのスタートを応援したい。
萌葉ならきっともっと大きな舞台に立てる日がくる、僕は信じている。
今はまだ小さな何かが芽生えただけかもしれないけど、長く大きな枝葉を広げていってくれることを切に願っております。
また来年もお祝いしたいって考えてるのは気が早すぎるかな?
でもそれくらい、僕にとって大切な存在になっていたということだ。
これからも萌葉を、BABY☆STARをもっと好きになって、もっと応援していきたいと思う。
そう思わせてくれるようなイベントを組んでくださった運営の方々、萌葉を想って動いてくれた生誕委員会のみなさん、本当にありがとうございました。
最後は、素敵な萌葉とメンバーの写真でお別れしましょう。