10月。

約４年間を海で過ごしたサケ達が、産卵の為一気に大河を遡上していました。

そして昨日、１匹のオスサケが最下流部へ戻ってきました。

彼は、このまま海に戻ろうとしているかのように、ゆっくりと河口へ向かって進んでいました。

そもそも産卵を終えたサケが死ぬのは、産卵遡上で回復するのが不可能な程の体力を消耗し、自然治癒力では到底癒せない傷を負うからであると思います。

産卵後に少しでも体力と気力が残っているとするなら、恐らく全てのサケが彼のように、もう一度海へ・・・と思うのでしょう。

表皮は剥げ落ち、体の一部は骨が見える程に肉がエグレ、それでも海へ向かうサケ。
上流から数１０キロを下って来た体力自慢の彼ですが、恐らくこんな体では海で生きぬく事は無理でしょう。

「やってみなきゃ、解らないだろう。死ぬのを待つのは嫌なんだ。」

彼はそう言い残し、僕の前を泳ぎ去って行きました。

え？肝心の釣果ですか？

この川のイトウはそんな簡単に釣れませんよ（笑）

「もっと釣れる川に行けばいいんじゃ・・・・」と言われそうですが、僕にとっては他の川で３０匹のイトウを釣るより、この川で釣る１匹の方が価値があるんです。

サケ、海へ。