家に帰った私は


理科の教科書を初めて開いた。


先生からいつもらったか分からない授業プリントを


ファイルから引っ張り出した。


片手に握りしめていた5点の理科の答案用紙を見て


テストの解答が書かれたプリントを見て


中間考査でもらったテストの問題用紙を引っ張り出し、


一門一門、問題と解答と教科書を見ては照らし合わせていく。


ちんぷんかんぷんだが、何故か一生懸命になっていた。


「私、頑張って勉強してみるよ」


「じゃあ、わたしも協力するよ。ひとりじゃ大変だけど、ふたりで分けてやれば、どうにかなるんじゃない?」


そんな会話をわたしとしながら、


5教科中2番目に苦手な理科を勉強し始めた。


教科書1ページ目から。


ノートに用語を写しては、繰り返し書き、


一生懸命覚えた。


疲れたと思った頃にわたしが


吸い込まれるような睡魔に誘い


交代してくれる。


ふたりで一生懸命ノートをまとめては


覚える単語を繰り返し書き、


私の知らない知識を頭の中へ詰め込んでいった。


不思議と勉強した内容は、


わたしに代わってもらった分もしっかり身についてた。


書いた覚えのない単語やまとめた覚えのないところが沢山あるのに、


ノートを見れば全て知っている気がした。



こんなに必死に勉強したのは初めてだ。


不思議と気持ちが良かった。



貯まったプリントを取りに行くことも忘れて


私は理科に夢中になっていた。


そして気がつくと、教科書の1単元が終わっていた。




いつも1ヶ月に1回学校に行く時は、


体がだるくて、足が重くて、結構辛いのに、


何故か体はだるくなくて、足は軽くて、


穏やかな気持ちだった。


そして、いつも絡んでくる先生の顔は


何故かすごくかっこよく見えて、


先生を先生という目で見れるようになっていた。


「久しぶりじゃん!ここまで来ることが出来てえらい!!」


いつもはウザイこの褒め言葉も嬉しく感じた。


「ありがとうございます。」


初めて、私は先生にありがとうと言えた。


先生はすごく笑顔だった。


「知ってると思うけど、約1ヶ月後に期末考査もあるから、また名前書きに来てね!」


期末考査と聞いて、私は何故かすごくワクワクした。


今度はしっかり勉強して、解ける問題を多くしたい。


「先生、授業プリントください。


あと、テント範囲教えてください。」


先生は少し驚いた表情を見せた後に、


すごくハイテンションになり、


「わかった!!今持ってくる!!沢山持ってくる!!」


と言いながら小走りで職員室に戻って言った。


沢山あるのかよ、、笑




それから私は、わたしと一緒に代わり代わり


授業プリントと教科書ノートを使って


ちんぷんかんぷんな理科を頭の悪い頭に詰め込み、


時に分からなすぎて、 


ああああああああ!!!!


と発狂しては、夢中で勉強した。


時には、無意識に教科書とノートと授業プリントを


カバンに入れ、制服を着て学校に行ってた。


1ヶ月に1回だった私の登校が、


週に一回になり、担任や学年主任を始め、


皆が驚いた。


それでも教室には入ることはできなかったが、


先生に時間を作ってもらい、


別室で分からないところを教えてもらった。


なかなか理解できない頭の悪い私に


先生は嫌な顔ひとつもせずに、


面白おかしく教えてくれた。


そして、教えてもらい、理解したあと、


先生は必ず私を褒めてくれた。


わたしも話を聞いてくれていたのか、


ノートにはわたしがまとめたであろうことがびっしり


書いてあったりもして、


理科だけは私の好きな科目になった。



……To be continued