出会い・里華と隆介(1)
出会い・里華と隆介(1)
あたしの恋人(といえるかどうかは微妙だけど)紹介します。
名前は隆介。
あたしよりひとつ年上の彼です。
彼は男子校に通う高校3年生です。
あたしたちが付き合うようになったきっかけは、あたしが隆介(リュウ)に一目ぼれしたから。
同じ学校の子達にはない雰囲気を持っていてもちろん外見もイイ。
私は話したこともないのにもうずっとリュウにのぼせ上がっていた。
機会があればこの気持ちを伝えたい。
どんどん私の気持ちは大きくなっていった。
私は久しぶりに涼子に会ってリュウのことを伝えた。
(この時点ではあたしはリュウの名前すら知らなかった。)
「へぇ・・・そんなにイイ男なの?ちょっとぉ。一回見せてよ。」
涼子がしつこくせがんできた。
「いいけど、でもね部活とかあるみたいで8時ごろに○○線と○○線の連絡口のところにいたら、
乗換えで降りてくるところを目撃できるかもってぐらいなんだよね。」
いつも私が彼を一目見ようと待っているポイントを教えた。
「んじゃーさ、いかなきゃですよ。姉さん。」
涼子は私の手をグイグイ引っ張って来るとも限らない「彼の出没スポット」へと向かった。
・・・どうしよう。なんか緊張してきた。・・・
「あー楽しみだわ。どんな男よ。ねぇってば。」
私の緊張をよそに、涼子はガンガン話しかけてくる。
時計をチラッと見た。もう「8時10分」だ。
「あ、あのさ、ちょっと家に電話しなきゃ。」
「馬鹿ね。あたしさ、そのいい男さんしらないのに、あんたが家に電話かけに行ってる
間に来ちゃったらどうすんのよ。たまにはお母たまにしかられるもヨシよ(笑)」
今の涼子に意見することもできないし、第一「彼」を見逃しちゃったらもったいないから
そのまま来るかどうかも定かでない「彼」を待つことにした。
時計の針が8時30分を指そうというまさにそのとき彼の姿がエスカレーター越しに見えたのです。
「あ・・・」
声にならない私は涼子の腕をぐいぐいと引っ張って「彼」の方をあごで指した。
「へぇS高なんだぁ。確かにかっこいい!つか、S高だったらキヨミの彼がS高なのよね。」
「ほんとにぃ。ねぇねぇ涼子チンお願い!キヨミ様にお願いして彼の情報提供希望
なんだけどさぁ・・・なんとかなんない?」
私は涼子に両手を合わしてお願いしてみた。
「よっし、わかりましたよ。じゃ、何か「彼っち」情報がわかったら連絡するから。
ただし、情報提供したからにゃ、恋愛成就しなさいよぉ。」
涼子は満面の笑みで私のわき腹をくすぐった。
「もぉ、くすぐったい(笑)」
一目もはばからずゲラゲラ笑いながらくすぐりあいをしてふざけてた。
「あ、もうこんな時間だ。マジでお母さんに怒られるよ・・・。」
私が困った顔をしてると、全然ヘッチャラって顔で涼子は言った。
「もー、面倒だなぁ。じゃぁあたしが里華ん家泊まるわ。強行突破したら
おばちゃんだって叱れないでしょ(笑)」
すごいな。涼子って・・・悪知恵だけはくるくる働くのね。
だけど頼りになるわ。
結局、涼子は自分家に電話をして私ん家に泊まる承諾を取ると、
この日は私の家へ泊まることになった。
涼子とあたしと涼子の初恋(2)
涼子とあたしと涼子の初恋(2)
・・・遅いな。どこ行っちゃったんだろう?・・・
楽屋から居なくなった涼子とジュンを探すため私も楽屋を後にした。
涼子とジュンを探すというよりは、なれない空気の中に居るのが苦痛だったといったほうが
正しいかもしれない。
私は意味もなくステージとは反対側の奥まった場所にあるトイレの中へふらふらと入っていった。
女子トイレには誰もいない。なのに何か物音がする・・・。
「誰?何?」
声に出すわけでないけど不安な気持ちになった。
耳を澄ますと物音意外に会話のような声が聞こえてきた。
それは、隣の男子トイレから聞こえているようだ。
「・・・はぁ・・もっとちゃんと・・・・」途切れ途切れに聞こえる声の主はジュンだと思われる。
経験がないと普段から馬鹿にされている私にも、この壁の向こうの男子個室で
何が行われているかぐらいは想像がついた。
「出るまで舐めてくれ・・・な・・・な・・・りょ・うこ・・」
その声を掻き消すようにビチャビチャといやらしくジュンを吸って舐めて摩る音が聞こえた。
私はそのまま、この場所から動くことができず立ち尽くしていた。
「あたし、何やってんだろう。」
我に返ってその場を立ち去ろうとしたときに運悪く肩にかけていたカバンを落としてしまった。
綺麗に磨かれた大理石調のフロアに私のカバンの金具があたり、結構大きな音がした。
「ガシャン」
一瞬中からもれていた音声が途切れたかと思うと、
男子個室の扉が開いた。
便器のふたを閉めた状態で、きつめのGパンとトランクスをひざまでずり下げ
下半身をさらけ出したジュンと、
便器の手前側にペタリと座りこんで目を潤ませながらジュンをほおばる涼子の姿が
目に飛び込んできた。
「どうした?里華も仲間に入るか?」
悪びれることなくジュンは言い放った。
「馬鹿じゃないの!!最低!!」
私は二人から視線をそらしたまま大声で叫ぶと一目散にライブハウスの外へ飛び出した。
ジュンの言動に腹がたった、だけど腹が立つとは裏腹に二人の行為が脳裏から離れなかった。
怒りというよりも、なんともいえない複雑な気分だった。
怒りと相反し、羨ましいという気持ちさえも芽生えていた。
どこをどう歩いて帰ったかも覚えていない。
ライブハウスを飛び出した午後4時ごろから5時間近くたって私は家にたどり着いた。
「さっき涼子ちゃんから電話があったよ。遅くなるならなるって連絡ぐらいしなさいよ。」
母が怒っていることも全然耳に入らなかった。
涼子からの電話に折り返す気力もなかった。
しばらくしたら、母が私の部屋へ上がってきた。
「涼子ちゃんから電話よ。」
「出たくない。居ないって言って。」
「おかあさん、嘘つくのは嫌だから。ケンカでもしたの?ちゃんと出なさいよ。」
母にしてみれば今日こんな出来事があったことすら知る由もない。
渋々私は電話に出た。
「もしもし。」
「里華ごめんね。あいつとはさもう終わっちゃったから。」
涼子の声が震えている・・・。
「あのさ、どういうことなの?」
今日私があの場に居合わさなければ、ジュンが私に声をかけることもなく
涼子の恋が終わることもなかったのかもしれない。
「なんていうの?あいつマジで勘違いしてるよね。何様だってーの。」
ふっきろうと強がりを言うけど、声は相変わらず震えたまんまだ。
「・・・ごめん。あんなところに私が突っ立っていたのがいけないの。」
とっさに私は言った。
「ああ、全然。あんなところでね、やってるほうが悪いんだし。
第一ムカつかない?あたしの友達にだよ、一緒にやろうよはないよね?」
・・・確かにそうだ・・・
「里華あたしさ、付き合う男間違えたわ。今日は嫌な気分にさせてごめんね。
それに、あたしのことも見損なったでしょ?トイレであんなことして。」
・・・返答に困るな・・・
「ごめん、あたしもびっくりしてさ何て答えていいかわかんない。」
実際嘘ついて「ううん全然平気。」ともいえない私はありのままを正直に答えた。
「もう遅いからまた近いうちに会って話そう。」
「そうだね。そうしよう。じゃ、おやすみ。」
私は一方的に話をクロージングして電話を切った。
あれだけ涼子が胸を焦がした相手だったのに。
あっけなく終わった涼子の初恋。
あたしは隆介と子供っぽい恋愛をしてるけど、
そのほうがずっと幸せかもしれないと思った。
涼子とあたしと涼子の初恋(1)
涼子とあたしと涼子の初恋(1)
涼子と私は中学時代の同級生だった。
同じクラスで同じ部活を選択したことで仲良くなった。
中学の頃の涼子特に目立つというわけでもないが、
目鼻立ちのキリッとした美人だった。
痩せ型で色白。
性格的にはこの頃の涼子は内向的だったと思う。
私は童顔で目がくりくりしたどちらかといえば
美形というよりは「かわいらしい系」の顔だった。
スタイルはどちらかといえばグラマラスな方だった。
性格的にはさばさばして明るく、涼子とはちょっと対照的だった。
涼子は高校に進学した際に「女子高」へ通った。
部活に入るわけでもなく、「ライブハウス通い」に興じていた。
今思えば、涼子の人格形成に大きな影響を与えた時期がこの頃だったと思う。
あの内向的だった涼子がすっかり社交的になった。
そしてある一人の男性に恋をした。
「淳(ジュン)」という男だった。
ジュンはLOVERS-"A"というバンドのギタリストだった。
当時私たちの住む街のライブハウスでは
トップの人気バンドだった。
大抵のバンドが箱を借りるときに「対バンでなければ無理」
な大きな箱でもLOVERS-"A"だけで埋めることができた。
すぐに涼子は憧れだったジュンと結ばれることになるが、それが不幸の始まりでもあった。
本気だった涼子に対して、ジュンはいいように涼子を「利用」しただけだった。
涼子は高校3年生の夏休みほとんどの時間をアルバイトに費やした。
そして、稼いだ金はジュンに貢がれた。
ジュンには涼子と同じような存在のファンよりちょっと親密という関係の女がざっと10人はいた。
涼子は知って知らぬふりを通した。
何人女がいようとも「私だけは特別」だと思いたかったんだろう。
私はそんな涼子を見かねて、目を覚ますよう何度となく忠告をした。
しかし涼子はいつも
「里華はね、セックスもしたことないのに何がわかるって?笑わせないでよ。」
と言ってまともに取り合ってくれなかった。
涼子は「好きだ」「嫌いだ」の感情以外の部分で男を知っている。
だから、自分より子供の私に一体何がわかるのだ?と言いたいんだろう。
しかし、涼子とジュンの幕切れはあっけなく訪れた。
寒い冬のことだった。
私は涼子に誘われ、ともに「LOVERS-"A"」のライブに足を運んだ。
涼子は毎回足を運ぶ「常連」であり、数多くいるジュンの女の中でもかなり「格上」
であることはメンバー達の涼子の扱いを見ていればわかる。
「おぉ涼子こっち!こっち!」
屈託ない笑顔で手招きをするジュンの姿からは、裏の顔は想像もつかない。
「こんちゃ。俺はジュン、今日は来てくれてありがとね。」
と言うと私に右手を差し出した。
「あぁ、どうも。」
握手をするのに躊躇している私をよそにジュンは積極的に話しかけてきた。
「で、何ちゃんだっけ?」
「里華です。」
「あー、はいはいはい。リカちゃん人形のリカちゃんね。噂はよくよく聞いてるよ。」
・・・涼子、あたしの知らないところで何言ってるんだ?・・・
「はぁ、そうですか。」
困ったように私が答えると、
「ま、今日は楽しんで行って。」とポンポンと肩をたたいてジュンは楽屋を後にした。
そのジュンの後を追うように涼子も楽屋を飛び出していった。
慣れない空気のなかにポツンと一人取り残された私にいつもの活発さはなかった。
他のメンバーは彼女を交えて話をしたり、楽器の調整をしながら雑談をしていた。
・・・遅いな。どこ行っちゃったんだろう?・・・
