🐚アナザーストーリー《第3話》潮路つづり/室蘭


──風になることば──

静かに波を切って進むフェリーの甲板に、潮風が吹き抜ける。
つづりは革表紙のノートを胸に抱きながら、遠ざかる港を見つめていた。



旅の最後の日。
何かを探していたのか、それとも誰かの記憶を拾っていたのか、
そのどちらでもあって、どちらでもなかった気がする。

ほんの数日間だった。
だけど、出会った言葉も、見上げた空も、拾った石も──
きっと、自分の中で何かに変わっていく。

ベンチに腰かけ、ノートの最後のページをゆっくりと開いた。



> 「言葉って、誰かに届かなくても、
  風のように、自由にただそこにあればいい──」



そう書いたあと、ペンを置いて、しばらく海を眺めていた。
静かな波、遠くにかすむ岬。
心がすっと澄んでいくような時間。

誰かの記憶を綴ったページも、
拾った石のことを書いたページも、
おばあさんの便せんと詩も、
ぜんぶこのノートの中で、ひとつの“旅の記録”になった。

「いつかまた、違う風に吹かれたら──
 わたしは、またこのノートを持って出かけるかもしれない」

そんな予感を残しながら、つづりはノートをとじた。



その瞬間、ふっと海から吹き上げた風が、
閉じたノートのページをめくりかけて、彼女の髪をそっとなでた。

──“旅の途中で綴った言葉は、いつか誰かの風になる”



あの日、自分が言った言葉が、いま自分の中に静かに返ってくる。

室蘭の灯が見えてきた。

それは帰る場所の灯りであり、
また、新しく旅立つための道しるべでもあった。

つづりは小さく息を吸って、風の中にそっと笑った。




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📝完結──Thank you for joining her journey
次に風が吹くとき、潮路つづりはまた新しい“ことば”を探しに旅に出るかもしれません。
そのときも、きっと──あなたの心にも、そっと届く風でありますように。



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