✨わらこ精霊 夏だより2《第5日目》
2025年8月5日(火)
── あたためたい約束 ──
🎀オープニング曲:制服スパイラル
(自分の色は、誰かと比べなくていい)
合宿5日目の朝。
南雲こはる──旭川市出身は、食堂の窓際で温かいお茶を両手で包み込んでいた。
外には、朝露で濡れた森の葉がきらきら光っている。
笑い声と食器の音があちこちから響く中、
こはるはそっとカップを唇に運び、深呼吸した。
(…みんな、すごいな)
昨日までのステージ練習を思い返しながら、
ふと「わたし、地味かな…」という小さな棘が胸に刺さる。
明るくて華やかな子たちの中にいると、
自分の色が薄くなってしまう気がするのだ。
午前のダンス基礎レッスン。
スタジオの鏡の中、みんなはきびきびと動き、笑顔も自然にこぼれている。
こはるは一歩ずつ確かめるように、慎重にステップを踏む。
ワンテンポ遅れるたびに、胸がぎゅっと縮む。
「こはるちゃん、足先の向き、もう少しこう」
講師が優しく手本を見せてくれる。
その声に、こはるは「はい」とうなずいたけれど、
比べる気持ちは、まだ簡単には消えてくれない。
昼食後、午後のイベント──流しそうめん大会が始まった。
竹を組んだ長いレーンに、冷たい水がさらさらと流れていく。
最初は遠慮して端っこに立っていたこはるも、
周りの「こはるちゃん、ほら来て!」という声に押されて前に出た。
水の中を滑ってくる白いそうめん。
箸を伸ばすけれど、なかなかうまくつかめない。
すると隣の子が、器用にすくい上げたそうめんを、
「はい、これ、こはるちゃんの分」と笑って差し出してくれた。
「えっ、いいの?」
「もちろん。だって仲間でしょ?」
その何気ないやり取りに、こはるの胸の奥がじんわり温まった。
笑顔が自然にこぼれ、気づけば何度も水の中へ箸を伸ばしていた。
夕暮れ。
夕食後、外に出ると森の向こうに、まだ少し欠けた月が見えた。こはるはつぶやくように言った。
「8月9日の夜は、この月がまんまるになるんだって。ストージョンムーンっていうんだって」
「満月の夜は、パワーストーンを月明かりに当てて浄化するのがいいらしいよ」と、隣の子が小声で教えてくれた。
こはるはポケットから小さな水晶のかけらと、竹に書いた“また会おう”をそっと取り出す。そして月の光が当たるように木のベンチの上にそっと置いた。
(月の光に染まったこの石も、きっと――この小さな約束も、もっと強く、あたたかくなる気がする)
森に響く虫の声の中、こはるは静かに目を閉じた。満ちる月とともに、心がそっと満たされていくようだった。
みんなで片付けを終えたあと、こはるは残った竹の切れ端をひとつ手に取った。
ポケットからマジックを出し、竹の表面に小さく書く。
──“また会おう”
それは、今日もらったやさしさを未来へ返すための、小さな約束。
手の中の竹は、ほんのり温かく感じられた。
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🎵エンディング曲:
「こぼろ駅に降りた日」
(誰かと並んで歩くと、景色が少し違って見える)
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📸 次回予告:
《第6日目・8月6日(水)》音無みなと(稚内)
「静けさは、何もないわけじゃない──」





