旧約聖書列王記下が伝えているところによると、オムリ王朝は四代続きましたが、イエフという人物が第四代ヨラム王に対して謀反を起こしました。
実はこのイエフに謀反を唆したのは預言者エリシャでした。
列王記下9章にはエリシャの仲間の一人が「二ムシの孫でヨシャファトの子イエフ」に会って頭に油を注ぎ、あなたをイスラエルの王とする」と告げる場面が描かれています(1〜13節)
つまり、イエフはオムリ王朝で後継者として選ばれたのではなく、エリシャのお墨付きによってイスラエルの王とされたということです。
預言者という言葉を聞くと、どうしても未来を「予言する」人というイメージを持ってしまいますが、聖書では「予言」ではなく「預言」という漢字が使われています。
つまり、預言者とは言葉を預かる者、神の言葉を預かって宣べ伝える者ということになります。ただ、その過程でこのエリシャのように社会を大きく動かす扇動者のような役割を担ったこともあったということでしょう。
さて、このイエフが興した王朝は五代、約100年にわたって続きましたが、第四代ヤロブアム2世(治世;BCE782年頃〜753年頃)治世下で北王国は領土を拡大させ、経済的に繁栄しました。
聖書には
(彼は)レボ・ハマトからアラバの海までイスラエルの領域を開腹した(列王記下14章25節)
とありますので、北はダマスカスの北方から南は死海までを領土としたことになり、ほぼソロモン王時代の領土を回復したのでした。
聖書はこのヤロブアム2世について相変わらず
彼は主の目に悪とされることを行い、イスラエルに罪を犯させたネバトの子ヤロブアムの罪を全く離れなかった(列王記下14章24節)
と糾弾しています。
何故この時代に北王国が繁栄できたのはメソポタミア地方の大帝国アッシリアが内乱状態にあったという外的要因が大きかったのです。
次回は、北王国の滅亡の前にアッシリア帝国について概要をまとめておくことにいたします。
南(ユダ)王国と北(イスラエル)王国の系譜
(出所:雨宮慧『図解雑学 旧約聖書』)
参考文献: