こんにちは、トライズポイント・オートワークスです。
今日は、イタリヤの人気スクーターVespa
のお話です。
上の写真は記事の内容と関係ありません。
<不具合発生状況>
当店でボディー関係の修理のためにお預かりしたベスパのスモールボディー 50Sですが、
ひと通り作業を終えて、最後にクラッチワイヤーの調整をしようとキックしていた時の事です。
クラッチワイヤーを調整しながら、クラッチレバーを握りクラッチの切れを点検していたところ、突然キックがひっかかったように下りなくなりました。
「え?!ん?なんで???」
「これは、おかしい・・・・なぜ?キックが下りないの
?」
今回の修理ではエンジンやミッション、クラッチなどの機構は作業しておりません。
とにかく原因を調べなくては・・・このままでは、とてもお客様に納車できる状況ではありません。
キックアームを点検しましたが、周りの部品などに干渉している形跡は有りません。
エンジン内部のシリンダー&ピストン~クラッチ~ミッション~キック機構のいずれかの部分にキックが下りない症状が起こる原因があるはず・・・・。
一つ一つ消去法で診断していきます。
<まずは1次診断>
クラッチワイヤーを少し張り気味にして、クラッチレバーを握ってキックしても開放しても、症状は変わりません。
(これはシリンダー&ピストンが原因ではないようです・・・ミッションかも・・・と嫌な予感がよぎります)
スパークプラグを外しフライホイールをゆっくりと逆回転させると2回転ほどで”するっ”とキックが下りるようになりました。
「あれ?症状が出なくなった・・・・」
さらに繰り返しキックを下ろしてみると10回ほどキックしたところでまた、キックが引っかかったように下りなくなりました。
やはり、何かに妨げられてキックが下りなくなっているようです。
先程と同じように、フライホイールをもう1度逆回転してみると、先ほどと同じ結果が出ます。
念のため、症状が出ている状態をキープしながら、クラッチ機構を取り外してみます。
(これで、クランクシャフトとミッション及びキック機構が完全に切り離された事になります。
比較的手間のかかる作業ですが、確実な診断結果を導き出すためには必要なプロセスです)
ピストンやシリンダーは正常な様子でクランクシャフトは問題なく回ってくれますが、相変わらずキックは下りない状況のままです。
(結果は、前述の点検結果で想像はできていましたが、内心ホッとします)
クラッチ周りにも、特に異常は有りません。
やはり、ミッションかキック機構のどちらかに原因があるようです。
ここまでくると、エンジンを下ろしてクランク(ミッション)ケースを開けてみない事には先に進みません。
<オーナー様に状況説明>
これまでの診断結果をお客様にお話しし、ご理解いただいたうえでエンジンを下ろしてクランクケースを開けることになりました。
ミッションが破損して破片がギヤに噛み込まれている可能性があることも、遺憾ながら説明させて頂きました。
写真は参考資料で、記事の内容と関係はございません。
<本格的に診断>
クランクケースを開けて内部を観察すると、すぐに原因がわかりました。
キックを踏み下ろしきった時にキックギヤがクランクケースに直接ぶつかるのを防ぐためのゴムダンパー(右上の赤〇部分にあったはずの部品)が経年劣化でカチカチに硬化して砕けた破片がミッションとクランクケースの間に挟まれて(左下の赤〇部)ミッションの回転を阻止する、という事が原因でした。
ミッション自体の破損はなく、本当に良かったです。
ミッションのカウンターシャフトにも、破損した部品が圧入されたように挟み込まれています。
ギヤとギヤの間に黒くベットリこびりついています。
この状況を見ると、硬化したゴムが砕けたまま、オーナー様は気付かず、少しの間走っていたことが想像できます。
クランクケースの中には砕けた破片が散らばっていました。
<修理開始>
ミッションをすべて分解し散らばっている破片を取り除き、破損したダンパーゴムをはじめ必要部品を交換した後に再びクランクケースを組み立てます。
(細かい調整など組み立ての様子は割愛させて頂きます)
今回は、キックのラチェットギヤにも摩耗が見られましたので交換しました。
こちらが外したギヤです。
こちらが新品のギヤです。
エンジンを組み立て、ボディーにのせたら各ワイヤー、キャブレター、マフラー等を取付て試走します。
問題がないことを確認して、納車させて頂きました。
<あとがき>
スモールボディーも製造後20年以上が経過し、エンジン内部のゴム部品も劣化が始まっています。
オーナー様は、エンジン ミッションを一度オーバーホールされますことをお勧めいたします。
当店では、国産旧車/輸入車の販売や車検点検修理も承っております。
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