今回はアスリートの膝の痛みに関して話していきたいと思います。

 

殆どのスポーツで膝を痛めるアスリートが出ていて、身体動作上でも負担がかかりやすい場所になっていることは間違いありません。

原因としては、そもそも柔軟性が無く膝に負担がかかっていたり、疲労や外傷によって痛めてしまうケースもあります。

 

スポーツである以上必ず予防することは難しいですが、事前にリスクに対して対策を立てておくことで防げるパターンもあるので、自分の身体と向き合っておきましょう。

 

〜①アスリートが膝を痛める身体のパターン〜

まずはどんな選手が膝を痛めてしまうのか、考えていきたいと思います。

先程話した通り、膝を痛める原因は1つではありませんので、自分(選手)に起こり得そうなパターンを考えておくことです。

 

1、股関節or足首の柔軟性が無い
2、膝裏の「ハムストリングス」が機能低下している
3、高強度のトレーニング時にフォームが意識できていない
4、大腿神経付近にある内蔵が機能低下している

 

他にも様々な原因はあると思いますが、今回はこの点に絞って解説をしていきたいと思います。膝を痛めているから膝に原因があるわけではなく、身体全身に対して原因を探っていく必要があります。

 

その原因を1つずつ潰していくことで、膝を痛めるリスクを下げる事に繋がっていくのです。

 

 

〈要約〉
・膝自体に問題がある訳ではなく、身体全身に対して原因を探っていくことが大切
・膝痛①「股関節or足首」の柔軟性が無い
・膝痛②「ハムストリングス」の機能低下
・膝痛③「高強度トレーニング時のフォームの乱れ」
・膝痛④大腿神経付近の内臓が機能低下している

 

〜②股関節or足首の柔軟性が無い〜

外傷を除いて1番の原因になっているとも言えるのが、「股関節or足首」の柔軟性低下となります。

身体動作の理論で「joint by joint」という考えがあるのは、殆どのトレーナーが理解をしているでしょう。

 

簡単に言うと、「身体の何処かの部位に可動域の低下が見られた場合には、その他(特に上下に位置する)の関節を使って身体を動かしている」というものになります。

 

・股関節
・膝関節
・足関節

 

下半身で見ていけば、大きく3つの関節が存在をしています。

股関節の可動域を100%必要としている動作を行うときに、可動域が50%しかなければ、膝関節を使って(もしくは足首)身体を動かさなければいけません。

 

その際に50%分を膝関節で補うとすると、150%の負担が膝にかかっている事になります。50%分は余分に負担がかかっている事になるので、それが積み重なって膝周辺の組織で炎症が起きたりします。

 

 

これは足首の関節可動域(ROM)が低い場合でも同様のことが言えるので、どの関節が機能低下しているかは探していかなければいけません。

 

これまでの指導経験でも下半身に原因があるのではなく、上半身の胸椎に原因がありアプローチをすると改善したといったパターンもあるので、一概に上下の関節に原因がある訳ではありません。

 

〈股関節の参考可動域〉

屈曲:125°
伸展:15°
外転:45°
内転:20°
外旋・内旋:45°

〈足首の参考可動域〉

外転:10°
内転:20°
背屈:20°
底屈:45°
内返し:30°
外返し:20°

 

(※日本リハビリテーション医学会の関節可動域表示)

 

 

〈要約〉
・「股関節or足首」の柔軟性低下が原因になることがある
・「joint by joint」を理解することが大切

 

〜③膝裏の「ハムストリングス」が機能低下している〜

周辺の関節以外にも、膝裏に直接存在をしている「ハムストリング」が原因になっていることもあります。

ハムストリングスはアスリート(特に走る競技)にとって切っても切り離せない筋肉で、負担のかかり易い場所でもあります。

 

アクセル筋とも呼ばれて、陸上競技をやっている選手はハードなトレーニングも行っていると思います。この筋肉に機能低下(硬さ)が出てくると、周辺の神経や靭帯に影響が出てきてしまいます。

 

〈ハムストリングスという筋肉〉

・大腿二頭筋
・半膜様筋
・半腱様筋
機能:股関節の伸展、膝関節の屈曲

 

上記3つの筋肉の総称。

今回は3つの筋肉の中でも「半膜様筋」に注目して解説をしていきます。

〈半膜様筋〉

起始:坐骨結節
停止:脛骨の内側顆,斜膝窩靭帯, 下腿筋膜
機能:股関節伸展(内旋),膝関 節屈曲(屈曲位での内旋)
神経支配:脛骨神経 L4~S2

 

 

半膜様筋は「斜膝窩靭帯」という結合組織が停止部となっています。

またMCL(内側側副靭帯)とも近い関係にあり、半膜様筋が固くなることによって、これら靭帯が圧迫され負担がかかります。

MCLは内側半月板とも近い関係にあるので、半膜様筋とこの3つはセットで考えることができます。

 

 

前屈ができないやジャンプなど衝撃を加えた際にハムストリングが痛むや、筋肉自体が硬くなっていると、膝裏や膝の内側に痛みが発生する事に繋がります。

 

 

〈要約〉
・ハムストリングスの硬さが靭帯に負担をかけている
・斜膝窩靭帯、MCL(内側側副靭帯)、内側半月板はハムストリングスと関わりがある
・半膜様筋は「膝裏」と「内側」の痛みの原因になることがある

 

〜④「膝窩筋」と膝の痛み〜

良く高齢の方が正座をする際に、膝裏が痛む時があります。その時に関係をしているのが「膝窩筋」という筋肉になります。

〈膝窩筋〉

起始:大腿骨の外側上顆,外側側副靭帯,膝関節包
停止:脛骨後面(ヒラメ筋線の 上方)
機能:膝関節屈曲(内旋)
神経支配:脛骨神経 L4~S1

 

靭帯との関係で見ていくと、「斜膝窩靱帯」「弓状膝窩靭帯」「LCL(外側側副靭帯)」に対して横に縫う様に走っています。

膝の曲げ伸ばしや、しゃがんだ状態を長く続けていると、膝窩筋に負担がかかり「膝裏と外側」に痛みが出る原因となってきます。

 

 

〈要約〉
・膝窩筋は斜膝窩靱帯や弓状膝窩靭帯、LCL(外側側副靭帯)と関わりがある
・膝窩筋は「膝裏」と「外側」の痛みの原因になることがある

 

〜⑤「大腿二頭筋」と膝の痛み〜

大腿二頭筋は外ハムとも呼ばれている、ハムストリングスの1つになります。

膝関節の屈曲時もそうですが、「ニーイントゥーアウト」の選手は膝下が外旋傾向にあるので、この筋肉に負担がかかってきます。

〈大腿二頭筋〉

起始:長頭:坐骨結節の後面(半腱様筋との共同腱),短頭:大腿骨粗線の外側唇の下方1/2
停止:腓骨頭,下腿筋膜
機能:股関節伸展(外旋),膝関節屈曲
神経支配:長頭:脛骨神経 L5~S2 短頭:総腓骨神経 L4~S1

 

 

大腿二頭筋は特に神経との関係性が強く、「坐骨神経」「脛骨神経」「腓骨神経」が周囲に存在しています。

大腿二頭筋の裏側に「坐骨神経」が存在していて、脛骨神経や腓骨神経に影響が出ることもあります。

 

大腿二頭筋が硬くなる→坐骨神経の圧迫→脛骨神経と腓骨神経に影響が出てくる。

 

この様な流れから膝裏に痛みが発生をすることがあります。

 

また脛骨神経は筋肉でカバーされていない、膝裏にあるダイヤモンドの空間にもある為、直接打撲などが加わると負荷がかかり痛みが出ることがあります。

 


〈要約〉
・ニーイントゥーアウトの選手は膝下が外旋傾向にある
・大腿二頭筋は「坐骨神経」や「脛骨神経」、「腓骨神経」と関係がある
・膝裏のダイヤモンド型の空間は筋肉や脂肪でカバーできていない

 

〜⑥感覚に関わる「伏在神経」と「閉鎖神経」〜

他の神経で見ていくと「伏在神経」「閉鎖神経」というものがあります。

この2つの神経は主に感覚に司る神経なので、直接運動機能に関わるものではありませんが、同じく膝裏に存在しているものになります。

〈伏在神経〉

大腿神経から分岐をしていて、足首の方まで伸びている神経。膝の内側を通過しているので、「薄筋」や「内側広筋」の近くを通っています。

〈閉鎖神経〉

骨盤の閉鎖孔から出ていて、骨盤の下から2本(前枝と後枝)に枝分けれしていく神経。前枝→内ももの筋肉と皮膚の一部の感覚。後枝→外閉鎖筋を抜けて、太ももから膝の内側まで伸びている。

薄筋や内側広筋が硬くなると「伏在神経」に負担がかかり、内転筋群が硬くなると「閉鎖神経」に負担がかかり痛みや痺れが発生することがあります。

 

 

〈要約〉
・伏在神経と閉鎖神経が膝痛の原因になっている

 

〜⑦「内臓」と膝痛の関係性〜

次に筋肉では無いですが、「内臓」との関係性を見ていきたいと思います。

伏在神経や閉鎖神経については話していきましたが、その根源で腰部に存在している「腰神経叢」というものがあります。

 

伏在神経と閉鎖神経は、この腰神経叢が由来(繋がっている)となっています。

また腰神経叢から派生している「大腿神経」「上行結腸(大腸の一部)」と「盲腸」が近い関係に位置しています。

 

要するに大腿神経が、上行結腸・盲腸と腸骨に圧迫をされるとテンションがかかり、派生している伏在神経に負担がかかってしまうことがあります。

 

反対側にある「下行結腸」と「S状結腸」も大腿神経と近い関係にあるので、膝の痛みには関わっていると言えてきます。

また「腎臓」は腰神経叢と近い関係にあるので、結果的に膝・股関節・腰椎の痛みに関係することがあります。

 

これが腰神経叢から大腿神経へと、そこから伏在神経・閉鎖神経に影響が出てくるというものです。

 

 

〈要約〉
・大腿神経が上行結腸・盲腸と腸骨に圧迫をされて、伏在神経に影響する
・腎臓も腰神経叢と近い関係にある

 

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